てけてけ日記ときに路上に出て、ときに読書する。そんな日々をつづった日記。
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2012.08.26 Sunday
2012.07.07 Saturday
閑話休題。
ここのところ、森の防潮堤プロジェクトが話題になっているようである。植樹で実績のある宮脇昭氏が主唱し、提唱しているがれきの再利用計画ということである。単純化して言うと、被災地で発生した瓦礫を土台に植樹して、天然の防波堤を作ろうという計画だ。
ぶっちゃけ、この計画が脱原発界隈の熱い注目を浴びている一番の理由は、被災地からの瓦礫の広域処理を止めることができるから、ということに尽きるだろう。すぐには評価しがたいプロジェクトだが、どうも計画の細目を聞いていると、慎重に検討すべき事柄がたくさん出てきているように思う。
まず一点。広葉樹は、針葉樹に比べると根の張り方が広く、太く、確かに防災能力が高い。だが、裏返して言えば、それだけ地面から吸水する能力も高いのだ。瓦礫に付着した放射性物質は埋めたところでなくなりはしない。ならば瓦礫に付着したセシウムを根から吸い続けた広葉樹が将来的に、樹内で放射性物質を濃縮してしまう恐れは大いにあるのでは？
計画の構想の中では、将来的には家具材として伐り出すことも検討されているようなのだが、そうなると、なおさら気になってくる。
ちなみに、広葉樹は、根の張り方がしっかりしている分だけ、撤去にも非常に時間がかかる。針葉樹の倍以上の時間と手間がかかる。３００キロと壮大な大計画であるこの防潮堤計画であるが、問題があることが後でわかったとしても、それを元に戻すのは容易ではない。
そして、瓦礫を埋立て、木を植える段階では誰もが素晴らしい計画だと称えもしようが、失敗が仮に発覚したとして、それを切り出し、埋めたものを戻して原状復帰する際には誰が予算を出すのだろうか。
おおかた、地元自治体ということになるだろうが、そのあとの処理の負担も大きかろう。工賃、人件費だけでも莫大なものになるだろう。もし、私の悪い想像があたって、セシウムに汚染された立派な広葉樹が育ってしまった場合・・・瓦礫以上に容量が大きく、処分が大変な廃棄物が大量に発生することにもなる。
通常の倒木なら森に転がしておけば、いずれは森を肥やすであろうが、セシウムで汚染されたものを土に返すわけにもいかないだろう。今以上に処理に窮する結果になるのではないか・・・？
第二点。瓦礫の受け入れに反対している全国の団体内でも、この計画は好意的に評価されている気配がある。冒頭で書いたとおり、瓦礫の拡散を止めるという目的は大きかろうけれども、諸団体が単にそれだけで、この計画を支持しているとはさすがに私も考えてはいない。
被災地、特にたびたび大津波に襲われてきた三陸沿岸部の住民から、何度か「新しい防潮堤が欲しい。海面が大きく波立っただけで恐怖を覚える」という思いを、私は直接聞いている。
被災地支援に行った別の仲間からもそうした言葉を聞いているし、防潮堤を作る予算までは捻出できないところで瓦礫を活用するというアイディアは、いかにもスマートで有望な選択肢に見える。ひょっとしたら、被災地の人もそう思っている人があるかもしれない。
被災地が自らの責任と公正な選択のもとにその方針を採るならば、話としてわかる。
だが・・・。しかし、瓦礫の受け入れに反対してきた団体が、安全性がいまいち定かでない、それゆえに焼却などすべきではないと主張してきた瓦礫について、他の用途での再利用に積極的に賛成するというのは、矛盾があるのではなかろうか。
ゆえに、「拡散してもだめなものは、安全性が確認されもしないのに転用するべきではないのではないか？」と提起しておこう。放射性廃棄物は、あくまで隔離した上で、安全が確認しうる適性な処理方針を討議し、政策に落とす。それが本道ではないか、と私は考える。
先日のモーニングバードでは細野豪志が瓦礫に含まれる六価クロムや砒素の有害性に言及したということだった。それがまた、瓦礫拡散反対の世論を推し進めるのであるが・・・とすると、放射性物質以外の、アスベストなども当然含んだ、諸化学物質が含まれた土壌が、樹木の成長後にどのような影響をもたらすのか、という点についても綿密な検討がなされるべきだ。
以上、森の防潮堤構想の安全性という観点から、論点を考察してきた。ここまでに検討した材料以外にも、瓦礫を土台として使うことで物理的な強度を担保できるのか、ということも気になるが、それがクリアされた場合でも、上記のことは問わねば成らない。
私が目下の環境省主導の瓦礫の広域処理に反対でありながら、殊更にこのプロジェクトに対して慎重姿勢を保っている理由は明白である。
