米兵夜間外出禁止令:基地の街 評価と不安
毎日新聞 2012年10月19日 20時35分(最終更新 10月20日 02時10分)
沖縄県の女性に対する集団強姦(ごうかん)致傷容疑で米兵2人が逮捕された事件で、在日米軍は日本に駐留する全米兵を対象に夜間外出禁止令を出した。米兵の犯罪が絶えない沖縄では「米軍が事件を深刻に受け止めた結果」との評価も出たが、米兵相手の飲食店にとっては客足減少につながる諸刃(もろは)の剣。基地の街には不安も漏れた。一方、事件への抗議は沖縄でやむことがなく、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが配備された宜野湾市の米軍普天間飛行場ゲート前であった集会では、市民らが「あしき隣人は出て行け」などと怒声を上げた。
夜間外出禁止令について、沖縄県の上原良幸副知事は「米軍が事件を深刻に受け止めた結果と考えている」としながらも「実効性については今後、精査、検証していく必要があると考えている」と述べた。
沖縄県では08年2月、女子中学生に暴行したとして米兵が逮捕されたり、女性宅に住居侵入したとして逮捕される事件が続き、米軍が外出禁止令を出した。しかしその後も不祥事は絶えない。別の県幹部は「米軍の外出制限が守られているかどうか、情報を収集していく」と話した。
一方、米空軍嘉手納基地がある沖縄市。客の半数が米軍関係者という寿司(すし)店主、在塚(ありづか)信夫さん(43)は「この店だけでなく、米兵が来る飲食店へのダメージは大きい」と話した。ただ「ひどい事件だったので外出禁止は仕方ないのではないか」とも語った。
本土の基地の街でも懸念が広がった。米海軍佐世保基地がある長崎県佐世保市。基地に近い「外人バー」の50代男性店員は「週末から客が途絶えるのは大きな影響がある。ここに来る兵隊さんは優しい人ばかりなんだがねえ」と言葉少な。別の店の男性店員(32)は「(長引けば)店を閉じる経営者も出てくるかもしれない」と不安を隠さなかった。
米軍岩国基地(山口県岩国市)近くで70年代からカントリーバーを経営する永峯守俊さん(73)は「ひどい事件だ。でも夜間外出禁止で困るのは基地近くのバーやスナック。本当に再発防止につながるのか」と表情を曇らせ「今は長期化しないことを祈るだけ」と話した。【井本義親、柳瀬成一郎、大山典男】
◇「禁止令だまされぬ」普天間で抗議集会
普天間飛行場ゲート前の抗議集会は沖縄平和運動センターが主催し、午後6時から約300人(主催者発表)が集まって始まった。