顧客相手の訴訟自粛勧告、保険業界は反発

 金融監督院が保険加入者の権利保護を理由に、保険会社に顧客を相手取った訴訟の自粛を勧告したことを受け、保険業界が「行き過ぎた干渉だ」として反発している。

 きっかけは金融監督院がこのほど、生命保険会社、損害保険会社に対し「保険加入者と紛争が起きた場合、金融監督院の紛争調停をまず活用し、契約者を相手取る訴訟は最後の手段とすべきだ」とする自発的な決議を行うよう要請したことだ。

 金融監督院が金融機関の中で保険会社にだけ訴訟の自粛を要請したのは、今年上半期に金融機関が顧客を相手に起こした訴訟274件のうち97%に当たる265件を保険会社が占め、保険会社による訴訟の乱用が見られると判断したためだ。金融監督院のキム・テギョン紛争調停局副局長は「これまで保険会社は紛争が起きた契約者に金融監督院の紛争調停手続きを活用できるという事実そのものを告げておらず、先に訴訟という手段を乱用し、契約者に圧力をかけるケースが多かった」と説明した。

 しかし、保険業界は今回の要請を事実上の「訴訟禁止」と受け止め、それに伴うマイナス効果も無視できないと反発している。A社の役員は「憲法上の基本的権利である裁判請求権を侵害している面がある。契約者の保護もよいが、保険会社の権利も尊重されるべきだ」と述べた。

 B社の部長は「保険金詐欺の推定被害額が最近5年間で2兆2000億ウォン(約1580億円)から3兆4000億ウォン(約2440億円)へと50%以上増えた。自発的な決議が事実上の訴訟禁止となるならば、保険金詐欺に積極的に対応する手段を失う」と懸念を示した。

 保険会社の反発を受け、金融監督院は保険金詐欺の疑いが濃いケースには訴訟を積極的に活用してもらう方針であり、裁判請求権を侵害する懸念はないとして、保険業界に理解を求めた。

 キム副局長は「自発的な決議の具体的内容を業界と協議しており、裁判請求権の侵害や詐欺への対応などで問題が生じないようにしたい。早ければ来週にも自発的な決議が行われる見通しだ」と述べた。

琴元燮(クム・ウォンソプ)記者
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