私たちは、既に散々傷ついた土地を見ているはずだ。中央のエネルギー供給などという目的のために傷つけられた土地を見ているはずだ。ならば、当然ながら、これ以上の危険と不安を生むものを、被災地に持ち込むべきではない。
いまひとつ、安全性について確証を得ることができないものの推進に賛同することは、当然、結果次第ではその責任が自分に強く跳ね返ってくる。被災地で不測の事態が起きた場合は、そのプロジェクトに賛同した社会運動体／個人も自らを厳しく問われることになろう。その責任を強く痛感するがゆえに、私はこのプロジェクトにただちに賛同する気にはならないのである。
また、瓦礫処理の問題解決と、被災地の防潮堤再建＝地域コミュニティのインフラ復旧という狙いが同時にこのプロジェクトでは図られている。だが、これらをリンクさせながら同時に議論することが本当に適当なのか、私はその点にも疑問を感じる。瓦礫問題処理の最適解と、防潮堤建設の最適解とは、同一手段によって得られるものなのだろうか。
最後に、もうひとつ、付け加えたい。
瓦礫の広域処理は、放射性物質という明らかに東京電力によって撒き散らされたものが原因となり、多大な困難と全国各地域の住民の不安を呼び起こしている。にも係わらず、当の東京電力は一向に責任を取らず、かつ、裁判では放射性物質は「無主物」であるという信じがたい欺瞞的な説明を行っているという。
では、なにゆえ、東京電力が責任を負うべきでありながら責任を放棄したものについて、私たちの住む地域の自治体がその尻ぬぐいをしなければならないのだろうか。２０００年代にもあまた露見した、都市から地方への産業廃棄物の大量不法投棄事件の顛末が示しているように、元来は大企業に解決責任があるものが、地域住民の納めた税金や国庫の収入によって尻拭いがなされてきた歴史が日本の廃棄物にはある。
廃棄物については、東電は明確に責任逃れを行っているわけだが、本当に責任を取るべき主体に態度の変更を促すこともできないまま、自治体が処理を行ってしまうことは、真の責任者の所在を曖昧にしてしまうのではないだろうか、という疑問を捨てられない。
ここまで長々と書いてきたが、改めて、被災地も自分の地域も守る、住民だけでなく現場作業者まで視野に入れた、本当に責任を負うべき主体への追及を忘れない瓦礫問題への向き合い方が求められているような気がする。（このブログで再三書いたが、３・１１以前からのルートに乗った形での、都市の廃棄物の地方への押し付け問題も含めて）
ここのところ、森の防潮堤プロジェクトが話題になっているようである。植樹で実績のある宮脇昭氏が主唱し、提唱しているがれきの再利用計画ということである。単純化して言うと、被災地で発生した瓦礫を土台に植樹して、天然の防波堤を作ろうという計画だ。
ぶっちゃけ、この計画が脱原発界隈の熱い注目を浴びている一番の理由は、被災地からの瓦礫の広域処理を止めることができるから、ということに尽きるだろう。すぐには評価しがたいプロジェクトだが、どうも計画の細目を聞いていると、慎重に検討すべき事柄がたくさん出てきているように思う。
まず一点。広葉樹は、針葉樹に比べると根の張り方が広く、太く、確かに防災能力が高い。だが、裏返して言えば、それだけ地面から吸水する能力も高いのだ。瓦礫に付着した放射性物質は埋めたところでなくなりはしない。ならば瓦礫に付着したセシウムを根から吸い続けた広葉樹が将来的に、樹内で放射性物質を濃縮してしまう恐れは大いにあるのでは？
計画の構想の中では、将来的には家具材として伐り出すことも検討されているようなのだが、そうなると、なおさら気になってくる。
ちなみに、広葉樹は、根の張り方がしっかりしている分だけ、撤去にも非常に時間がかかる。針葉樹の倍以上の時間と手間がかかる。３００キロと壮大な大計画であるこの防潮堤計画であるが、問題があることが後でわかったとしても、それを元に戻すのは容易ではない。
そして、瓦礫を埋立て、木を植える段階では誰もが素晴らしい計画だと称えもしようが、失敗が仮に発覚したとして、それを切り出し、埋めたものを戻して原状復帰する際には誰が予算を出すのだろうか。
おおかた、地元自治体ということになるだろうが、そのあとの処理の負担も大きかろう。工賃、人件費だけでも莫大なものになるだろう。もし、私の悪い想像があたって、セシウムに汚染された立派な広葉樹が育ってしまった場合・・・瓦礫以上に容量が大きく、処分が大変な廃棄物が大量に発生することにもなる。
通常の倒木なら森に転がしておけば、いずれは森を肥やすであろうが、セシウムで汚染されたものを土に返すわけにもいかないだろう。今以上に処理に窮する結果になるのではないか・・・？
