日台漁業協議:11月にも再開へ 尖閣めぐり中国けん制
毎日新聞 2012年10月22日 02時31分
【台北・大谷麻由美】日本と台湾の間で09年2月に中断した沖縄県・尖閣諸島(台湾名・釣魚台)海域の漁業権を巡る協議が11月にも再開することが分かった。日本側は9月初旬に「早期開催」を提案。台湾も「11月開催」を目指し、議題固めを急いでいる。
尖閣諸島の主権問題を巡って、日中間の対立は解決の糸口が見えない上、中国は台湾に「尖閣防衛の共闘」を迫っている。台湾は、武力統一を放棄しない中国に取り込まれないよう、最大の後ろ盾・米国との良好な関係維持と日台関係の安定は欠かせない。先月25日に尖閣領海に侵入した台湾宜蘭(ぎらん)県の漁船団は漁業権確保を主張しており、日本は中台連携を阻止するため、日台間の「唯一の問題」(外交筋)とされる漁業問題に真剣に取り組み始めた。
日台は双方の沿岸から200カイリの範囲で漁業権などを認める排他的経済水域(EEZ)の主張が尖閣諸島を含む海域で重なる。主権問題には踏み込まないことで原則合意しているが、台湾はEEZの線引きで日本に「台湾漁民の権益を尊重し、善意を示して」と譲歩を迫っており、漁業協定締結は容易ではなさそうだ。
日本と中国の間では00年6月、双方のEEZを確定せず、尖閣諸島を含む北緯27度以南の水域で相手国の許可を受けずに漁船が操業できる水域を設ける漁業協定が発効した。
台湾漁業署によると日台間も05年7月の協議で、北緯27度以南に双方の法律適用を免除した水域を設ける方向で話し合った。だが、96年8月の第1回協議からEEZの線引きが問題となってきた。
EEZの対立は03年11月、台湾内政部(内務省)が日本側に大きくはみ出した「暫定執法線」を設定し鮮明になった。台湾外交部(外務省)は「漁民保護のため」と説明する。
一方、日本は04年9月の協議で暫定執法線について「一方的な措置は認められない」と反論。05年7月の協議で、日台の中間線を協議の前提とする立場を伝えた。台湾は自らに有利な「衡平の原則」による線引きか、暫定執法線を協議の前提として求め、漁業協議は事実上止まった。
暫定執法線は既成事実化しつつあり、台湾漁船を追い返す日本側と対立する原因の一つになっている。