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【社説】

復興予算流用 納税者を裏切る不誠実

 東日本大震災の復興予算「流用」ともいえる不適切な支出が次々と明らかになっている。復興へのこじつけは不誠実極まりない。復興増税に応じた国民と被災者との「助け合い」機運にも水を差す。

 復興予算は二〇一一年度から五年間で少なくとも十九兆円。

 財源は所得税や住民税、法人税などを増税して充てる。日本国民全体で被災地復興を支援する仕組みだからこそ、国民は長期(所得税増税は二十五年間、住民税増税は十年間)にわたる増税を受け入れたのだろう。

 その復興予算が、被災地に直接関係あるとは言い難い事業に流用されていたとしたら、納税者に対する裏切りに等しい。

 例えば、反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害活動に対する安全対策費(二十三億円)、核融合エネルギーの実用化を目指して七カ国・地域が共同で進める国際熱核融合実験炉(ITER)研究支援事業(四十二億円)だ。ほかにも多くの流用が指摘されている。

 反捕鯨団体対策は「南極海の鯨肉の安定供給が、鯨肉加工の盛んな石巻市周辺の復旧・復興に」、ITER研究支援は「日本全体の復興に」つながるのだそうだ。こうした官僚の説明を詭弁(きべん)という。

 確かに、復興基本方針では被災地と「密接に関連する」地域の事業や、被災地以外で緊急性が高い防災事業も復興予算として認められている。だからといって、野放図な使途拡大は霞が関の暴走だ。

 野田佳彦首相は「真に必要な事業に絞り込む」と表明した。復興との関連を厳しく審査した上で、未執行分は凍結し、執行済み分は関係省庁の一三年度予算から減額する厳しい措置が必要だ。本当に必要な予算なら一般会計予算として別途要求すればよい。

 復興予算流用をめぐり、参院では十八日、決算委員会が開かれ、平野達男復興担当相らが出席して質疑が行われた。十九日には行政監視委員会も開かれる。国会閉会中だが、必要なら審議に臨むのは国会議員としては当然の責務だ。

 政府が提出した予算案の中に不適切なものがあれば、それを正すのは国会の仕事である。

 ただ、現在流用が問題となっているのはすでに国会の審議・議決を経て成立した一一年度補正予算と一二年度当初予算だ。なぜ審議の段階で問題点を指摘できなかったのだろうか。

 国会審議の形骸化と政府に対する監視機能低下が指摘されて久しい。あらためて猛省を促したい。

 

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