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Concerto No. 2 & Sonata No. 1
Concerto No. 2 & Sonata No. 1
価格: ¥ 2,448

5つ星のうち 5.0 2012年のベストに推したい傑作。, 2012/10/20
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: Concerto No. 2 & Sonata No. 1 (CD)
オランダの若手女流、ジャニーヌ・ヤンセンの通算8作目にあたるプロコフィエフ集。
共演と録音は協奏曲がウラディーミル・ユロフスキ指揮LPO、2012年6月、ロンドン・ヘンリーウッドホールにて。ボリス・ブロヴィツィンとイタマール・ゴランを迎えた2曲のソナタは2012年6月、ベルリン・テルデックススタジオにて。すべてセッション録音である。
全3曲11トラック、総収録時間72分58秒。

本作は協奏曲と室内楽曲の混成。前作Beau Soirに続く近現代作品集だが、お題のプロコフィエフは不意打ち感が強い。公式サイトの公演プログラムをチラ見するファンでも、この演目は予測がつかなかったのでは。
「ヴァイオリン協奏曲第二番 作品63」は、プロコフィエフお得意の不思議楽曲。暗い森で次々に起きる変異を音符に変えたような、翌年に作曲される「ピーターと狼」の大人向け裏ヴァージョンのようなダークな曲想が面白い。
オケが奏でる物語の舞台が目まぐるしくスクロールするなか、ヴァイオリンが主人公の感情の起伏をなぞっていく。ヤンセンの演奏は勝ち気な少女のようだが、剛胆さと繊細さが同居しているところがいい。ユロフスキとLPOのサポートも暗い中に色彩感を漂わせて見事。

「二つのヴァイオリンのためのソナタ 作品56」もやはり幻想的な標題音楽。立ち位置はヤンセンが右、ブロヴィツィンが左だろう。4楽章から成る小曲で、二人の奏者の絡みが冷めた肉感性を漂わせる。
そしておそらく本作のコアになるのが、最後の「ヴァイオリンソナタ第一番 作品80」である。ここまでの楽曲がまるで本作のウォームアップであったかのように、ここでのヤンセンとゴランの演奏はずば抜けた深みと静謐な美をたたえながら、聴く者の心をわしづかみにする。
ほんの僅かな不満を記せば、プロコフィエフの作品に潜む、ある種の得体の知れなさと底意地の悪さを表現するには、ヤンセンのキャラクターはちょっと裏表が無さ過ぎる気もするのだが、それとてこの演奏の魅力を損なうものではない。

リリース直後でまだ聴きはじめたばかりの本作。おそらくこの先、長く聴き続けることになるだろう。私個人として現時点での2012年ベスト作であり、これまでのヤンセンの作品でも最高の出来と思う。収録作品は決して万人受けする楽曲ではないが、ぜひ多くの方に耳を傾けていただきたい。録音も空間の再現性に優れ、かつヴァイオリンの豊満なソノリティを見事に捉えた、素晴らしいクオリティである。

The Light Of Paris
The Light Of Paris
Jean-Michel Berts著
エディション: ハードカバー
価格: ¥ 4,420

5つ星のうち 2.0 人生はこの写真を観るには短過ぎる。, 2012/10/18
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: The Light Of Paris (ハードカバー)
ネットショッピングと写真には、共通点が2つある。狙った対象をボタンのひと押しで手に入れられること。もう1つは、手に入れたものがこちらの予想を裏切る場合が、ままあることだ。
本書はその2つを改めて気づかせてくれた書籍である。

本書に収録された写真は、すべてモノクロの夜景。撮影時間は定かではないが、恐らく夜明け前の薄暮を狙ったものが多いと思う。特徴的なことは(というより、他に特徴はない)「人の営み」を徹底して排除している点。唯一見返しの写真を除いて、街並みにもセーヌの川辺にも、人の姿は一切なく、また路上を走る、あるいは路肩に停められたクルマも見当たらない。

