米携帯電話3位のスプリント・ネクステルは、提携関係にある米無線通信会社クリアワイヤについて、支配権取得に向けて株主との交渉を進めている。ただし全面的な買収はしない。事情に詳しい関係筋が明かした。
これにより、長年機能不全に陥っていた両社の関係が明確化されることになる。ソフトバンクによる200億ドル(約1兆5800億円)でのスプリント買収で、クリアワイヤをどうするかが注目されていた。
事情に詳しい関係筋によると、クリアワイヤは赤字状態で多額の負債を抱えているが、ソフトバンクにとって利用価値のある周波数帯を保有している。スプリントは現在クリアワイヤの株式を48%保有しているが、他の株主と交渉し、全面的な買収はせずに支配株式を取得する計画だという。
米半導体大手インテルや米ケーブルテレビ(CATV)大手コムキャストをはじめとするクリアワイヤの他の主要株主との交渉によって支配権を得られれば、スプリントはクリアワイヤの取締役会メンバーの過半数の指名権を手に入れることになる。スプリントとその他株主との合意条件はまだ明らかになっていない。
ソフトバンクはスプリントの株式70%の取得に同意し、15日にスプリントの買収を発表した。ソフトバンクは、クリアワイヤが米国で採用しているのと似た技術を使用して日本で高速無線網を構築しており、孫正義社長は東京で行われたスプリントの買収に関する記者会見で、クリアワイヤの技術が利用できるメリットをほのめかしていた。
スプリントは既にクリアワイヤの保有周波数帯を利用しており、自社のスマートフォン(高機能携帯電話)のデータ通信にクリアワイヤのネットワークを使用している。だが、クリアワイヤの財政的持続性には懸念がつきまとっていた。事情に詳しい関係筋によると、スプリントの買収に必要な200億ドルの一部をソフトバンクに融資する条件として、貸し手機関はスプリントがクリアワイヤを支配できるようにすることを要求していた。
今回の取り決めは、ソフトバンクによるスプリント買収の一環として、スプリントがクリアワイヤを買収することを望んでいた投資家にとっては期待外れの結果だろう。だが、スプリントがクリアワイヤの資産の支配権を失う可能性への懸念はなくなる。また、ソフトバンクとスプリントの買収が完了すれば、クリアワイヤが買収される可能性もあるとの見方もある。買収は6~8カ月で完了する見通し。