特集ワイド:原発の呪縛・日本よ! 宗教学者・島薗進さん

毎日新聞 2012年10月19日 東京夕刊

宗教学者の島薗進さん=梅村直承撮影
宗教学者の島薗進さん=梅村直承撮影

 それでも個々の日本人にはかなり温度差がある。「原発の被害を肌で感じる地域とそうでない地域。大組織に属し経済発展で幸せを築いてきた勢力と、自然破壊にあらがう宗教や農水産業的な基盤を持つ人たち。男女では女性に脱原発派が多い。54年のビキニ(環礁での米国の核実験)の時も反対者に女性が多かった。自然を力でねじ伏せ富をもぎとる側と、自然からの恵み、いのちの循環を尊ぶ側との価値観の違い。社会のとげとげしさが薄まったとすれば、女性的な柔らかさが目立ってきた面があるのかもしれません」

 当然、反動もある。

 「社会秩序の揺らぎに対し、尖閣問題などで愛国心、ナショナリズムをもり立てる、きな臭い動きがある。自民党の支持率が上がっているのを見ると、脱原発に対する巻き返しは無視できない」

 日本の原発事故に欧州諸国は即座に反応し、幾つかの国は脱原発を決めた。震災の時、たまたまイタリアにいた島薗さんは、敏感に反応したイタリア人が「大好きになった」という。「イタリア、スイス、オーストリア、ドイツ、ベルギー、スウェーデンなどキリスト教会の精神的影響力が強い国が脱原発の道を選んでいる。こうした国々はある種の精神性や価値観を尊んでいる点で共通性があり、もともとエコロジー感覚が強い。植民地主義で自然を支配し領土を広げてきた英米仏やロシアなどの核を持つ安保理常任理事国と、対する北中南欧の国々が違う方を向いている印象がある」

 また、欧州は86年のチェルノブイリ原発事故を身近で経験したのが大きい。「子供の甲状腺がんの軽視など、科学者の情報隠蔽(いんぺい)や政治のうそを目の当たりにしてきたからこそ、自分たちの倫理観で決める道を選んだ。日本の場合、健康被害が決定的な形でまだ明らかになっていないのが、国全体の反応の鈍さにつながっている」

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