ノンフィクション作家の佐野眞一氏と取材班の表題の連載に抗議して、橋下市長は朝日系列のメディアの質問には答えないと言いだし、大問題になりました。
結局、橋下氏だけでなく、多方面からの批判を受けた週刊朝日の編集長が謝罪したうえで、この連載は異例の一回で打ち切りと言うことになりました。
週刊朝日編集長は2012年10月19日、
第1回の連載記事中で同和地区などに関する不適切な記述が複数あり、このまま連載の継続はできないとの最終判断に至 りました。橋下徹・大阪市長をはじめとした関係者の皆様に、改めて深くおわび申し上げます。不適切な記述を掲載した全責任は当編集部にあり、再発防止に努 めます。本連載の中止で、読者の皆様にもご迷惑をおかけすることをおわびします。
と全面的に謝罪し、週刊朝日の親会社である朝日新聞社も
《朝日新聞社広報部の話》 当社は、差別や偏見などの人権侵害をなくす報道姿勢を貫いています。当社から2008年に分社化した朝日新聞出版が編集・発 行する「週刊朝日」が今回、連載記事の同和地区などに関する不適切な記述で橋下徹・大阪市長をはじめ、多くの方々にご迷惑をおかけしたことを深刻に受け止めています。
とコメントを発表し、佐野眞一氏は、朝日新聞出版を通じ
「記事は『週刊朝日』との共同作品であり、すべての対応は『週刊朝日』側に任せています」、「記事中で同和地区を特定したことなど、配慮を欠く部分があったことについては遺憾の意を表します」
というコメントを発表したそうです。
全く、せっかく支持率が低下してきた橋下維新の会と朝日新聞が裏で手を握って、維新の会に塩を送ったのかと思うような展開です。
ところで、私は、実はいま、Amazonで件の記事が載っている週刊朝日を頼んでいたところなのですが、まだ届きません。ところが、ネットでこの連載記事第一回を読めてしまいました。
で、ある意味、非常に困ったなあと思っているのですが、私にはこの記事が橋下市長の人権を侵害しているとは思えないんですね。
私がこの記事を読みたいと思ったのは、橋下市長がツイッターへの連続投稿でこう述べていたからです。
「朝日新聞はご存知の通り、君が代起立斉唱条例には反対、僕の組合に対する対応も問題視。まあこれは朝日新聞だけではないけど。僕を批判するのは権力チェックとして当然だけど、要するに普段、人権、人権と言っている人たちは、今回の記事が重大な人権違反だと言い切らなかった。」
「あれだけ君が代起立斉唱条例や組合問題について「人権違反だ!」と言っていた、朝日新聞や弁護士会、住田弁護士や大谷氏が、今回の週刊朝日の記事については「人権違反だ!」と言い切らなかったのは不思議でならない。権力に一言文句を言っておくというのが、自分の存在意義と感じているのかね。」
橋下氏がそういうものですから、君が代起立斉唱条例や、彼の職員組合に対する対応を『人権批判だ!!』と批判している私でも、今回は、「部落差別や人権侵害は許さない」ときっぱりけじめをつけて言い切りますよ、というところを見せようと、あえて普段は買わない雑誌を注文したのです。
私自身、何度も、橋下氏自身の責任ではない出自を問題にすべきではないと書いてきましたし。
ところが、今回の記事を読んでみると、これは橋下氏の人権を侵害していないばかりか、もちろん部落差別の意図が感じられるような記事ではなかったんですね。
問題なのは、佐野氏や編集長も認めている通り、橋下氏が一時住んでいたある地域に被差別部落があると書いた部分だけでしょう。それは橋下氏自身の人権を侵害する部分ではなくて、他の方に迷惑をかける部分です。それ以外にも編集長は複数問題があるといっていますが、私にはほかには見当たりませんでした。
しかし、今はネット上でもリアルでも、橋下氏自身の人権侵害されたという論調で塗りつぶされているのでしょう?しかも、当事者たちが早々と白旗を掲げて「ごめんなさい」しているのに、記事に人権侵害がないといまさら私がいうのも、リスクだけあって益がない間抜けな話です。
