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藻類バイオマス次世代エネ 年度内、仙台・南蒲生に研究施設
| 「仙台でのプロジェクトで5年以内に基盤技術を確立したい」と意気込む渡辺教授 |
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有機物を吸収し、石油系の炭化水素を作る「オーランチオキトリウム」に代表される藻類バイオマスを活用し、仙台市と筑波大、東北大が取り組む次世代エネルギーの共同研究が具体的に動きだす。本年度内に、研究施設を下水処理施設「南蒲生浄化センター」(宮城野区)に整備。有機物が豊富な下水をサンプルにした培養実験も筑波大で始める。 東日本大震災の復興プロジェクトとして7月、文科省と復興庁の補助事業に採択された。2016年度までの5年間、年間約1億8000万円の補助金を得られる見通し。 津波で被災し、復旧工事中の南蒲生浄化センターに集まる下水を活用。オーランチオキトリウムと、光合成で炭化水素を生成する藻類「ボトリオコッカス」を使い、効率的な生産方法を探る。 藻類バイオマスの生産は筑波大、炭化水素の抽出精製は東北大が担う。藻類の増殖により、低コストで下水を浄化することも可能になる。 計画では本年度、南蒲生浄化センターの汚泥処理棟に、実験室や会議室などを備えた約200平方メートルの研究施設を設置する。筑波大は11月までに、センターの下水を使い、基礎的な培養実験に着手する。 15年度までに、研究・培養設備での実験結果を検証するための大規模パイロットプラントをセンター敷地内に整備する方針。
◎筑波大・渡辺信教授に聞く−基盤技術5年で確立
藻から石油を作る夢のような研究が、東日本大震災の被災地で加速する。実用化にこぎ着ければ、エネルギー資源の乏しい日本の国家戦略を転換させるほど大きな可能性を秘める。オーランチオキトリウム研究の第一人者で、プロジェクトのキーマンである筑波大の渡辺信教授(64)=宮城県丸森町出身=に展望と課題を聞いた。 −数ある再生可能エネルギーの中で、藻類バイオマスの優位性は。 「太陽電池や風力発電は電気という形だが、藻類の場合は液体燃料が作れる。藻類は食料と競合しない。オイルを作れる陸上植物より生産能力が10倍以上高く、面積も少なくて済む」 「計算上は深さ1.5メートル、1ヘクタールの培養プールで年間1000トンのオイル生産が可能で、培養プール20万ヘクタールで日本の原油輸入量を賄える。生産効率を上げれば、不可能な数字ではない。生産コストは1リットル100円を切ることが目標だ」 −実用化への課題は。 「オーランチオキトリウムの増殖には、下水に含まれる有機物だけでは不十分。有機物の塊である下水処理で生じる活性汚泥の活用を考えているが、可溶化技術が難しい。生産時の通気やかき混ぜ、藻類の脱水と濃縮でのコスト圧縮も課題だ」 −実現に向けた意気込みを。 「下水浄化と藻類生産を統合した基盤技術を5年で確立したい。その後3〜5年でスケールアップして検証し、10年以内に国が認めるようなシステムを完成させたい」 「ハードルは低くはないが、仙台でのプロジェクトが実現すれば、世界的な波及効果は大きい。日本が産油国になれば、人類をエネルギーの制約から解放できる」 −被災地復興への思いが強いと聞いた。 「被災地では下水処理場も水産加工場も農地も壊滅的な被害を受けた。藻類バイオマスの生産をうまく組み込み、エネルギーの生産という新たな機能を付加し、産業を興すことは可能と思う」
2012年10月20日土曜日
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