今日からいきなり始まった連載企画、長編小説が始まるぞ、文字の小説は想像力が試される。
文字を読むことが少ないボーイ達はナオキ賞作家の下山緑先生の連載小説を見て勉強しろ。
「ニコニコ生放送と虐殺」
第一話「この人って過去に性犯罪者をしたことがあるんですか」
近頃僕はこの「ニコニコ生放送」ってのに最近ハマっている。誰もがマイクとウェブカメラが
あればラジオのパーソナリティのように世界中に自分だけの生放送が配信できるのだ。
それは24時間行われておりいつでも気軽に見ることができる便利なおもちゃ…
でも実際はクズで社会的不適合な連中がなぜか人気があり、まるで動物園のゴリラか、哺乳類動物か何かを見てる感覚で見ている。そう、ここはクズの人間観察所なのだ。
そんなクズ人間を見守る飼育員の僕も今ではすっかり『リスナー』としてここ3カ月ほどハマってる。
最初はROMっていた(何もせず見守ること)僕だが生主が僕の書いたコメントに反応してくれた感覚が辞められず今では積極的に184を非表示で書き込んだり、お気に入りに登録してあるコミュの掲示板でも意見を書き込んだりしている。
そんなご機嫌な僕にアラートが鳴り不愉快なものが飛び込んできた。
ニコ生の人気配信者に成り上がった「ヘビちゃんマン」と呼ばれる無職男性の放送だ。
このヘビちゃんマンはリスナーから現金や物をもらって乞食をしながら
放送をしているという昔は元・性犯罪者というとんでもない男なのだ。(本人はニュース記事はデタラメと言っている)
「よっしゃ!」いつもは満員で入れないのだが今日は立ち見のBに入れた。
放送内容はいつもながらクビになった居酒屋のG+という名前の店と人の悪口ばっかり言ってる陰湿なおっさんだ。
僕はこのヘビちゃんマン氏の機嫌をすこぶる損ねる遊びが好きだ。
今日もわざとしってるくせに
『この人って過去に性犯罪者をしたことあるんですか?』
というコメントを184をつけて書き込む。もちろんヘビちゃんマンはスルー。
でもこんなことでは負けない。得意のキーボードタッチでヘビちゃんマンの嫌がるありったけ
の罵詈雑言の悪意あるコメントを叩き込む
わざと頭に目立つように■をつけて
■爆弾を食べて歯が吹き飛んだの?
■ヘビちゃんマンはレイパー野郎
■トマト切れなてくトークにも切れがないハゲ
というコメントをしつこく水色ビッグ文字で打ち続けた。
さすがに我慢の限界がきたのかヘビちゃんマンは「あのさー立ち見Bの1298番の
おめーよー、こんなくっだらねーこと書いても結局さー俺の前ではブルちゃってなんもできねー
くせにいきがってんじゃねーぞ、くそガキ」と不機嫌になった。
よし!引っかかった!僕の特技「アンチコメント」にヘビちゃんマンは見事に我慢できずパクっと餌に
喰いついたのだ。
全身の毛が逆立ってアドレナリンが放出される。ヘビちゃんマンは画面に僕のIDと悪口の書いたコメントをツールで晒し出して「おー。こういうバカはさー結局、なんもできねえから。口だけ野郎が。だけだからさー。これ聞いてるみんなも解るよねーもうお前来なくていいから、はいNG-さようならー!」
と言って僕は■黙れ!このせいはんざ…と書いてる途中でNGユーザーにぶっこまれた。
コメントも囲いばっかで1298は帰れとか、ヘビちゃん正論!wとかアンチは出てけよksなどと書かれた。
これで今日のゲームは終了だ。現在は7戦2勝。今まで7回やって2回怒らせることができた。
そう、ぼくのコメントは武器にもなるし、飴にもなる。
配信者をコントロールするのも僕、おもちゃにするのも僕…そんだけの関係だ。
過疎って10人くらいしか見てない放送ではあえて優しく、そして人が集まる放送ではアンチコメントを連投するのが僕なりのニコニコ生放送での遊びなのだ。
あとは、オナキ兄さんとか、ヴぁっきーなしゃまとか、今日も元気におはよっちゃんなどの中堅の配信者の放送を5秒ほど回覧してふーっとため息をついた。
僕の気に入らない配信者にはアンチコメントで徹底的にこらしめる。それは僕にとってのリスナー業界のステータスであり配信者をコメントで感情を操るのは造作のないことだ。
僕はリスナーだがBSP(バックステージパス)を3つ、削除人としての権限も5つも持っている。
だいたいニコ生の配信者ってのは目立ちたがり屋で自尊心の強いやつらばっかだからそこをちょいとくすぐってやれば会ったこともないこんな僕にでもホイホイと誰も知らない情報を教えてくれる。
あいつらはすぐに情報を漏らす。つーか黙ってられないのだ。
歌い手の○○と声マネの○○○は付き合っているだとか、ゲーム実況者の○○は女を孕ませ逃げただとか、超人気配信者の○○は
実はヤリマンだとか絶対にリスナーでは知りえない情報も知っている。
そういう情報は放送終了後にスカイプ会議ってのに入って持ち寄った情報を交換したり、配信者の性癖、趣味、過去の黒歴史などを2~3時間に渡って交換しているのだ。
