「究極のテストパイロット」ニール・アームストロングを悼む

人類で初めて月面に降り立ったニール・アームストロングが米国時間25日、82歳で死去した。もともとは航空デザイナーを目指していた彼は16歳で初の単独飛行。その後NASAの前身、NACAでテストパイロットとして200機以上を操縦した。

ノース・アメリカンX-15とニール・アームストロング。アームストロングはX-15で7回飛行、最高時速3,989マイル(時速約6,420km)を達成した。


人類初の月面着陸を実現したアポロ11号の船長として知られるニール・アームストロング日本語版関連記事はこちら)。そのアームストロング船長が米国時間25日、82歳で死去した

NASAでの彼のキャリアが始まったのは、月面着陸の10年ほど前のテストパイロット時代。自らを「典型的なオタクっぽいエンジニア」と表現していたアームストロングは、熟練した航空宇宙エンジニアとして1960年代に行われた多数の飛行テストに参加。複葉機に引かれたハンググライダータイプの飛行機から超音速のロケット推進航空機まで、彼はあらゆる飛行機を操縦した。

オハイオ州ワパコネタ生まれのニール・アームストロングが、飛行機の模型を作り始めたのは小学校時代だという。彼は自分の伝記を書いたジェームズ・ハンセンに、もともとは航空デザイナーになりたかったのだと明かしている。「その後、結局はパイロットになった。いいデザイナーは航空機の操縦面も知る必要があると思ったからだった」とアームストロングは語っている。

アームストロングが初めて単独飛行をしたのは、彼の16歳の誕生日から数週間後のことだった。宇宙飛行士として選ばれる前には、海軍パイロットとして朝鮮戦争に参加し、ジェット戦闘機F9Fパンサーで実戦を経験したこともある。その後、アームストロングはNASAの前身となるNACA(National Advisory Committee for Aeronautics:アメリカ航空諮問委員会)でテストパイロットとなり、この時代にロケット機のベルX-1Bやノース・アメリカンX-15、その他ジェット機やプロペラ機など、200種類以上の飛行機を操縦することになった。

アポロ11の月面着陸の際に撮影された、有名な写真のほとんどに写っているのは宇宙飛行士のバズ・アルドリンだが、これは月面に立つニール・アームストロングの姿を捉えた唯一の写真。


その後、アームストロングは宇宙飛行士としてジェミニ8号、ジェミニ11号、アポロ計画などに携わり、1969年にアポロ11号で人類で初めて月面に降り立った。「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」とは彼の言葉。アームストロングと着陸船の操縦士バズ・オルドリンは、月面上で2時間36分を過ごした。

この計画の成功後、アームストロングは1971年にNASAを引退。大学教授となり、航空宇宙工学の教鞭を執った。また、同時にいくつかの企業の役員も務めた。彼は最近までゼネラル・アビエーションで飛行機の操縦を続けていたという。

TEXT BY JASON PAUR
PHOTO BY NASA
TRANSLATION BY 中村航


WIRED NEWS 原文(English)
※この翻訳は抄訳です

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