こうした「無人の都市風景」を集めた作品集には、すでに先例(TOKYO NOBODY―中野正貴写真集)がある。だがそうしたオリジナリティ以前の問題として、本書の写真は表現技法が稚拙に過ぎる。モノクロの表現に重要なフィルターワーク、また覆い焼きや焼き込みの技術はアマチュアレベル。構図もさして光るところがない。書籍のデザインとレイアウトも低調だ。

もちろん、写真の価値は撮影技法の巧拙だけで決まるものではない。だが本書に納められた写真は、パリの周遊観光に頻繁に組み込まれるような場所で撮られたものばかり。そういう「名所」の路上に三脚を立ててシャッターをバルブに設定し、人の姿を消すだけでは、土産物屋の絵はがきと大差はないのではないか。
ちなみにパリの市中では三脚撮影は禁止されている。

撮影者のジャン=ミシェル・ベルツ氏は、大学教授なのだそうだ。何を教えているかは知らないが、美術に関連した分野でないことは間違いないだろう。
ベルツ氏は本書と同様の手法で、世界のあちこちの都市を撮っており、それらは同じ出版社からシリーズ化されている。同慶の至りというべきだが、氏の狙いがもしも「廃墟としての都市風景」などという高尚なものであるのなら、写真を撮ることを一旦休止して、タルコフスキーの映画を観ては如何かと思う。

書籍のネットショッピングは便利ではあるが、便利さゆえの間違いも起きやすい。当初は★1つとしたが、中身を確認せずに購入した側にも落ち度はある。やはり実店舗に出かけ、書籍を手に取る手間をかけるべきと反省。
だが人生の時間は、こういう書籍のページを捲るには、あまりに短い。

マスコット 印度の味 バターチキン 180g
マスコット 印度の味 バターチキン 180g
価格: ¥ 677

2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 洋食屋さんの日だまりのようなまろやかさ。, 2012/10/17
Amazon Vine 先取りプログラム™ メンバーによるカスタマーレビュー (詳しくはこちら)
日本人なら、時おり無性に食べたくなるカレー料理。家庭で作るなら市販のルーを、手早く済ませたい場合はレトルトを選ぶのが一般的だろうか。そうした商品は種類も多く選ぶ愉しみもあるのだが、ほとんどが日本風の「小麦粉カレー」になる。
本製品はそれらと一線を画した、小麦粉不使用のペースト状カレー。鶏肉と水360ccを加えて3人前の分量になる。

本品はロングセラー(発売は1987年)とのことだが、使うのはこれが初。一応メーカー推奨のレシピを元に作ってみた。
レシピといっても「炒めた鶏肉に本品と水(やや少なめで後から調節するといい)を加えて混ぜるだけ」。鶏肉をハサミで切るところから始めて、完成までの所要時間は20分弱。早い!

それだけではレビューにならないので、味の傾向を具体的に記すと、これは普通の小麦粉カレーとはまったく別物だ。ただしインド料理専門店のカレーとも、かなり違う。分かりやすく書けば「老舗の洋食屋さんのハヤシライスをベースにつくったカレー」という雰囲気だ。
基本的な味の構造は「トマトベースのシチューにカレースパイスを加えたもの」。トマトの酸味とタマネギの甘みは、洋食屋のドミグラスソースのベースでもあり、本品もその風味がかなり支配的。ラベルには十種類以上のスパイスが記されているが、それらは完全に溶け合って主張しない。

子供から大人まで、一家で楽しむにはよくできた味付けだと思う。もし物足りない場合は、市販のカレーパウダー(拙宅では「シェアウッド カレーパウダー ホット」を使っている)を適量足して調節しよう。また酸味をさらにシャープにしたい場合はヨーグルトを加える。インド料理専門店の風味に近づけたい場合は、超細かく刻んだニンニクと生姜で鶏肉を炒めるといいと思う。
また鶏肉は煮込み過ぎると硬くなる。早めに味を沁み込ませたい場合は、炒める前にフォークで突いておこう。

