江原道の小都市に住むある妊娠中の女性(33)は今年1月、破水したことを確認し、市内に1カ所しかない小規模な産婦人科病院に向かった。この女性は前期破水で緊急分娩(ぶんべん)が必要な状態だったが、分娩中に腕や足にまひ症状が現れ、突然呼吸が止まった。医師は急いで心肺蘇生術を施したが、意識は戻らなかった。そのため、別の病院に搬送され帝王切開手術を受けたが、子宮破裂が進み、やがて出血過多の状態に陥った。女性は再び救急車で大都市の病院に移されたが、搬送中に死亡した。
産婦人科の専門医たちは、この女性が住んでいた地域にきちんとした分娩可能な病院があれば、命は助かったと指摘する。江原道は分娩室を備えた産婦人科が韓国全国で最も少なく、分娩時に容体が悪化した妊婦が大都市の病院を探してさまよう事態が頻発する。妊婦が命を懸け、ソウルに向かう救急車に乗ることもある。こうした状況のため、分娩中に妊婦が死亡するケースがしばしば起こる。
本紙が18日に入手した韓国保健社会研究院の調査資料(調査年度:2007-08年)によると、出産による産婦の死亡率は江原道が最も高く、出生10万件当たり34.6だった。産婦死亡率は、分娩と妊産婦の管理水準を把握するための代表的な保健統計指標だ。この地域別産婦死亡率の調査は、韓国国内では最も新しいもので、07-08年は全国的に分娩可能な病院が急減していた時期に当たる。
2番目に産婦死亡率が高かったのは忠清北道(27.6)で、次いで慶尚北道(20.6)、忠清南道(19.9)、全羅南道(17.6)と続く。全国平均は14.0で、ソウル市は10.8だった。最も低いのは蔚山市で4.3。江原道の産婦死亡率は蔚山市の8倍、ソウル市の3倍に当たる。世界保健機関(WHO)の統計によると、江原道の34.6は中国(40.0)やウズベキスタン(45.0)と同水準だ。
産婦死亡率が高い地域は、分娩環境が整っていない地域とほぼ一致する。昨年末現在、分娩可能な病院まで1時間以上かかる地域が自治体面積の30%以上を占める市・郡・区は、全国で48カ所あった。このうち、江原道の市・郡が11カ所で最も多く、次いで慶尚北道と全羅南道(各10カ所)、慶尚南道(6カ所)、全羅北道(4カ所)と続いた。
産婦死亡率が高い地域は、重症患者を受け入れる総合病院が少ない地域とも一致する。地域面積当たりの総合病院数は、慶尚北道と江原道が最も少ない。
ソウル大学付属ポラメ病院のイ・スンミ教授(産婦人科)は「産婦死亡率は、緊急時に外科的な処置がすぐに可能な分娩専門医療機関と、産前管理をきちんと行える産婦人科専門医が地域に備わっているかどうかによって違ってくる。死亡率の高い地域と分娩環境の整っていない地域が一致するのは偶然ではない」と説明した。
また、大韓産婦人科学会のシン・ジョンホ事務総長(高麗大付属九老病院教授)は「(産婦人科医を目指す医学生が減少しているという傾向と、それに伴う分娩可能病院の減少など)韓国の出産インフラ崩壊により(産婦の死亡といった)懸念が現実のものとなっている。分娩環境が整っていない地域の産婦死亡率は1970年代の全国平均と同水準で、これは妊産婦の管理水準が40年ほど後退したことを意味する」と指摘した。