しかも、ここのところ維新の会の支持率が下がって、袂を分かったはずのみんなの党はおろか、政策がまるで噛み合わない新党大地にまで接触するような悪あがきをしていた橋下氏が、ここぞとばかりにこの事件を利用して、自分の力の淵源であるテレビでの露出度を上げています。
ここは、嵐が通り過ぎるのを待つように黙っているのが、賢い大人の作法なのでしょうが、もともと飛ぶ鳥を落とす勢いだった橋下維新の会にずっと批判してきたような損な性分ですから、まあ、仕方がないかなとあきらめて、私の正直な感想を書こうと思います。
さて、橋下氏は人権侵害されたとおっしゃるのですが、彼のどんな人権が侵害された可能性があるのでしょうか。
考えられるのはプライバシー権や名誉権です。
しかし、彼が被差別部落地域の生れであるとか、お父さんたちがどういう人だったかと言うことは、2011年の大阪ダブル選挙直前から様々なメディアで取り上げられ、もはや周知の事実ですから、プライバシー性はかなり低いでしょう。
また、そのこと自体を書かれても、今更、彼の名誉=社会的評価を下げるというものでもありません。
(なお、週刊文春なんかは酷い書きぶりだったようですが、新潮45+に掲載された「橋下徹 最も危険な政治家」は、とてもよい記事でした。この記事を書いた上原善広という作家は被差別部落であることをカミングアウトして、主に部落問題を題材にノンフィクションを書いている作家だそうで、大宅壮一賞も受賞しています)
橋下氏自身、お父さんたちのことは何十万人もいるフォロワーに向けて何度もツイートしていますし、週刊誌や月刊誌で一族のプライバシーが報道された直後に行った、知事辞任後初の街頭演説で1000人を超える聴衆の前で、こう叫んで報道されています。
「父親が正式な暴力団員だったって、週刊誌読んで初めて知ったんです。うわさでは暴力団“関係者”とは聞いてましたが…」「これはしょうがない。死んだ親父のことだから。しかし、今の権力構造を変えるには、坊ちゃんやお嬢ちゃんじゃできませんよ!!実の父が暴力団員?結構毛だらけだ!!実の父がガス自殺、結構毛だらけ!」
橋下徹氏は権力欲を満たすためには自身のお子さんまで利用する。「絶対的な権力は絶対的に腐敗する」
さて、他方、もともと、橋下氏は大阪府知事・市長であり、今や国政上の政党である日本維新の会代表ですから、公的存在であり、彼に対する表現の自由は最大限保障されるところです。プライバシー権や名誉権という基本的人権も他者の人権との調整原理である「公共の福祉」により制約を受けますので、許される表現行為であれば、人権侵害にはならないのです。
橋下氏自身、
「(前略)僕は、生まれてから今に至るまでを丸裸にされるのは仕方がないと思っている。」
「それが権力チェックだ。どのように育てられ、育ちどのような人格形成になったのか、分析・評論されても当然だろう。友人関係などへの取材で全て明らかにされても仕方がない。まあ真面目にやってきたわけではないから、それも含めて有権者に判断してもらわなければならない。」
とツイートしているのですが、ある人物の評伝を書くのに、その人が生まれた後だけではなく、何世代か前から説き起こすのは、ノンフィクションでは当たり前の手法です。たとえば、安倍晋三という人について書くのに、祖父の岸信介氏のことを書いたら血脈重視でけしからん、ということにはなりません。
「生まれてから今に至るまで」を書くとは、どんな家庭に育ったのかを書くことであり、どんな家庭かとは、どんなルーツを持つ親がどんな地域で育てたかということなのです。彼の親の前科のことだとか、被差別部落出身であることを書いても、それ自体は差別にはならないのです。
また、佐野眞一氏はソフトバンクの孫正義会長のことを「あんぽん」という作品で描くときに、当然、孫会長が在日出身で在日の方々の家で育ったことを書いたそうですが、だからといって、それが孫氏の人権侵害や在日差別になりますか?