本品のような「レディメイドのペースト」は、なるべくそのままのレシピで使うべきかもしれないが、自分の好みの味にするためのベースとして考えるのも悪くない。なお開栓後は一度に全量の消費が推奨されており、使い分けは不可とのこと。
本品と家庭で作るカレー料理との一番の違いは、独特のまろやかさ。その秘密はスパイスの配合などよりも、「大量の素材を長時間煮込む」製造過程にあるような気がする(公式サイトによれば「約1300本分を一度に煮込む」そうだ)。そうして得られる上品で深いコクは、市販のルーとは一線を画したもの。昼下がりの洋食屋さんの、日だまりの暖かさに似た味わいである。

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
価格: ¥ 1,527

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 寒い国からやって来たヴァイオリニスト。, 2012/10/17
ヴィクトリア・ムローヴァのキャリア初期を飾る名作の復刻。彼女の三作目にあたる本作は、1988年6月、ロンドン・アビーロードスタジオにてセッション収録された旧ソ連・協奏曲集である。共演はアンドレ・プレヴィン指揮RPO。

バロックに深く傾倒する今からは想像もできないほどに、かつてのムローヴァは精密なマシーンを思わせる音楽家だった。その演奏は、まるで冷戦時代の東側体操選手のように軽やかで正確で、しかし表情に乏しい。技巧派の演奏家に貼られがちな「冷たい」という惹句が、ムローヴァほど似合った人も稀だろう。
本作はその在りし日の厳しい個性が、デビュー以来初めて(しかも完全に)プラスに作用した作品といえる。

収録楽曲はともに難曲中の難曲。特にショスタコーヴィチは技巧面に加え、体力と集中力の要求レベルが高いことで知られる。昨今では女流奏者のレパートリーとして定着したが、本作の発表当時は驚きを持って迎えられたものだ。
そうしたテクニカルでフィジカルな側面に注目すると、本作はオイストラフ以降の演奏史の流れを変えたように思える。全編にわたるテンションの高さはとりわけ印象的で、特にパッサカリアとカデンツァにみる「光を吸収する黒ダイヤのような」表情が素晴らしい。続くブルレスケ、そしてカップリングのプロコフィエフも快演だ。

ただし本作をテクニカルな面だけで捉えれば、録音から四半世紀という時の流れを感じさせる部分があることも事実。最近の若手にはこの演奏水準をベースに、よりきめ細やかな表情で聴かせる奏者が少なくない。
だが本作におけるムローヴァの演奏が特別なのは、これがソ連崩壊直前に録音されたという時代背景だけでなく、奏者自身が一旦捨てた祖国と向き合うことで生まれた、ぎりぎりの空気感に因るところが大きいのではないか。付け加えるようで恐縮だが、プレヴィンの楽曲解釈も素晴らしい。特にショスタコーヴィチで聴かせる風格は、彼の最良の指揮作のひとつと思う。

なお原盤を制作したフィリップスのレーベル消滅により、本CDはデッカへの移行再発となる。といっても、レビュー投稿時点でのリリースはこの日本盤のみ。ムローヴァのフィリップス録音は出来不出来(というより聴き手の好悪)に落差があることも事実だが、それも含めた再評価ができる供給体制を、なるべく早く整えて欲しいと切に願う。

WUSTHOF スライサー 20cm
WUSTHOF スライサー 20cm
価格: ¥ 15,250

1 人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 マイスターの技が息づく「一生ものナイフ」。, 2012/10/15
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
ゴードン・ラムゼイ愛用のナイフである。
製造元のウイストフは「刃物の街」ドイツ・ゾーリンゲンで七代続く家族経営の老舗。従業員220名というから、同じ出自のツヴァイリング J. A. ヘンケルスなどに比べ、ずっと小規模だ。
ただし刃物製造の分野では、長い伝統に培われた職人仕事も根強く残っており、会社の規模と品質レベルは必ずしも比例しない。日本では馴染みの薄い「三つ又槍」(ドライザック)マークのナイフは、そういう職人技が息づく品なのか。1本試してみることにした。

