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国際
【再び、拉致を追う】第3部 5人の被害者、帰国10年(2)
「5人を帰さないと政府が決めたことは間違いだ。5人が『日本にいたい』というなら、日本人なんだからとどめるのは当然だ。しかし、それを政府が決める必要はない。そのために北朝鮮が態度を硬化させた」
◆「主張した外交」
5人の扱いについて政府内でも意見は割れており、議論が収斂(しゅうれん)したのは10月23、24両日頃だ。このころ、官邸内の安倍氏の執務室などで関係者による断続的な協議が続いた。
「(日本の)家族が帰さないと言っているのを、政府が無理やり帰せるか。日本は民主主義国家だ!」
家族会や世論を背景にこう主張した安倍氏には中山氏や谷内正太郎官房副長官補らが歩調を合わせた。これに北朝鮮との信頼関係を維持したい田中氏が抵抗した。
田中氏を擁護していた福田氏だが、最終的には「家族の了解」を条件に安倍氏らの意見をのんだ。小泉氏は訪朝後、拉致問題に関しては安倍氏にげたを預けており、田中氏は孤立し、押し切られた。
「このとき、田中氏は顔を真っ赤にしていた。交渉相手のミスターXの立場や今後の交渉を考えると、心中は複雑だったのだろう」
協議現場に立ち会った元政府高官は語る。日本が北朝鮮側が描いた絵図を破り、主体的に国民の保護という当たり前の義務の実行を決めた瞬間だった。安倍氏は今、こう位置付ける。
「外交史上初めて、日本の国益のために日本のペースで主張した外交だったと思う」(肩書は当時)
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