アフリカ系アメリカ人は確かに未だにアメリカで強烈な差別を受けていると思いますが、じゃあ、ハワイ生まれのオバマ大統領のルーツがケニアにもあることからオバマ氏の評伝が説き起こされたからと言って、誰もそれを差別だとは言わないわけです。
可哀想なのは巻き込まれる橋下氏のお子さんたちで、橋下氏もかなり気にしておられるのですが、プライバシーや名誉の問題が改めて問題になるわけではありませんし、公人の家族が公人自身についての報道で影響を受けるのは本人たちも想定済みのことです。
現に、2010年7月の大阪府知事時代に、ガンバ大阪の遠藤選手を知事室に招き入れ、ご自身のお子さん3人にだけ会わせ、遠藤選手と一緒に記念写真に収まったり、サインをもらったりしたことを「サインがほしいほかの子供と比べて不公平では?」と批判されると
「知事になると、子供を自由に連れていけない。これぐらいは府民に理解してもらえる」
「その子供のお父さんに知事になってもらい、(制限を受ける)苦しい親子関係に耐えてもらうしかない」
などとおっしゃっているのですから、親子ともどもの制限は覚悟の上のはずで、良いとこどりはズルいでしょう。
むしろ、橋下市長には、おじいちゃんだの、その祖先だのが被差別部落出身でも、お子さんたちは胸を張って生きていける当たり前の世の中を作るように努力すると、政治家として宣言してほしいものです。
さらば橋下徹大阪府知事 知事辞職・大阪市長ダブル選挙出馬表明は政治生命終わりの始まり
こう考えてみると、今回の週刊朝日の記事について、多くの人が一線を越えた差別的表現だと考えた理由は、まさに、被差別部落であることは言わないでいれば隠せることだが、それが暴露されてしまうこと自体が差別を受けることにつながるという、被差別部落問題の強烈な差別性にあるのだと思います。
たとえば、アフリカ系であることはまさに今回問題になったキーワード「DNA」の問題であり、見た目で普通はわかりますから、そのこと自体は隠せない以上、隠すことでもないのです。
ところが、部落というのは単なる場所的要素であって、DNAの問題ではありません。江戸時代に幕府が民衆を支配するために、特定の職業の人などをそこに押し込め、貶めたという場所的関係に過ぎません。
そこで生まれた人が自動的に被差別部落出身という烙印を押されても、その人の持って生まれた資質とは何らかかわりのないものです。
また、名前や顔でわかるものではないし、そこで生まれても引っ越ししてしまえば分らないはずのことです。
にもかかわらず、もう何百年も差別し続け、され続けているわけですから、本当に根の深いひどい話だと思うのですが、とにかく部落差別に関しては隠し続けることで差別から免れることが多かったので、今回の事件で橋下氏のそのことを白日の下にさらす行為が、物凄い禁忌を犯したというように、一般市民には感じられたのではないでしょうか。
それが今回、橋下氏が朝日新聞グループを圧倒した理由だと思います。
今回の記事について、橋下氏は
「血脈主義は身分制度の根幹であり、悪い血脈というものを肯定するなら、優生思想、民族浄化思想にも繋がる極めて危険な思想だと僕は考えるが、朝日新聞はどうなのか。アメリカでの人種差別、ヨーロッパにおけるナチス思想に匹敵するくらいの危険な思想だと僕は考える。」
と書いていますが、今回の記事に、彼の親や祖父が部落出身だから、橋下氏の人格が悪いとか、能力がないとか、「悪い血脈」風なことを書いている部分は全くありません。橋下氏一流の誇張と言うか、はっきり言ってデマです。橋下氏を含めて、週刊朝日を批判している人も、記事の文章のどの部分が具体的に差別だ、人権侵害だなどと指摘することはできないでいます。
逆に、佐野氏はこの記事の意図をこう書いています。
「万が一、橋本が日本の政治を左右するような存在になったとすれば、一番問題にしなければならないのは、敵対者を絶対に認めないこの男の非寛容な人格であり、その厄介な性格の根にある橋下の本性である。そのためには、橋下徹の両親や、橋下家のルーツについて、できるだけ詳しく調べあげなければならない。」
このように、人物評伝としては、むしろ当たり前のことしか言っていないのです(ちなみに、橋下氏の「敵対者を絶対に認めないこの男の非寛容な人格」は、今回の事件で図らずも明らかになりました)。
またも、世間は橋下マジックにひっかかったというべきでしょう。
もっとも、週刊朝日の表紙には
「橋下徹のDNAをさかのぼり本性をあぶりだす」
とあり、目次の見出しには
「橋下徹本人も知らない本性をあぶりだすため、血脈をたどった!」
とありますが、DNAとか血脈というのは、部落出身の遺伝子のせいで悪い性格になったということを意味するのではなくて、生まれと育ちのことをたとえて表現したことはむしろ明らかだと思います。
