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NIRA の研究報告書:「日本再生のための処方箋」 [Social Policy]

NIRA=総合研究開発機構ー理事長;伊藤元重東大大学院教授 が,「日本の失われた20年」から日本を再生させる処方箋についての研究報告を公表しました.

まだ全文は英語で,サマリーだけが日本語で公表された状態ですが.たいへん重要な指摘をしているのでご紹介します.

東日本大震災後、復旧・復興に議論が集中し、成長に向けた政策論議は後回しにされた。しかし、長期的な成長戦略が欠如すれば、経済は再び停滞してしまう。停滞から脱出するためには生産性上昇が不可欠であるという事実は、震災によって変わるものではない。む

しろ震災を日本経済再出発の好機と捉えて、抜本的な成長戦略を打ち出すのが望ましい。

...財政再建の議論が盛んである。もちろん財政再建は成長戦略の一部であるべきだが、それだけでは十分ではない。日本経済の再生に向けた総合的な政策が必要である。


本稿は、成長を回復するための総合的な政策を提示するものである。政策は大きく分けて3つの分野にわたる。

1.規制改革1-1. 事業活動コストの削減日本における事業規制には多くの改善余地がある。日本における事業活動コストは、他の先進国に比べて高いことが知られている。特に事業開始手続き、税率・税制、土地移転・土地利用政策に問題があることが指摘されている。全ての事業開始申請が1か所で完了できる仕組みの創設、納税者番号制度の導入、土地移転に係る許可プロセスの短縮化、農地 登録制度の改善、住所表示の簡素化などが望まれる。

1-2. ゾンビ企業保護の撤廃日本経済停滞の要因の一つはゾンビ企業の存在である。退出すべき企業を温存したことによって、健全な企業の成長を妨げた。ゾンビ企業の保護をやめることが成長の復活に不可欠である。しかし、世界金融危機後の政策は全く逆の方向に向かっている。金融円滑化法に代表されるように、政府は中小企業向けの事実上の救済融資を銀行に迫り、その代わりに銀行はそれらの問題債権を不良債権として認識する必要がなくなった。実質的にゾンビ企業を支援する結果となるこのような政策を直ちに廃止すべきである。
(注:ゾンビ企業:生産性が低く,当然なら市場から退場すべき企業だが,保護政策や政策的救済融資で存続している企業)


1-3. 非製造業部門の規制緩和
規制緩和は橋本内閣時代はある程度進んだが、その後動きが停滞している。政府による規制改革委員会の制度は名前を変えながら続いてはいるがその成果は激減している。規制緩和の停滞は特に非製造業において著しい。非製造業の全要素生産性が1990年代初から上昇していないのは、規制緩和の欠如と関係していると思われる。規制緩和を特に非製造業

部門で加速させることが必要である。


1-4. 成長特区小泉内閣時代の構造改革特区の試みの多くは、他の地域から需要をシフトしただけで、持続的な成長には結びつかなかった。しかし、神戸の先進医療クラスター特区や北九州の国際交流特区のように、重要な規制緩和措置を中心にしてある程度の成功を収めた特区もある。規制緩和に焦点を当てた特区を導入することによって日本の再生を図ることが可能である。現在、震災からの復興を目指した特区が被災地で作られているが、その多くは旧態

依然とした産業政策や被災企業の単なる救済策であり、成長を促すようなものではない。


資料として掲載された図3 全要素生産性の各国比較(1992年=1.0) a.製造業 b.非製造業
を転載できませんでしたが,日本の生産性は20年を通じて,いうまでもなく最低の上昇にとどまっており,それが日本の2流国への転落を象徴しているのです.

ここに論じられた[規制への安住]は社会福祉にも際立っています.社会福祉法人制度,社会福祉士・介護福祉士制度などはその最たるモノです.ゾンビ企業に数えられるモノも少なくありません
この報告を他人事と受け取らず,社会福祉事業内でも精査されるべきだと考えるモノです.