ウイストフの公式サイトには、現在7種のナイフシリーズが紹介されている。本製品は「クラシック・アイコン」と呼ばれるシリーズに属し、やや古典的かつ重厚なデザインに特徴がある。
「クラシック・アイコン」の品揃えは全部で26種(!)。プロの厨房でもそれだけ使う例はまずなさそうだが、調理器具への情熱は流石のドイツ人だ。「その割りに料理をしない」という批判もあるが。

このページのナイフ(4506/20)は、公式サイトでは''Carving Knife''に分類される。その名称があまり使われない日本では、「サンドウィッチナイフ」や「スライサー」の名で売られているようだ。
刃渡りは公称20センチ(8インチ)。牛刀よりもさらに細身で、和包丁なら「柳刃」に相当する。それと同様、刃をあまり往復させず切断面を美しく保つ使い方に適している。

「下ろしたて」の切れ味は(このクラスでは当然ながら)群を抜く素晴らしさ。刺身はもちろん、脂身の多いブロック肉や生ハムも、意図した厚みでスムーズに切れるのは感動ものだ。最小限の力で切れるため、サンドウィッチやバゲットなど「潰したくない食材」にも向いている。
切れ味の持続性については、まだ下ろしたてのため未知数だが、長く保ちそうな感触はある。

個人的に興味を抱いた「ゾーリンゲンの伝統」については、刃よりもグリップにそれを強く感じた。この製品は切っ先からグリップエンドまで鋼材が貫通する構造で、エンド部はちょうどハンマーのようになっている。プロの料理人が甲殻類の殻などを割る際に使いそうだが、そういう部分の佇まいが絶妙にいい。
また微妙なカーブを持たせたグリップも触感に優れ、掌に心地よい重さを伝えてくれる。量産品ゆえグリップ素材は合成樹脂だが、質感はきわめて高く、このあたりにドイツの職人(マイスター)気質が息づいているように感じた。

このナイフは三徳やペティナイフのような万能性はないため、出番はそう多くない。ただしこのタイプを1本備えておくと、趣味の料理にも幅が広がるはず。和包丁のような頻繁な手入れを要求しないところも、家庭向けとして好適だ。本製品のように愛着が湧く品を選べば、たぶん一生ものになるだろう。所有する喜びのある、良い道具である。

Vanguard バンガード カーボン三脚 Alta Pro 254CT
Vanguard バンガード カーボン三脚 Alta Pro 254CT
価格: ¥ 45,800

8 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 「デジカメの進化」に対応する優れた多機能三脚。, 2012/10/14
Amazon Vine 先取りプログラム™ メンバーによるカスタマーレビュー (詳しくはこちら)
バンガードの多機能カーボン三脚を試用させていただいた。本機はコラム(センターポール)の角度を自由に変えられる「ALTA PROシリーズ」の中級機。同シリーズの284CTに対し最大伸長が約5cm短く、約230gほど軽くなっている。
試用はバンガード製ボールヘッドSBH-250と組み合わせ、ニコンD700に各種交換レンズを装着して行った。

■デザインと材質:
黒を基調にオレンジとシルバーのアクセントを配したデザイン。ややスポーツシューズ風だが、独自性はよく出ている。材質は脚部がカーボン、コラムは六角断面のアルミ合金。その他の部材はマグネシウム合金が主体で、仕上げの品質感は総じて高い。
脚部に巻かれたフォームグリップは感触良好だが、材質の発泡ウレタンは経年劣化の心配もある。カーボン素材は滑りにくく冬場でも楽に持てるので、これは不要ではなかったか。

■使い勝手:
本シリーズの「売り」は、MACC(マルチアクセスセンターコラム)と称するコラム角可変機構。同様の機構を持つ三脚にはジッツオ・エクスプローラーベルボンVS-443Qなどがある。
そうした他社製品と本機の大きな違いは、通常の垂直使用時にコラムが三脚中央に収まるところ。このため安定感が高く、またオフセットしたコラムに特有の違和感がまったくない。