もちろん、本文中にはそのような言葉は使っていません。見出しがこの程度にセンセーショナルなのは雑誌としては普通のことだと思います。「ハシシタ」という表現も被差別部落を暗示していますが、橋下氏の家はもともと「はしした」さんだったのを読み方を変更したのです。
たとえていえば、オバマ大統領に関して差別となるのは、「アフリカ系だから」大統領になる資格がない、「肌が黒いから」劣っている云々を言いだしたときです。橋下氏なら「部落出身の親から生まれたから遺伝で性格が悪くなった」と書いた時なのです。しかし、この記事はそんなことは書いていません。
さて、先に紹介したノンフィクション作家の上原氏はそのブログの中で
「まず佐野氏の連載は、えげつないことは確かですが、いまもっとも話題の政治家・橋下氏の記事としては許される範囲でしょう。心配される路地(同和)への偏見については、しっかりフォローすることも大事ですので、今後の佐野氏の書き方次第だと思います。しかし、こうして一般地区出身の作家が、路地について書くことは、とても重要な意味をもつ画期的なことです。」
「まず差別的にしろ、なんにしろ、ぼくは路地について書かれるのは全て良いことだと思っています。それがもし差別を助長させたとしても、やはり糾弾などで萎縮し、無意識化にもぐった差別意識をあぶりだすことにもなるからです。膿み出しみたいなものですね。それで表面に出たものを、批判していけば良いのです。大事なのは、影で噂されることではなく、表立って議論されることにあります。そうして初めて、同和問題というのは解決に向かいます。」
と書いておられますが、一般地区出身の私としても、これに同感です。
今回の事件は、もう一回いうと、被差別部落出身であるということがいかに隠さねばならない、日本における「秘め事」であるかを明らかにしました。
他方、部落問題に関する橋下氏の功績は、そういう隠さねばならないとされてきたことが明らかにされても、それを跳ね返して大阪ダブル選挙でも勝てることを証明し、あわよくば首相の地位も狙えるということを示したことでしょう。
また、今回の事件で、普段は人権侵害な書き込みばかりしているネットウヨクの人も含めて、部落差別は良くないんだと口々に叫んで確認できたのは素晴らしいことでした。
だからこと、橋下氏がまた部落問題をタブーにさせるような圧力をメディアにかけたこと、それに朝日新聞グループが屈したことは、日本の差別問題にとって本当に不幸なことだと思います。これからしばらくは、部落問題を語ることさえますます難しくなるでしょう。
私が今回の記事を天邪鬼にも書いたのは、やはり、差別の問題を見えなくすることは、差別をなくす方向ではなく助長する方向に働くと考えたからです。書くのに勇気が要りましたが、勇気がいること自体がおかしいのではないでしょうか。
さて、今回の記事としては余談ですが、一時支持率が下がったとはいえ、私の表現で言うと「政治の天才」橋下徹恐るべし、を改めて実感しました。上原氏は別の記事で
「橋下氏は、路地(同和)どころか、大変な困窮家庭から、想像を絶する苦労を強いられながら這い上がってきた男です。度胸もあり、頭もズバ抜けてかしこい。さらに仕事が早い。感性と理性の両方を兼ね備えたスーパースターです」
と表現されていますが、本当にその通りで、実に見事なもんだと感心しました。
去年、週刊朝日よりはるかに発行部数の多い週刊文春や週刊新潮がこぞって、橋下氏の「血脈」問題を取り上げたとき、橋下氏は今回のような過激な反応を示しませんでした。
その一つの理由は、これまで数々の名作を生み出してきた佐野眞一氏の追及がどのように展開するか、橋下氏でさえ恐れたということがあるでしょう。
そして根本的には、今回は、週刊「朝日」だったからこそ、親会社の朝日新聞を巻き込んで「質問を受けないぞ」と追いつめることができるからこそ、今回のような反応をしたのです。だって、橋下維新の会は目立って何ぼなんですから。週刊朝日の今回の記事は、支持率低下に苦しむ橋下維新の会にとって慈雨と見えたでしょう。
それにしても、橋下氏は、今回の記事について、僕も生身の人間ですというのですが、彼が人権侵害してきた相手もみな生身の人間です。おのれの欲せざることを人に施す、自分の痛みにしか気づかない人には政治家になってほしくないものです。
怨念の政治家 橋下徹大阪市長と安倍晋三元首相が日本を不幸にする
ああ、損な性格の私に愛の手をw
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週刊朝日の連載中止 橋下氏巡る不適切な記述で
河畠大四・週刊朝日編集長がコメントを出して連載中止を発表するとともに、改めて謝罪した。河畠編集長は18日の談話でおわびをし、週刊朝日の次号に「おわび」を掲載する考えを表明していた。
