特例公債法案:成立めど立たず 長期金利に影響も
毎日新聞 2012年10月16日 21時52分(最終更新 10月16日 22時11分)
「11月中旬ごろまでに国債発行の方針が決まらないと、市場が混乱する恐れがある」。証券会社のアナリストは、政治に翻弄(ほんろう)される法案の行方に焦りを隠さない。
財務省が決めた12年度の国債発行スケジュールによると、借り換え分も含めた発行総額約150兆円のうち、約120兆円が満期2年以上の中長期国債。このうち約40兆円分は赤字国債だ。財務省は現在、建設国債や復興債などを先に発行してしのいでいる。だが、それも11月末まで。12月以降、国債が発行できなくなると、市場で国債が品不足になり価格が急上昇する可能性がある。逆に、来年以降、たまっていた赤字国債が大量発行され、価格が急落するリスクも出てくる。
地方への影響も広がっている。9月に道府県に渡されるはずだった地方交付税交付金約2.2兆円は、9〜11月に3回の分割払いとされた。
9月に326億円を受け取る予定だった群馬県は、分割払いに伴う不足分を銀行からの借り入れで賄った。9月に217億円、10月も109億円を借りた。市民生活や地域経済に影響を与えないよう、事業を予定通り実施するためだが、これに伴う金利負担は135万円にのぼるという。
交付税額が大きい北海道は数千万円の負担増を見込む。長崎県は現時点の負担増は18万円と少ないものの、11月の交付税が年度末まで受け取れなかった場合、最大1900万円の金利負担になると試算する。いずれも国に補填(ほてん)を求める方針だ。
各省庁の事業にも影響は及ぶ。外務省は9月、12月まで執行抑制を続ける場合、政府開発援助(ODA)予算の無償資金協力約267億円、国際協力機構(JICA)運営費交付金約242億円など、同省全体で計約606億円の執行抑制が必要になる、との試算をまとめた。厚生労働省も9〜11月の3カ月間で1.9兆円の執行を抑制する予定。このうち1.1兆円は基礎年金の国庫負担分(12年度予算10.5兆円)で、一般会計から年金を支払うための特別会計に繰り入れず、当面は保険料収入で給付する。法案成立がさらに遅れて年金積立金を取り崩すことになれば、年金制度の信頼性を損ないかねない。