その反面、垂直からチルトに移る際の操作はやや手順を要し、また垂直〜約45度までの間は、コラムを目一杯伸ばす必要がある(コラム後端が基部のパーツに接触するため)。
取説にない裏技として、コラムを天地逆に装着すると垂直からのチルト移行が瞬時にできる。この場合は下向けの振り角に制限が出るのだが、高いカメラ位置でチルトを多用するなら、こちらの方が使い勝手がいいと思う。
このタイプの三脚全般に言えることとして、チルト機構を使う場合は、カメラを載せる前に大まかなセッティングを出した方が楽である。

チルト時のセッティング自由度はきわめて高く、被写体への近接や地面すれすれのポジションも楽に取れる。ただしこの機能を活かすなら、カメラ側にも「チルト式液晶モニタ」の備えが欲しい。
またコラムを倒立させて使う場合、通常の雲台ではカメラも天地逆になる。それを嫌う方にはジッツオのオフセンターボール雲台をお勧めしたい。

コラムの伸縮幅は約260mm(垂直使用時は約215mm)。上記のジッツオ・エクスプローラー(290mm)とベルボンVS-443Q(200mm)の中間で使いやすいが、このタイプの三脚に共通した弱点として、コラムを伸ばせば重心が三脚中央から離れ、転倒の危険も増す。チルト時はなるべく脚の開き角を大きく取るか、コラム下端のフックに錘りを吊ると安心。ストーンバッグの併用も有効だ。

雲台取り付けネジは1/4インチが標準、3/8インチには付属アダプタで対応する。その他の付属品はキャリングケース+パーツ締め付け用レンチキット。
※別ページの仕様欄に付属とある「ストーンバッグ」は手元に届いた品に同梱されておらず、また箱にも記載が無かった。

■まとめ:
近年のデジカメは「高感度領域の画質向上」や「手ぶれ防止機能の普及」などで、手持ち撮影領域が拡大している。これはすなわち、三脚やストロボなどの使用頻度が低くなったことを意味する。
そういう時代に求められる製品として、本機は「セッティングの自由度」を高めることで、旧来の三脚にない付加価値を出すことに成功している。自由度ならジッツオ・エクスプローラーの方がさらに高い(脚の開き角が無段階で決められる)のだが、本機は普通の感覚で使えるところが魅力。
実用上唯一の不満は「コラムを水平付近で伸ばした状態の剛性」がジッツオにやや劣ること。そうした条件ではリモートレリーズの併用をお勧めしたい。

※最後に余談だが、本ページトップの画像で2枚目以降は他機種の画像である。まったく無関係な画像も混じっているので、早期の訂正をお願いしたい。

■参考:バンガード三脚の品番の読み方
バンガードの三脚は機種ごとの違いが分かりにくい。本機の品番「254CT」を例に、スペックから割り出した品番の読み方を記しておこう。

「2」=不明(同一シリーズ内の世代を指す?)
「5」=最大パイプ径が25mm(28mmなら「8」になる)
「4」=伸縮段数(3段なら「3」になる)
「C」=パイプ材質がカーボン(アルミなら「A」になる)
「T」=雲台なしの三脚''Tripod''のみ(ボールヘッド付きは「B」になる)

Zwillng Twin Fin L ナイフブロックセット 6pcs 30830-716
Zwillng Twin Fin L ナイフブロックセット 6pcs 30830-716
価格: ¥ 21,000

5つ星のうち 4.0 モダンデザインの厨房によく似合うセット。, 2012/10/11
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
「世界の名品」ツヴァイリングのナイフ4本と料理ばさみ、ナイフブロックをひとまとめにしたセット商品。ツヴァイリングは同様のセットをいくつか出しており、それぞれ単品で購入するよりも割安になっている。

■セット内容:
Twin Fin L マルチパーパスナイフ
刃渡り18センチ(このページの説明に20cmとあるのは誤り)の三徳包丁
・Twin Fin L シェフナイフ
刃渡り18センチ(このページの説明に20cmとあるのは誤り)の牛刀
・Twin Fin L ペティナイフ
刃渡り13センチの小型万能ナイフ
Twin Fin L フルーツナイフ
刃渡り9センチの果物ナイフ
Twin L 料理ばさみ
・ナイフブロック

