県立図書館:「1館集約」熊谷の新施設に 教育長、3館再編案表明 久喜市や周辺自治体は反対 /埼玉
毎日新聞 2012年10月20日 地方版
県教育委員会の前島富雄教育長は19日の定例の記者会見で、浦和(さいたま市浦和区)、熊谷(熊谷市)、久喜(久喜市)の3館体制で運営している県立図書館を新設の1館に集約する再編案を検討していることを明らかにした。新図書館は、熊谷市の県有地に建設する北部地域振興交流拠点施設(仮称)の中に入居する見通しという。ただ、久喜図書館の存続を求める声が根強く、前島教育長は「慎重に検討する」と強調した。【木村健二】
県立図書館は、浦和が60年に開館したのを皮切りに、熊谷(70年)、川越(川越市、75年)、久喜(80年)と相次いでオープンし、4館体制が続いた。だが、県内各地で市町村立図書館の整備が進み、川越図書館は02年度末で閉館し、03年度以降は3館体制で専門書を中心にサービスを提供。3月末現在の蔵書数は計約149万冊で、11年度の貸出冊数は計約31万5000冊だった。
県内の市町村立図書館は60年には15館だけだったが、今年4月現在で167館にまで増加。このほか、県教委は再編の理由として、現状では資料を分野別に3館で分担しているため、分野を一括した「ワンストップサービス」を提供できない点を挙げる。また、いずれの図書館も老朽化が進み、県施設の耐震基準を満たしていない。
北部地域振興交流拠点施設は、熊谷図書館(熊谷市箱田)とは別の同市本町にある県有地に整備が予定され、産業支援施設や同市の施設などによる複合施設となる。
新図書館では3館の蔵書を収容するだけでなく、ビジネスや科学技術の分野で支援サービスを強化する方針だ。
県教委は地元市に対し9月に再編案を説明したが、久喜図書館については久喜市議会が存続を求める意見書を可決。今月9日には同市など7市町長も要望書を県に提出し、「入館者数、利用冊数とも極めて多く、耐震補強工事か建て替えで存続してほしい」と訴えている。
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◆県立図書館の現状◆
主な分野 司書 蔵書 年間来館者
浦和 社会科学・産業 30人 49万冊 17万5000人
熊谷 歴史・哲学 23人 46万冊 15万1000人
久喜 科学・芸術 26人 54万冊 24万3000人
※司書は5月現在、蔵書は3月末現在、年間来館者は11年度の実績。司書以外は概数。