トップページ社会ニュース一覧各国専門家から裁判に懸念の声
ニュース詳細

各国専門家から裁判に懸念の声
10月23日 4時50分

各国専門家から裁判に懸念の声
K10059377511_1210230727_1210230729.mp4

3年前にイタリア中部で起きた地震を巡って、地震の発生前に国の委員会が安全宣言とも受け止められる情報を流し被害を拡大させたとして、専門家ら7人が過失致死などの罪に問われている裁判で、イタリアの裁判所は被告側の過失を認め、全員に禁錮6年の有罪判決を言い渡しました。
今回の判決が専門家の科学的な分析にどの程度、過失があると判断したものかはまだ分かっていませんが、この裁判を巡っては各国の専門家から科学的な見解を伝えて刑事責任を問われれば、自由に考えを述べられなくなるといった懸念の声が上がっていました。

地球物理学の世界最大の学会とされるAGU=アメリカ地球物理学連合は、おととし、イタリアの専門家が起訴された際、「科学者や行政担当者が地震のリスクを伝えて起訴されると政府に対する助言や提言ができなくなるおそれがある」などと、イタリアの司法当局の対応を厳しく批判する声明を発表しました。
また、日本の地震学者からも、萎縮して自由に見解を伝えられなくなるという懸念が出ていました。
イタリア政府は地震のあと、裁判とは別に世界9か国の専門家による国際委員会を設け、現状では地震の日時や場所、規模を特定する「地震予知」は実現が難しいため広く一般には地震の発生確率など、中長期的な可能性を示す「予測」の情報を伝えるべきだという報告書をまとめました。
こうした議論を受けて日本地震学会は今月、地震研究の現状を積極的に社会に伝え、「予知」と「予測」を明確に区別するという活動計画をまとめています。
今回の判決について、イタリアの国際委員会に参加した名古屋大学地震火山研究センター長の山岡耕春教授は、「地震活動を確実に見通すことは今の地震学では困難だが、責任をおそれて科学者が何も発言できなくなるのはよくない。確率などの客観的なデータを交えて丁寧に説明することが重要だ」と話しています。

[関連ニュース]
このページの先頭へ