IPS、原発、オカルト、遺伝子組み換えまでメディアやニセ科学者にだまされるな! 科学を正しく恐れる「科学リテラシー」を身につけよう

2012年10月22日(月) 田村 耕太郎
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 われわれは、科学や技術について他力本願になっているのではなかろうか?本当は権威でも何でもないのにメディアが権威として登場させるような人に判断をまかせているのではないか?自分で知識を持ったりそれをもとに判断したりするのではなく、そんな面倒なことは誰かにまかせようという姿勢にますますなりつつあるのではないか。

 私はこれは危険な姿勢だと思う。このままわれわれが技術や科学の基本さえも理解することを怠れば、メディアやポジショントークのニセ科学者やそれにつけいろうとする悪徳企業たちに操られてしまうかもしれない。

「正しく恐れる」技術を持とう!

 3・11の原発事故以来、われわれは、原発事故の放射能の影響についても科学的知識を持って「正しく恐れる」ことができなくなっている。テレビショッピングによくある健康食品や有機食材や特効薬のたぐいも、新発明だの新技術だのと言っているが、最低限の科学的知識を持っていないと扇動されてしまう。人間ドックやがん検診の結果に一喜一憂し過ぎ、過剰な治療に走ったり、必要以上にストレスを感じたりして、症状を悪化させてしまう。金融商品やギャンブルの中にはいまだにリスクがリターンに明らかに見合わないものがある。

 科学の知識がなければ、扇動情報に操られた情緒的判断に陥ってしまう可能性が高い。小難しい理論や数式を覚えたり無理やり理解しようする必要はない。最低限の知識や正しい理解は情報を検索していくつかのものをクロスチェックしておくことだ。

 知識以外の思考プロセスとしては基本的な確率と級数と因果律くらいをさらに正しく理解することから始めてはどうだろう。そうすれば、過去に大当たりが出た宝くじ売り場にこだわって並んでそこで宝くじを買おうとする行為が確率的に意味がないことがわかると思う。また、ねずみ講的な仕組みで誰もが利益を得られることが不可能なことは級数がわかれば理解できる。

 因果律を理解することも大事だ。「Aを飲んで一か月で8キロやせた」とか「Bを食べてガンが消えた」なんて宣伝があるが、相関と因果関係は違う。Aを飲んでから一か月で8キロやせたことは事実かもしれないが、やせたのは同時期にやっていた運動のせいかもしれないし、他の食餌制限のせいかもしれない。

「ミニスカートが増えれば景気がよくなる」とか「かき氷がよく売れる日は水難事故が多い」というもの、確かに同時起こっているかもしれないが、それが原因で結果が起こっているかどうかは不明である。文科省が朝食の摂取と成績の比較を試み「朝食をよく食べている子ほど成績がいい」とのデータ分析を発表。だからといって「朝食を食べれば頭がよくなるわけではない」のだ。

大人が学ぶ理科や数学は楽しい!

 意外に大事なのはメディアや政府や企業が出してくるグラフの見方。彼らが出してくるグラフの中に意図的にわれわれを操作しようとしているものがある。縦軸が0から始まっていないグラフは信じてはいけない。縦軸の縮尺が途中からゆがんだものも失格だ。単位もチェックしよう。縦軸と横軸を比較するにふさわしくない単位がどちらかの軸で使われていることがある。自分たちが誘導したい方向でデータが大きく変化しているように見せかけたい意図が見え見えなものもある。

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