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国際
【再び、拉致を追う】第3部 5人の被害者、帰国10年(2)
中山恭子内閣官房参与はこう記憶をたどり、「1週間のままだったら(永住帰国は)難しかった」と証言する。福田康夫官房長官も当時の政府内の空気を振り返る。
「『一時帰国ではなく帰してほしい』という交渉をしたと思うが、北朝鮮が『それはできない』ということで、やむを得ず『一時帰国でお願いする』となった。外務省がそう言っていたから、その通りにやるもんだと思っていた…」
本心口に出せず
5人の夫や子供は北朝鮮に「人質」として残っている。5人にはこのまま日本にとどまりたいと願っても本心は口に出せないジレンマがあった。だが、同胞の保護を最優先すべき政府側は当初、「本人の意向を尊重する」(小泉純一郎首相)とするばかりで、明確な国家意思を示そうとしていなかった。
「北朝鮮に戻りたくない」との被害者たちの本音は「家族会」との会合などを通じて伝わってきた。同じころ、北朝鮮の核開発問題が表面化し、正常化交渉の行方も不透明となる。
そうした複雑な状況を踏まえ、安倍氏は次のように腹を固めたという。
「本人たちの希望ではなく政府、国としての判断として5人を日本にとどめ置くと決断した」
ところが、このぎりぎりの判断に対し、少なくない学者や評論家らが「拉致被害者たちはすでに北朝鮮側に生活の根っこを持っている」と指摘し、北朝鮮の要求通り5人を戻すべきだったとの反応を見せた。民主党の岡田克也幹事長も翌15年1月のNHK番組で、こう政府を批判している。
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