■デザインと使い勝手:
4本のナイフ「Twin Fin L」は、上位機種「Twin Fin」(総ステンレス製)のハンドルを樹脂性として軽量化し、価格も低めに抑えたシリーズ。オブジェのような存在感は無くなったが、代わりにカジュアルな雰囲気を身につけている。

ハンドルは握る手によくフィットし、また樹脂製のため冬場でも使いやすい。驚くほどの軽さは良い面とそうでない面があり、野菜を刻むような作業は楽にこなせる反面、断ち割るような場合は思った角度で切れないこともある。できれば他に1本、少し厚手で頑丈な三徳を備えておくと万全だろう。

下ろしたての切れ味は流石に素晴らしく、砥ぎたての包丁にも明らかな差をつける。もちろん毎日使えば徐々に鈍ってくるのだが、切れ味の「持ち」は良い方だ。
ただし刃先の反りが大きいため、砥ぎはコツが要る。日頃はシャープナーを使い、数年に一度くらいメーカーに砥ぎ直しを依頼する(意外に安い)と良いと思う。拙宅では砥石を使っているが、ブレードへの砥ぎ傷は避けられない。

■付属品:
料理ばさみの切れ味も秀逸。これでデザインに洒落っ気があれば最高なのだが。
ナイフブロックは欧米のキッチンでお馴染みの品。ただし「Twin Fin」「Twin Fin L」は鍔に角度を持たせてあるため、このブロックは専用デザインだ(通常のブロックでは「アゴ」の刃先が露出して危険)。素材は水に強いバンブー(竹)の集成材製で、鞘は底面まで貫通しており、「Twin Fin L」のパンナイフ(刃渡り20センチ)も収納できる。

■その他:
本セットに含まれるナイフは、岐阜県関市のツヴァイリング日本工場で製造された国産品(料理ばさみはドイツ製、ナイフブロックは中国製)。これは「Twin Fin」も同様で、原料の鋼材や製造技術はドイツ製と同等とのこと。もちろん切れ味や耐久性も同等だろう。
「Twin Fin L」は通常のナイフとはグリップ感がやや異なるため、こういうセット品で揃えるのが正解かもしれない。モダンデザインの厨房にはよく似合うセットだと思う。

Cherubini: Requiem & Marche funéebre
Cherubini: Requiem & Marche funéebre
価格: ¥ 898

5つ星のうち 4.0 ピュアな内省感を漂わせるレクイエムの秀作。, 2012/10/7
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: Cherubini: Requiem & Marche funéebre (CD)
音楽史の狭間に埋もれつつある「ケルビーニのレクイエム」と「葬送行進曲」を採り上げた意欲作。演奏はディエゴ・ファソリス指揮スイス・イタリア語放送管弦楽団+ルガーノ・スヴィツェラ放送合唱団。1996年4月、スイス・ルガーノの聖ロレンツォ大聖堂にてセッション録音。全2曲8トラック、総収録時間55分31秒。なお本作はナクソスとスイス・イタリア語放送の共同制作である。

ルイジ・ケルビーニ(1760-1842)ほ生涯で2曲のレクイエムを作曲した。本作に収められている第1番ハ短調は、「ルイ16世の死を悼んだもの」という。フランス革命が国王を断頭台にかけて後、ほぼ23年を経ての成立。作曲はナポレオンに換わるケルビーニの新しいパトロン、復古王制のルイ18世の依頼による。

楽曲の仕上がりは上々。同時代と少し後の作曲家たちが絶賛したというのも頷ける。特にベートーヴェンはこの曲にいたく感銘を受けたといい、彼の作品に影響を与えた可能性もある。
そうして一世を風靡した楽曲が、なぜ時代を下るごとに埋もれていったのか。理由はよく分からないのだが、モーツァルトやヴェルディ作品のような「一種過剰な劇性」に乏しかったことが作用したのだろうか。