今日は配信のG5達があつまるトップ会議の日だ。毎月1日のイッチーの日の深夜3時にそれは行われている秘密の会議である。
これはかなり豪華な顔ぶれで僕もようやくこの会議にリスナーとして唯一入り込むことができた。
それは通称ちゃんのり銀行と呼ばれる銀行口座に10万も振り込み、石山ゆきのりの信用を勝ちとったからだ。
10万はニートの僕にとっては100万の価値がある。でも、惜しくはなかった。このニコニコ生放送を代表する名高いメンバー
に入れたことは僕の誇りなのだから・・・・
今回の参加者は僕を含め7人
石川ゆきのり
配信業といいつつバイトを辞めリスナーからの援助で生活をしている。彼とは何度もあって食事をする中にまでなった。
デブでメガネをかけているが短気。韓国人に似てる。
僕をこの会議に迎え入れてくれた恩人。
まきお
自称社長。人からバカにされることが三度の飯よりも大嫌い。すぐに名誉棄損とか
法をもちだし法に訴える。プライドが高く人を常に人を見下す高学歴。細見である。
横浜みのり
闇黒放送Pでいつも黒マスクを被っていて笑わず、馴れ合いが嫌い。性格は陰湿で知能指数も低い。人の悪口ばっかり言って他人を怒らせるのが得意。マスクを取るとガチギレする。
りきでぶ
わたがし屋「ふぐり」の店長。中卒だけど性格は穏やかで低姿勢。酒を飲むと人が変わる。デブ。帽子とメガネがトレードマーク
りなりあ
背が小さく子デブ。ロンゲと黒縁メガネがトレードマーク。ホモ受けしやすい。
以上のメンバーだ。どれもがある程度名の知られたニコニコ生放送業界では少しは
知られた連中だ。
まず、太鼓一番にまきおが多少早口ながら「いったい、今回はなんの相談なんですか?私も
そんなに自由じゃないんですから要件は早めにお願いしますよ」と3秒くらいでしゃべり始めた。
主催者の石川ゆきのりはムッとした様子を隠すように「いや、今回このスカイプ会議なんだけどー最近なんかニコ生で調子にのってる奴がいてさー、なんとかして潰してやろうかな~って」
横山みのりが「あ?潰したい奴って誰だ?」とぶっきらぼうに言う。
石川はチューっと2リットルのペットボトルをボトルに口づけで飲み干すと、少し間を置いて…
「ヘビちゃんマンだよ…」と吐き捨てるようにつぶやいた。
「ガチでマジでー!?」りなりあが驚いたように誰よりも早く口を割って入ってきた。
りきでぶは売れ残った綿菓子を夜飯替わりに喰いながら「なんでまた、ヘビちゃんマンなんですか?」
と中卒らしい質問を石川ゆきのりに問う。
僕は黙って事の成り行きを見守ることにした。石川ゆきのりはふーっと脂肪のこってり乗った頬を膨らましため息を吐き出して小さな声でつぶやいた。
「最近あのハゲ、なんか気に喰わない、それだけだけなんだけどさー」
単純明快である、単に気に入らないから潰す!これがこの男の今までのやりかただ。
ゆきのりは数々の女性配信者の放送に多数のリスナーを引き連れてコメントで荒らすように指示したりとはちゃめちゃなことを繰り返してきたのだ。
「くだらない、ぶっちゃけ本当にくだらない」
全員が息を飲んだ。声は笑っていたがまきおの言葉にそこのスカイプ会議にいた全員が瞬時に凍りついた。
まるで、静かな池に投石をしたかのごとく全員が表情を強張らせた。
「いいですか?みなさんは知らないと思いますがぶっちゃけこれは名誉棄損に当たりますよ?訴えられたら責任は誰が背負うと思ってるんですか?」
まきおは溜まってたマシンガンでもぶっ放したように早口でまくしたてた。
石川ゆきのりは「なんで?なんでむかつく奴を潰したいって人として素直な感想なんじゃないの?まきおは何が気に入らないの?」
全員が固唾をのんで今にも破裂しそうな導火線を心配そうに見つめる。
しかし、まきおはまるで子供をあやす様に「あのですねー正直な話、ヘビちゃんマンさんを潰すってぶっちゃけどういう意味合いなのか、石山さん全員の前で言ってみてください。あなたはねーただ単に人の悪口を大勢の前で言って人を集めたいだけなんじゃないですか?」
りきでぶは口に手を添えて「あわわわ…」とこいつ言っちゃったよーしまったみたいな表情をしている。
石山ゆきのりは全員の前でプライドを傷つけられた怒りと、まきおの人を小馬鹿にしたような物の言い方に顔がみるみるとえりりかのアソコのようにピンクサーモンのように赤くなった。
ヒューボンっと高い所から物が落ちる音がして、石山ゆきのりのスカイプが突然落ちた。
まきおは「はんっ!(笑)逃げたんですかねー?これだから、ニコ生配信者ってのはぶっちゃけ信用ならないんですよ」
と言い残し明日は仕事が早いからと言残しそそくさとスカイプ会議がから抜けた。
しかし、全員がその異変に気づいていたこと。
そう、石山ゆきのりのセカンドインパクト、包丁を持って殺害に向かったということを・・・・。
第二話に続く…
※この作品はフィクションです、実際の登場人物などは一切関係ありません。
作家 下山緑