現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年10月21日(日)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

両院違憲状態―恥を後世にさらすのか

衆参両院あわせて719人の国会議員は、あらためて憲法を読んでもらいたい。第41条国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。ところ[記事全文]

汚染廃棄物―国と自治体が一体で

福島第一原発の事故で放射能に汚染された廃棄物について、東日本の各地で最終埋め立て処分が滞っている。家庭ゴミを燃やした灰や下水汚泥、稲わらなどだ。埋め立てると地下水の汚染[記事全文]

両院違憲状態―恥を後世にさらすのか

 衆参両院あわせて719人の国会議員は、あらためて憲法を読んでもらいたい。

 第41条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

 ところがいま、その足元が大きくゆらいでいる。言うまでもない。一票の格差の問題だ。

 最高裁は昨年3月、衆院の議員定数の配分は、投票価値の平等をもとめた憲法に違反する状態にあると判断した。そして今月17日には、参院についても同様の見解が示された。

 司法の判断が確定した以上、すみやかに従い、是正する。それが、憲法が定める権力分立であり、民主主義のいろはだ。だが、「国権の最高機関」はサボタージュを続けてきた。

 党首会談が物別れに終わり、衆院の「0増5減案」は成立の機運が遠のいた。このさき合意がなっても、区割り作業などの時間を考えると、次の総選挙は現行定数のまま実施することになるという声もある。

 見直しのための期間を確保するため、判決を急いだ裁判所の配慮など、どこ吹く風だ。どの党が選挙を制するにせよ、ゆがめられた民意のうえに立つ「違憲の政権」が指導力を発揮できるのか。政治は崖っぷちに立っている。与野党とも、その認識を共有しなければならない。

 参院は事情が違うとの言いわけも通用しない。最高裁はすでに3年前の判決で、「格差を縮めるには選挙制度自体の見直しが必要だ」と述べている。検討の時間は十分あった。

 驚くのは、「継続審議になっている4増4減案が通れば、違憲状態は解消される」などと話す有力議員がいることだ。17日の判決はあえてこの案に触れ、「改正されたとしても、最大格差は1対4.75である」「単に4増4減するにとどまる」と指摘している。そこに込められた意味を考えるべきだ。

 「人口の多い都市部に議員がかたより、地方の切り捨てになる」という、旧態依然の判決批判にもあきれる。「選出された地元のことしか考えられない」と告白するに等しい。自分は全国民の代表だという自覚をもてない議員は、さっさと胸のバッジをはずしたらどうか。

 衆参そろって違憲状態という前代未聞の状況は、国会が目をさます最後の機会だ。国民の意思を正しく反映する議会をつくり、未来に道を開くのか。最後まで党利党略に走り、混迷を抜けだせなかった「選良」として、後世に恥をさらすのか。

 議員一人ひとりの見識と覚悟が問われている。

検索フォーム

汚染廃棄物―国と自治体が一体で

 福島第一原発の事故で放射能に汚染された廃棄物について、東日本の各地で最終埋め立て処分が滞っている。

 家庭ゴミを燃やした灰や下水汚泥、稲わらなどだ。埋め立てると地下水の汚染や地元農産物の「風評被害」を招きかねないと反対の声が上がり、焼却場や下水処理場などに仮置きされている例が少なくない。

 一部の施設では業務に支障が出ている。なにより安全上、仮置きは問題だ。コンクリートでまわりから遮断した処分場への埋め立てを急ぐ必要がある。

 事故後に作られた特別措置法に基づき、放射性セシウムが1キロあたり8千ベクレルを超える廃棄物は「指定廃棄物」とされ、国が処分に責任を持つ。

 指定廃棄物があるのは9都県。環境省はこのうち栃木県では矢板市、茨城県では高萩市の国有林を最終処分場の候補地に選んだが、両市とも激しく反発し、宙に浮いている。

 処分は国の責任とはいえ、埋め立ての「現場」は各地の自治体だ。国が場所を選び、自治体側が受け入れを判断するという構図ではうまくいくまい。国と県、市町村が一体となって、住民とともにひとつずつ検討していくしかない。

 指定廃棄物は発生した県ごとに処理し、既存の処分場の活用を優先しつつ必要なら各県に1カ所ずつ最終処分場を造る。それが基本方針だ。福島県については、既にある民間の処分場と政府が検討中の中間貯蔵施設を連携させる案が示された。

 福島以外の8都県のうち、今のところ5県で最終処分場の建設が予定されている。環境省は候補地を選ぶ際、自然公園や地滑り危険区域を除いたうえで、地形や地質、水源・集落などへの影響を総合的に判断する。

 こうした考え方は事前に自治体側に説明したが、複数の候補地から1カ所に絞り込む作業は秘密に進めたため、矢板、高萩両市とその住民が「なぜうちなのか」という反発や疑問を強めることになった。

 どんなやり方がよいか、難しい。ただ、「あらゆる情報を公開する」ことが原発事故の教訓だ。その方が、長い目でみれば理解を得やすいだろう。

 群馬県は、最終的にまとまらなかったが、指定廃棄物を保管する六つの市と村ごとに処分場を造ることを模索した。宮城県は近く、県とすべての市町村が集まって協議を始める。

 自治体は、問題を国任せにせず、自ら動いてほしい。そこに環境省が加わり、共同作業で知恵を絞っていきたい。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介

アンケート・特典情報