これらに対し、mixiは「プライベートグラフ」であり、親しい友人が中心。平均40人ほどのつながりで、実名制(ニックネーム併用)、20~30代の女性が中心と位置づけた。このプライベートグラフもリアルグラフと同じような意味だ。ミクシィは言葉の定義についても熱心になり、時にライバルを「SNSではない」とした。
■ライバルへの対抗意識が自らの強みを消し去る
フェイスブックが普及し始めた数年前、実名で出身大学や所属企業も明らかになるリアルなサービスは、匿名性が高い日本では流行らないとされた。その点、mixiはハンドルネームなど匿名も使えるなど、ゆるやかなサービスが特徴といえた。
そのゆるやかなつながりが、いつのまにか現実の「人と人」というつながりへと運営側に定義されていった。コミュニティがあるにもかかわらず、フェイスブックの機能に似たmixiページも導入した。
足あと機能の廃止や訪問者数減少の騒動のなかで、ミクシィの幹部は「反対しているのはヘビーユーザーの一部」「現在の利用者はライトユーザーが中心で、ヘビーユーザーは使ってもらわなくてもいい人たちだ」と反論した。しかしフェイスブックへの過剰な対抗意識こそが、自らの強みを消し去ったといえるのではないだろうか。コミュニティ機能は、ビジネスライクなフェイスブックには存在しないユニークな機能であり、足あとは「いいね!」を代替していたともいえる。
mixiに残った「ヘビーユーザー」たちは、いまでもコミュニティを利用して意見を交わす。足あとが廃止になって1年が経過しているにもかかわらず、足あと復活を呼びかけるコミュニティもある。5月末にはあるユーザーグループが、意見交換会をミクシィ側に提案した。提案にかかわったユーザーの一人は「mixiの事情を鑑みつつ、ユーザーの思いも反映させたくて続けています。笠原社長の目指す、居心地の良いSNSを実現する力になりたいのです」と参加の動機を答えてくれた。
果たしてユーザーの思いは届くのか。笠原社長を始めとする運営側がソーシャルメディアに登場することはまれだ。ユーザーへのメッセージは、会社の広報かマスメディアを通じたものが中心となり、SNS会社の幹部がSNSを利用しないという状況になっている。これはフェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏が自らの結婚式の写真までもフェイスブックで公開した姿勢とは、対照的とさえいえるのではないか。
藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。学習院大学非常勤講師。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。
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