1980年の夏休み。19才の誕生日を迎えたばかりでした。
関西の大学に進学した私は、都会の生活にも慣れてきました。
その日、国鉄大阪駅の構内の、ある本屋にいました。その本屋には、ゲイ雑誌が置いてあったのです。ある時、偶然それを知ってから、何回か来ていました(インターネットの無い時代です)。
「さぶ」を必死に立ち読みする私。夕方になり、会社帰りの人が増えてきました。ふと気付くと、おじさんが一人、隣に立っています。狭い店内でしたが、不自然に密着してきます。半袖シャツから出る、おじさんの太い腕の剛毛が、私の、まだすべすべの腕に触れた時、私は勃起しました。
ただ真っ赤になってうつむく私の、はち切れんばかりの股間を、おじさんの指が、まさぐり始めました。為す術を無くした私の耳元に、おじさんが囁きます。「ホテルへ行こう」。私は頷くことしかできませんでした。
60才位のサラリーマンでした。私が初めてだと知ると、驚いていました。他にも何か話をしたのでしょうが、覚えていません。顔も、体型も覚えていません。それほど緊張していたのでしょうか。それとも、それほど、特徴の無い人だったのでしょうか。
ホテルの部屋は、狭く、暗かったです。裸になるように言われ、全裸になると、やはり全裸になったおじさんに抱きしめられました。エアコンで冷えた汗が、べたつきました。
キスをして、チンポをしゃぶって、しゃぶられて、手コキで出し合いました。セックスの最中、快感はありましたが、不思議な位、冷静でした。おじさんに促されてチンポをしゃぶる時、一瞬躊躇しました。あれほど憧れていた他人のチンポ。ズル剥けの大人のチンポなのに、少しグロテスクにさえ見えました。思い切って咥えても、汗の味しかしませんでした。ただ夢中に吸い付くだけで、おじさんも気持ち良くなかったのでしょう。「もういいよ」と、股間に埋めた顔を上げさせられました。
先に自分が射精しました。他人に掻いてもらうのは初めてなのに、自分でセンズリを掻く時ほど気持ち良くはありませんでした。「さあ、私のも頼むよ」と、寝ころぶおじさんの股間にそそり立つチンポ。脇に座って擦る私は、もはや義務的な動作しか出来ません。そして、自分は何故、ここにいるんだろう、と、ぼんやり薄暗い照明を見つめていました。私の思い描いていたファンタジーは、その部屋にはありませんでした。小さく声を上げて、おじさんが射精しました。
シャワーを浴びて、服を着て、外に出ました。人目を気にしながら、おじさんが何かを言いかけた時、私は挨拶もせずに、突然逃げ出しました。何故だか自分でも分かりません。すっかり夜になったキタの歓楽街を、ただ走り抜けました。やがて息が切れて、立ち止まりました。我に返ると、通りすがりの酔っぱらいの視線が、ひどく気になります。噴き出した汗を拭いもせずに、普通の通行人のように振舞いながら、あてもなく歩き出しました。もう二度と、男とセックスなどしないと心に誓いながら。
あれから、31回の夏が過ぎました。
関西の大学に進学した私は、都会の生活にも慣れてきました。
その日、国鉄大阪駅の構内の、ある本屋にいました。その本屋には、ゲイ雑誌が置いてあったのです。ある時、偶然それを知ってから、何回か来ていました(インターネットの無い時代です)。
「さぶ」を必死に立ち読みする私。夕方になり、会社帰りの人が増えてきました。ふと気付くと、おじさんが一人、隣に立っています。狭い店内でしたが、不自然に密着してきます。半袖シャツから出る、おじさんの太い腕の剛毛が、私の、まだすべすべの腕に触れた時、私は勃起しました。
ただ真っ赤になってうつむく私の、はち切れんばかりの股間を、おじさんの指が、まさぐり始めました。為す術を無くした私の耳元に、おじさんが囁きます。「ホテルへ行こう」。私は頷くことしかできませんでした。
60才位のサラリーマンでした。私が初めてだと知ると、驚いていました。他にも何か話をしたのでしょうが、覚えていません。顔も、体型も覚えていません。それほど緊張していたのでしょうか。それとも、それほど、特徴の無い人だったのでしょうか。
ホテルの部屋は、狭く、暗かったです。裸になるように言われ、全裸になると、やはり全裸になったおじさんに抱きしめられました。エアコンで冷えた汗が、べたつきました。
キスをして、チンポをしゃぶって、しゃぶられて、手コキで出し合いました。セックスの最中、快感はありましたが、不思議な位、冷静でした。おじさんに促されてチンポをしゃぶる時、一瞬躊躇しました。あれほど憧れていた他人のチンポ。ズル剥けの大人のチンポなのに、少しグロテスクにさえ見えました。思い切って咥えても、汗の味しかしませんでした。ただ夢中に吸い付くだけで、おじさんも気持ち良くなかったのでしょう。「もういいよ」と、股間に埋めた顔を上げさせられました。
先に自分が射精しました。他人に掻いてもらうのは初めてなのに、自分でセンズリを掻く時ほど気持ち良くはありませんでした。「さあ、私のも頼むよ」と、寝ころぶおじさんの股間にそそり立つチンポ。脇に座って擦る私は、もはや義務的な動作しか出来ません。そして、自分は何故、ここにいるんだろう、と、ぼんやり薄暗い照明を見つめていました。私の思い描いていたファンタジーは、その部屋にはありませんでした。小さく声を上げて、おじさんが射精しました。
シャワーを浴びて、服を着て、外に出ました。人目を気にしながら、おじさんが何かを言いかけた時、私は挨拶もせずに、突然逃げ出しました。何故だか自分でも分かりません。すっかり夜になったキタの歓楽街を、ただ走り抜けました。やがて息が切れて、立ち止まりました。我に返ると、通りすがりの酔っぱらいの視線が、ひどく気になります。噴き出した汗を拭いもせずに、普通の通行人のように振舞いながら、あてもなく歩き出しました。もう二度と、男とセックスなどしないと心に誓いながら。
あれから、31回の夏が過ぎました。
2011-10-21 17:04:03