週刊朝日連載中止:取材拒否から2日後「経緯明らかに」
毎日新聞 2012年10月20日 02時31分
橋下徹大阪市長の出自に関する週刊朝日の連載記事は、橋下氏が「取材拒否」を表明してからわずか2日後の19日、連載中止が決まった。当初、同誌は「公人である橋下氏の人物像を描くのが目的」と強気の主張をしていたが、批判の声が広がって追い込まれた。「なぜ事前に問題に気付かなかったのか」。被差別部落の問題に詳しいジャーナリストらは疑問の声を上げた。
「記事の企画や編集段階で、問題を指摘する人はいなかったのか。その感覚がなかったのなら驚きだ」
「被差別部落の青春」などの著書がある大阪市在住のフリーライター、角岡伸彦さんは同誌の対応を批判する。角岡さんは週刊誌に同和問題に関する記事を連載した経験もあり、「血脈などのプライバシーに踏み込んだ取材もするが、活字にするかどうかは別だ。週刊朝日は連載打ち切りに至る経緯を明らかにすべきだ」と話す。
フリージャーナリストの魚住昭さんは今回の記事について、「親族にまつわる負のイメージを集め、橋下氏につなげている。あからさまな差別で、こういう書き方は同じノンフィクションを書く人間として強い疑問を感じる。打ち切りは当然だ」と話す。魚住さんには政治家の出自に触れた著作もあり、「ある地域を被差別部落と特定して記すことが絶対にだめとは言い切れない。被差別部落についてどういうスタンスをとるかが問題だ」と指摘した。
記事が問題となり廃刊に至ったケースに文芸春秋の月刊誌「マルコポーロ」がある。同誌は95年、「ナチ『ガス室』はなかった」とする記事を掲載。ユダヤ人に対するホロコースト(大量虐殺)の事実を否定する内容で、米国のユダヤ人団体などから批判され、社長が辞任。廃刊に追い込まれた。【林由紀子、原田啓之】