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5つ星のうち 2.0
本を読まない人がデザインした本, 2012/6/25
5、6ページ読んだところで、「ああ、失敗した」と思った。びっくりするほど読みづらいのだ。その原因は内容ではなく、文字のレイアウトおよびデザイン。まるでバラエティ番組の字幕のように、「ここ重要ですよ!」「ここきっちり読んで!」というところで無駄に太字、ルビ、アスタリスク、果てには訳注のように見えるが実は誰でも知っている単語を長い言葉で解説しているだけの駄文が散りばめられている。しかも不要なだけでなく、親切ですらない。カッコ書きも多い。目が、とにかく色々な場所に行くようにデザインされている。普通に上から下へと読み進められない作りなのだ。
数ページ読んだだけで以下の点が気になった。
・重要でもない単語・フレーズに太字(「進んで敵をハグ」を強調する必要性はあるのか?)
・「情報受渡地点」には「デッドドロップ」、「協力者」にはエージェントという、必要のないルビ
・「有用な情報」というフレーズには同じ段落であろうと毎回毎回「インテリジェンス」というルビが振ってある
・縦書きの中に、英語フレーズが横に倒された状態で頻繁に出てくる(それなら全部横書きで出せばいいのに…)
以下は、過剰な太字活用の一例だ。<<>>で囲んだ部分が太字。また、ウェブサイトのURLだけは横倒しなので、顔を傾けて読むことになる。
p54
「ケースオフィサー志願者の場合、選考のプロセスはいつも<<書類審査>>から始まる。書類はCIAのサイト(www.cia.gov)にあり、次に<<面接>>、それから少し変わった<<身体検査>>と<<心理テスト>>(うそ発見器を含む)を行う。その後には徹底的な<<身辺調査>>が行われる」
この太字は必要だろうか?出版社は、ここまでしないと読者が要点をつかめないと思っているのだろうか?そもそも編集者は内容を理解しているのか?この太字は何かに似ていると思ったが、あれだ、受験生がやみくもに蛍光ペンで何でもかんでもハイライトしていく様子にそっくりだ。
本のマージン部分に散りばめられた解説もひどい。例えば、「スパイ活動に必要なノウハウ」というフレーズは太字なだけでなくアステリスクがついており、ページ下の解説を見ると、「*スパイ活動に必要なノウハウ 国家秘密本部のケースオフィサーとその他の職員が任務を遂行するときに使う方法」と書かれている。そんなことはわかっている。また、解説を見るためにページ下を見ると別のページに行くよう指示されていることもある。まるで、本文を集中して読ませないためのすべての工夫がされているかのようだ。「ソ連」や「冷戦」も解説があり、冷戦は「軍事紛争に発展しそうになったこともあった」とご丁寧に説明してある。ありがとう、教えてくれて!
とりあえず、この本を製作した人たちは本を一気に読んだことがないと確信した。それぐらい読み進めにくい本なのだ。内容は非常に面白そうなのに、残念だ。私にはもう頑張る余力がない。