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錦光山 雅子 (きんこうざん まさこ)
東京報道局 科学医療グループ 1998年入社
都会の路地裏で見た、高齢化社会の現実。
医療担当になってまもなく、訪問診療専門の医師と一緒に、都会の路地裏に暮らすお年寄りの患者を訪ねる機会がありました。目の当たりにしたのは、お年寄り同士が介護しあう「老老介護」のさらに一歩先、ともに認知症の夫婦が自宅で生活を送る「認認介護」の広まりでした。高齢化と核家族化が絡み合った新しい現象です。「社会のありように直接影響を与えかねない病気だ」。そう確信しました。以降、認知症の取材にのめり込むように。在宅ヘルパーらの支えで一人暮らしをなんとか維持するおじいさん。症状が進み、様子に気づいた近所の住民の通報でようやく医療や介護につながったおばあさん。一方、記憶力や判断力の衰えを悪用され、悪質商法や詐欺の被害に遭うケースも後を絶ちません。自分の意思を表せないときの権利を守る仕組みも不十分です。こうした実態を掘り起こし、高齢化に向き合いきれていない社会のほころびを伝えていこう。そう思った出来事でした。
「ブレークスルー」は思わぬところからやってくる。
小さい頃から好奇心が旺盛でした。新しい人に出会ったら満足するまであれこれ聞いたり、気になるものにつられて道をそれるポカをしたり。今の仕事で、逆にその好奇心に助けられることがしばしばです。もちろん、毎日記事を書けるほど新しい事実に出会えるわけではないし、正直すべてに興味を持てるわけではありません。でも、好奇心のアンテナを張り続けていると、思わぬときに時代の先っぽに触れられる瞬間があるものです。小さなネタから普遍的なテーマの先駆けを見いだすのが、私が目指す「ブレークスルー」。それを見つける方法のひとつに、地方版の記事の流し読みがあります。ある時、長野県の村で唯一の中学校の閉校を伝える記事が目に入りました。当時、政府の諮問機関で市町村の仕事の見直しが議論されていました。頭の中で、中学校の閉校=村の仕事の見直しというテーマが生まれました。この瞬間のワクワク感がたまらないから、私はこれからも記事を書いていくのだと思います。
入社動機 好奇心旺盛な自分のキャラクターに合っていると、新聞記者を志望するように。8年という長い時間をかけて大学を卒業した後、何度目かの採用試験を経てようやく朝日新聞社の記者職に採用される。
キャリア 入社後、山形、金沢、秋田総局を経験後、地域報道グループで自治体の行財政をメーンに担当。08年から医療担当。10年から広島総局。