社説

米兵の集団強姦/地位協定改定を一日も早く

 沖縄県内で、米兵2人が20代の女性を乱暴してけがをさせたとして集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕された。
 1人は容疑を否認しているが、卑劣な犯行だ。事件当日にグアムに移動予定だったといい、「高飛び」を織り込んでいた可能性もある。
 仲井真弘多沖縄県知事は、米軍の駐留が「安全保障上必要だと言われても、こういう事件が起きると無理だ」と非難する。
 沖縄県議会が作成した抗議決議案は「再発防止の取り組みや、軍人への教育はもはや機能していないと言わざるを得ない」と、厳しい表現で米国と日本双方に不信感を突き付ける。
 「彼ら(米軍)にとって沖縄は植民地なんだ」。新型輸送機オスプレイのなし崩し的な配備強行に反対し、普天間飛行場ゲートを封鎖した座り込み活動のリーダーは憤る。
 いつまでたっても基地負担軽減が実現しない状況に、沖縄は「差別」と不満を募らせる。
 日本政府は日米地位協定の改定を強く求めるべきだ。本土復帰40年。もう、沖縄県民を痛みにさらすことはできない。
 迷走が続く普天間飛行場の移設問題も、1995年に起きた女子児童への集団強姦事件がきっかけだった。米軍関係者が起こした事件や事故は、72年の本土復帰以降5700件に上る。
 キューバ・グアンタナモでの拷問事件にみられるように、米軍の軍紀の乱れは世界の知るところだ。地位協定は「兵士の士気を損なう」との理由から米国に裁判権を認めるが、そうした配慮を受け入れる信頼関係は、もはや崩れ去っている。
 度重なる事件を受け運用改善は進んだが、時代遅れとなった治外法権は残る。根本的な改定により、日本側の主体的な捜査権限を確保すべきだ。
 抜本的見直しについて、米国は「日本との改定に応じれば全体のバランスを欠く」と消極姿勢を崩していない。
 韓国はことし、米韓協定の改定を果たし、容疑者引き渡し要件を韓国側有利に改めた。
 だが、改定後も韓国当局の権限は実質的に日本以上の制約を受けており、さらに日本側の権限が拡大されれば、韓国側が新たな不公平感を抱きかねない。米国が懸念する不均衡だ。
 米軍の駐留先は40カ国に及ぶ。協定の改定そのものが米国の国益後退に直結する以上「議会の同意を得ることも難しい」(外交関係者)ことは確かだ。
 それでも、日本側が改善を訴えていかなければ、変わるべきものも変えられない。
 事件を受け外交・防衛当局者による日米合同委員会が開催される。沖縄住民の怒りと苦悩を率直に米国側に伝えることが、日本政府の責任だ。
 「綱紀粛正という生易しい言葉ではない厳しい対応を申し入れてほしい」(仲井真知事)
 「綱紀粛正や再発防止という言葉で片付けられない」(玄葉光一郎外相)
 認識は一致している。米側の具体的な対応を求める時だ。

2012年10月19日金曜日

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