第二点。瓦礫の受け入れに反対している全国の団体内でも、この計画は好意的に評価されている気配がある。冒頭で書いたとおり、瓦礫の拡散を止めるという目的は大きかろうけれども、諸団体が単にそれだけで、この計画を支持しているとはさすがに私も考えてはいない。
被災地、特にたびたび大津波に襲われてきた三陸沿岸部の住民から、何度か「新しい防潮堤が欲しい。海面が大きく波立っただけで恐怖を覚える」という思いを、私は直接聞いている。
被災地支援に行った別の仲間からもそうした言葉を聞いているし、防潮堤を作る予算までは捻出できないところで瓦礫を活用するというアイディアは、いかにもスマートで有望な選択肢に見える。ひょっとしたら、被災地の人もそう思っている人があるかもしれない。
被災地が自らの責任と公正な選択のもとにその方針を採るならば、話としてわかる。
だが・・・。しかし、瓦礫の受け入れに反対してきた団体が、安全性がいまいち定かでない、それゆえに焼却などすべきではないと主張してきた瓦礫について、他の用途での再利用に積極的に賛成するというのは、矛盾があるのではなかろうか。
ゆえに、「拡散してもだめなものは、安全性が確認されもしないのに転用するべきではないのではないか？」と提起しておこう。放射性廃棄物は、あくまで隔離した上で、安全が確認しうる適性な処理方針を討議し、政策に落とす。それが本道ではないか、と私は考える。
先日のモーニングバードでは細野豪志が瓦礫に含まれる六価クロムや砒素の有害性に言及したということだった。それがまた、瓦礫拡散反対の世論を推し進めるのであるが・・・とすると、放射性物質以外の、アスベストなども当然含んだ、諸化学物質が含まれた土壌が、樹木の成長後にどのような影響をもたらすのか、という点についても綿密な検討がなされるべきだ。
以上、森の防潮堤構想の安全性という観点から、論点を考察してきた。ここまでに検討した材料以外にも、瓦礫を土台として使うことで物理的な強度を担保できるのか、ということも気になるが、それがクリアされた場合でも、上記のことは問わねば成らない。
私が目下の環境省主導の瓦礫の広域処理に反対でありながら、殊更にこのプロジェクトに対して慎重姿勢を保っている理由は明白である。
私たちは、既に散々傷ついた土地を見ているはずだ。中央のエネルギー供給などという目的のために傷つけられた土地を見ているはずだ。ならば、当然ながら、これ以上の危険と不安を生むものを、被災地に持ち込むべきではない。
いまひとつ、安全性について確証を得ることができないものの推進に賛同することは、当然、結果次第ではその責任が自分に強く跳ね返ってくる。被災地で不測の事態が起きた場合は、そのプロジェクトに賛同した社会運動体／個人も自らを厳しく問われることになろう。その責任を強く痛感するがゆえに、私はこのプロジェクトにただちに賛同する気にはならないのである。
また、瓦礫処理の問題解決と、被災地の防潮堤再建＝地域コミュニティのインフラ復旧という狙いが同時にこのプロジェクトでは図られている。だが、これらをリンクさせながら同時に議論することが本当に適当なのか、私はその点にも疑問を感じる。瓦礫問題処理の最適解と、防潮堤建設の最適解とは、同一手段によって得られるものなのだろうか。
最後に、もうひとつ、付け加えたい。
瓦礫の広域処理は、放射性物質という明らかに東京電力によって撒き散らされたものが原因となり、多大な困難と全国各地域の住民の不安を呼び起こしている。にも係わらず、当の東京電力は一向に責任を取らず、かつ、裁判では放射性物質は「無主物」であるという信じがたい欺瞞的な説明を行っているという。
では、なにゆえ、東京電力が責任を負うべきでありながら責任を放棄したものについて、私たちの住む地域の自治体がその尻ぬぐいをしなければならないのだろうか。２０００年代にもあまた露見した、都市から地方への産業廃棄物の大量不法投棄事件の顛末が示しているように、元来は大企業に解決責任があるものが、地域住民の納めた税金や国庫の収入によって尻拭いがなされてきた歴史が日本の廃棄物にはある。
廃棄物については、東電は明確に責任逃れを行っているわけだが、本当に責任を取るべき主体に態度の変更を促すこともできないまま、自治体が処理を行ってしまうことは、真の責任者の所在を曖昧にしてしまうのではないだろうか、という疑問を捨てられない。
ここまで長々と書いてきたが、改めて、被災地も自分の地域も守る、住民だけでなく現場作業者まで視野に入れた、本当に責任を負うべき主体への追及を忘れない瓦礫問題への向き合い方が求められているような気がする。（このブログで再三書いたが、３・１１以前からのルートに乗った形での、都市の廃棄物の地方への押し付け問題も含めて）
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