ケルビーニの書法は分厚い木管に特徴があり、本作でもファゴットが優れた効果を上げている。合唱スコアも洗練されており、後のフォーレ作品に通じる「ピュアな内省感」を漂わせる。
ちょっと変わっているのは「怒りの日」で使われる銅鑼。これは本作に併録の「葬送行進曲」でも強烈な印象を与えるもので、このあたりは他の作曲家にない個性である。

本CDの演奏について。指揮者と楽団、合唱ともに知名度は高くないが、演奏はかなりの高水準と思う。楽団の本拠地ルガーノはアルゲリッチのCDでもお馴染みの、クラシック音楽にゆかりの深い街なので、これは当然か。
ケルビーニのレクイエム第1番は、近年EMIから70年代のムーティ盤がボックス化されており、また近作ではハイペリオンからのマシュー・ベスト/コリドンシンガーズ盤も秀作だった。本作もそれらに劣らぬ出来であり、これはナクソスの隠れた名盤だろう。

なおジャケットの肖像画は、ケルビーニと同時代のローマ教皇ピウス7世のもの。在位はレクイエム第1番の初演(1816年1月21日、サン=ドニの礼拝堂にて)に重なり、おそらく復古王制下での宗教儀式を取り仕切った人物だろう。この肖像を描いたジャック=ルイ・ダヴィッドもまた、(ケルビーニと同様に)ルイ16世やナポレオンらをパトロンとした画家である。ケルビーニという音楽家は、そういう波乱の時代に生きた人だったのだ。

Hilary Hahn Collection
Hilary Hahn Collection
出品者:おもてなし書房  【年中無休・送料無料・迅速・丁寧】に発送しております  (一部商品は送料別)
価格: ¥ 3,359

5つ星のうち 5.0 ハーンのSME時代をコンプリートできるセット。, 2012/10/6
レビュー対象商品: Hilary Hahn Collection (CD)
現代最高の技巧派ヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーンの初期5作品をまとめたセット。といっても紙ジャケや特製ボックス入りではなく、単品販売のCD5枚を簡素なスリップケースに収めただけのもの。奏者への愛情と敬意に欠ける手法だが、この箱ひとつでSME=ソニーミュージック時代の作品がすべて揃う。DG(=ドイツグラモフォン)からの近作で彼女のファンになった方には、またとない企画だろう。

■CD1:プレイズ・バッハ(1997)
輝かしきデビュー作。バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」からの選集で、当時17歳という年齢が信じられない成熟された表現が聴き手を驚かせた。

■CD2:ベートーヴェン&バーンスタイン集(1999)
初の協奏曲集。ベートーヴェンとバーンスタインという、時代も出自も大きく異なる作品のカップリングは、その後のハーンの方向性を決定づけた。共演はジンマン指揮ボルティモア響。

■CD3:バーバー&メイヤー集(2000)
米国の作曲家作品に焦点を合わせた第3作。近作のアイヴス集に至る路線の出発点ともいえる内容で、ハーンの音楽性を知る上で欠かせないもの。共演はヒュー・ウルフ指揮セントポール室内響。

■CD4:ブラームス&ストラヴィンスキー集(2001)
スケールの大きな演奏で聴かせる協奏曲集。ハーンのアプローチはロマン派楽曲に対してもきわめて冷静かつ客観的。そのドライでクールな個性が際立ちはじめたのもこのあたりから。共演はマリナー指揮アカデミー室内響。

■CD5:メンデルスゾーン&ショスタコーヴィチ集(2002)
ハーンの圧倒的な技巧と表現力を知らしめた名盤。特にショスタコーヴィチが素晴らしく、第4楽章の疾走感あふれる演奏は、未だにこれを超えるものがない。共演はオスロフィル、指揮はメンデルスゾーンがウルフ、ショスタコーヴィチはヤノウスキと、曲に合わせて使い分ける完全主義を見せた。