また、筆者の佐野氏は19日、「今回の記事は『週刊朝日』との共同作品であり、すべての対応は『週刊朝日』側に任せています。記事中で同和地区を特定したことなど、配慮を欠く部分があったことについては遺憾の意を表します」とのコメントを出した。
橋下市長は18日の記者会見で、週刊朝日の連載記事について「僕の人格を否定する根拠として、先祖や縁戚、DNAを挙げて過去を暴き出していくのは公人としても認められない」と批判していた。
■週刊朝日編集長 改めて深くおわび
《河畠大四・週刊朝日編集長の話》 第1回の連載記事中で同和地区などに関する不適切な記述が複数あり、このまま連載の継続はできないとの最終判断に至 りました。橋下徹・大阪市長をはじめとした関係者の皆様に、改めて深くおわび申し上げます。不適切な記述を掲載した全責任は当編集部にあり、再発防止に努 めます。本連載の中止で、読者の皆様にもご迷惑をおかけすることをおわびします。
■朝日新聞社、深刻に受け止め
《朝日新聞社広報部の話》 当社は、差別や偏見などの人権侵害をなくす報道姿勢を貫いています。当社から2008年に分社化した朝日新聞出版が編集・発 行する「週刊朝日」が今回、連載記事の同和地区などに関する不適切な記述で橋下徹・大阪市長をはじめ、多くの方々にご迷惑をおかけしたことを深刻に受け止めています。
朝日新聞 2012年10月19日23時12分
毎日新聞 2012年10月19日 20時49分(最終更新 10月19日 23時22分)
橋下徹大阪市長の出自に関する週刊朝日の連載を巡り、橋下氏が朝日新聞の取材を拒否している問題で、同 誌を発行する朝日新聞出版(東京都中央区)は19日、連載を中止すると発表した。朝日新聞出版は「同和地区などに関する不適切な記述が複数あったことを深 刻に受け止めた」とし、連載を1回目で打ち切る異例の対応をとった。親会社の朝日新聞社も同日、「深刻に受け止めている」とのコメントを発表した。
週刊朝日の 河畠大四編集長はコメントを発表し、「連載の継続はできないとの最終判断に至りました。橋下市長をはじめとした関係者の皆様に、改めて深くおわび申し上げ ます」と謝罪、「全責任は当編集部にあり、再発防止に努めます」などと釈明した。朝日新聞社広報部も「当社から08年に分社化した朝日新聞出版が編集・出 版する『週刊朝日』が今回、連載記事の同和地区などに関する不適切な記述で橋下市長をはじめ、多くの方々にご迷惑をおかけしたことを深刻に受け止めています」とコメントした。
記事を執筆したノンフィクション作家の佐野眞一氏は、朝日新聞出版を通じコメントを発表。「記事は『週刊朝日』との共同作品であり、すべての対応は『週刊朝日』側に任せています」と説明し、「記事中で同和地区を特定したことなど、配慮を欠く部分があったことについては遺憾の意を表します」とした。
記事は同誌が10月26日号で連載を始めた「ハシシタ 奴の本性」。橋下氏は、特定地域を「被差別部 落」と名指しし、橋下氏の人格否定につなげていると問題視。19日には、同誌が次回11月2日号に掲載する「おわび」の内容を見て、朝日新聞への取材拒否 を解除するかどうか判断する考えを示している。【津久井達】
朝日新聞出版が「おわび」 週刊朝日の橋下市長連載で
記事中で、同和地区を特定するような表現など、不適切な記述が複数ありました。橋下徹・大阪市長をはじめ、多くのみなさまにご不快な思いをさせ、ご迷惑 をおかけしたことを深くおわびします。私どもは差別を是認したり、助長したりする意図は毛頭ありませんが、不適切な記述をしたことについて、深刻に受け止 めています。弊誌の次号で「おわび」を掲載いたします。
橋下氏に関する連載、週刊朝日が打ち切り発表
朝日新聞出版(東京都中央区築地)は19日夜、「週刊朝日」10月26日号で始まった橋下徹大阪市長に関する連載記事「ハシシタ 奴(やつ)の本性」について、2回目以降の掲載を打ち切ると発表した。
次号で「おわび」を掲載する。
連載打ち切りの理由を巡り、河畠大四・週刊朝日編集長名で、「記事中で同和地区などに関する不適切な記述が複数あり、このまま連載の継続はできな いとの最終判断に至りました。橋下市長をはじめとした関係者の皆様に、改めて深くおわび申し上げます。不適切な記述を掲載した全責任は当編集部にあり、再 発防止に努めます。連載の中止で、読者の皆様にもご迷惑をおかけすることをおわびします」とのコメントを出した。
これに先立ち、橋下市長は19日、市役所で記者団に、「次号の掲載内容を見ていきたい」と述べ、次号の「おわび」を踏まえて対応を決める考えを示 した。社としての見解が出るまで取材に応じないとしている朝日新聞については、「週刊朝日次号のおわびが、実質的に朝日新聞社グループとしての見解と受け 止める」と語った。