なお,NIRAは,2010年に,
「市場か、福祉か」を問い直すー日本経済の展望は「リスクの社会化」で開く-
という優れた報告を出していますので,ご関心の方は,そちらもご参照下さい.



 

 

NIRA研究報告書
日本再生のための処方箋(Policy Options for Japan’s Revival)
星 岳雄 カリフォルニア大学サンディエゴ校国際関係・環太平洋研究大学院教授

アニル・K・カシャップ シカゴ大学ブース・ビジネススクール教授

 
【エグゼクティブサマリー】

東日本大震災後、復旧・復興に議論が集中し、成長に向けた政策論議は後回しにされた。
しかし、長期的な成長戦略が欠如すれば、経済は再び停滞してしまう。停滞から脱出するためには生産性上昇が不可欠であるという事実は、震災によって変わるものではない。むしろ震災を日本経済再出発の好機と捉えて、抜本的な成長戦略を打ち出すのが望ましい。最近はようやく復興をめぐる議論が一段落し、財政再建の議論が盛んである。もちろん財政再建は成長戦略の一部であるべきだが、それだけでは十分ではない。日本経済の再生に向けた総合的な政策が必要である。
本稿は、NIRA研究報告書「何が日本の経済成長を止めたのか」(2011年7月)の続編として、成長を回復するための総合的な政策を提示するものである。政策は大きく分けて3つの分野にわたる。

1.規制改革

1-1.
事業活動コストの削減
日本における事業規制には多くの改善余地がある。日本における事業活動コストは、他の先進国に比べて高いことが知られている。特に事業開始手続き、税率・税制、土地移転・土地利用政策に問題があることが指摘されている。全ての事業開始申請が1か所で完了できる仕組みの創設、納税者番号制度の導入、土地移転に係る許可プロセスの短縮化、農地登録制度の改善、住所表示の簡素化などが望まれる。

1-2.
ゾンビ企業保護の撤廃
日本経済停滞の要因の一つはゾンビ企業の存在である。退出すべき企業を温存したことによって、健全な企業の成長を妨げた。ゾンビ企業の保護をやめることが成長の復活に不可欠である。しかし、世界金融危機後の政策は全く逆の方向に向かっている。金融円滑化法に代表されるように、政府は中小企業向けの事実上の救済融資を銀行に迫り、その代わりに銀行はそれらの問題債権を不良債権として認識する必要がなくなった。実質的にゾンビ企業を支援する結果となるこのような政策を直ちに廃止すべきである。

1-3.
非製造業部門の規制緩和
規制緩和は橋本内閣時代はある程度進んだが、その後動きが停滞している。政府による規制改革委員会の制度は名前を変えながら続いてはいるがその成果は激減している。規制緩和の停滞は特に非製造業において著しい。非製造業の全要素生産性が1990年代初から上昇していないのは、規制緩和の欠如と関係していると思われる。規制緩和を特に非製造業部門で加速させることが必要である。

1-4.
成長特区
小泉内閣時代の構造改革特区の試みの多くは、他の地域から需要をシフトしただけで、持続的な成長には結びつかなかった。観光特区や農業特区の多くが良い例である。これらの特区は採用する地域が限られていた頃はその地域の振興に役立ったが、同様の試みが全国に広まると次第に廃れていった。しかし、神戸の先進医療クラスター特区や北九州の国際交流特区のように、重要な規制緩和措置を中心にしてある程度の成功を収めた特区もある。規制緩和に焦点を当てた特区を導入することによって日本の再生を図ることが可能である。現在、震災からの復興を目指した特区が被災地で作られているが、その多くは旧態依然とした産業政策や被災企業の単なる救済策であり、成長を促すようなものではない。

図3 全要素生産性の各国比較(1992年=1.0
a.製造業 b.非製造業(出所)EUKLEMS

(注)本文の図(Figure3a3b)を基に作成。

 


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