以上の作品を聴き返すと、デビュー作を除くすべてが協奏曲録音という贅沢さが印象的。現在のように制作コストが絞られる前の、佳き時代であったことも確かだが、SMEがハーンに寄せた期待もよく分かる。
それだけにDGへの移籍は意外であり、これはその当時の「SMEとは方向性に意見の相違があった」という彼女の発言よりも、深く私淑するバッハの母国であり、自らのルーツにもつながるドイツレーベルでの制作を熱望したように思える。

そうした想像はさておき、ここでの5枚では「若きヴィルトゥオーゾ」の勢い溢れる演奏が聴けるところがポイント。DG移籍後の落ち着きある表現(特に室内楽)にも惹かれるが、この当時の「尖った演奏」にはまた別の魅力がある。
ハーンは近年の作品で現代曲などへの取り組みが目立ち、それは何かを模索しているようでもある。彼女の次のステップは何か、個人的にはデビュー作で採り上げたバッハ作品の全曲録音ではないかと思うのだが、果たしてどうだろう。

なおSMEはハーンの音源を複数の異なるパッケージでまとめており、本セットとタイトルとジャケ写が共通の3枚組Hilary Hahn Collectionは上記CD1、2、4を収容する。
また2011年リリースのSpectacularはデビュー盤を除く4枚を3枚にまとめたもの(そちらの収録内容はリンク先で確認されたい)。できれば本作の内容でリマスターを施し、紙ジャケ入りボックスにまとめ直してもらえると有り難いのだが。

Lalo Vieuxtemps(...):Shlomo Mintz
Lalo Vieuxtemps(...):Shlomo Mintz
価格: ¥ 643

5つ星のうち 5.0 天才ミンツの、魔人のような技の冴え。, 2012/10/4
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: Lalo Vieuxtemps(...):Shlomo Mintz (CD)
シュロモ・ミンツの至高の芸を堪能できる名盤。共演はズービン・メータ指揮イスラエル・フィル。1988年10月、テルアビブのフレデリック・R・マン・オーディトリウムにてセッション録音。全3曲9トラック、総収録時間60分01秒。なお本作の原盤はDG=ドイツグラモフォンの制作である。

収録曲はエドゥアール・ラロ作「スペイン交響曲 作品21」、アンリ・ヴュータン作「ヴァイオリン協奏曲第5番 “ル・グレトリ” 作品21」そしてサン=サーンス作「序曲とロンド・カプリチョーゾ 作品28」。
いずれも独奏者に高度な技巧を要求する楽曲であり、急激な上昇と下降、そして悲痛な「泣き」の旋律が随所に織り込まれる。どの曲のどの部分を切っても、ロマンとエキゾチシズム(特にラロとサン=サーンスはアラブ=アンダルースの血を感じさせる)が流れ出す、そういう「濃い時代」を偲ばせる佳曲である。

それにしてもミンツの、ここでの技の冴えはどうだろう。技巧に秀でた奏者は、それこそ星の数ほどいるが、ミンツの演奏はそこに溢れんばかりの歌心が加わり、音楽が生き生きと呼吸している。
反面、どんな超絶フレーズも余裕綽々で弾かれてしまうので、聴く側は「感動する前にあっけにとられる」かもしれない。まさに魔人のごとき演奏。それを支えるメータとイスラエル・フィルの好演も忘れ難いものだ。

ミンツは1957年生まれだから、本作録音時(誕生日の直前)は齢30。すでにヴィルトゥオーゾの貫禄を漂わせていた彼は、ここから先は徐々にスタジオから遠ざかり寡作家になる。理由は知らないが、メジャーレーベルのビジネスと相容れない部分があったのかもしれない(ミンツの近作は独立レーベルからのリリースが主体である)。

半ば埋もれかけていたこの作品。再発してくれたブリリアントには感謝するしかないが、本作のリリース権を他社に貸し出すDGの姿勢にも疑問を感じる。
いかにもチープな装丁の廉価盤ということで、本作を遠ざけている方には、先入観を捨ててぜひ耳を傾けていただきたい。ここには真の名演が収められている。

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