社説:少年事件 もっと弁護士の関与を

毎日新聞 2012年10月19日 02時32分

 法相が少年法見直しを法制審議会に諮問した。

 要綱によると、家庭裁判所送致後に少年審判を受ける加害少年が、国費で弁護士を付けられる「国選付添人制度」の対象事件を拡大する。

 現在は殺人や強盗など重大事件に限られている。法改正により、捜査段階から国費で弁護士を依頼できる「被疑者国選弁護制度」の適用範囲と同じに見直す方向だ。例えば、窃盗や傷害、詐欺などが対象になる。

 現在、国選付添人の選任は、少年鑑別所に収容された少年の3・7%(昨年)に過ぎない。私費で選任する少年を含めても付添人選任率は約6割にとどまる。刑事裁判を受ける成人の弁護人選任率はほぼ100%で、大きな差がある。

 少年の更生を前提に保護処分を決める少年審判と刑事裁判では目的や役割は異なる。そうだとしても、犯罪(非行)の有無を含めて審理する点は同じだ。法律のプロが関与し、少年の立場から家庭裁判所に考え方や意見を伝える役割は重要だ。

 付添人の仕事は少年審判での援助にとどまらない。非行に走る少年は、親子関係が崩壊しているケースも少なくない。親子の間に入って和解のきっかけを探ったり、退学の危険がある場合は、学校と掛け合ったりもする。仕事や家探しにも奔走し、被害者との対応にも当たる。

 非行少年の環境調整は本来家裁の役割だが、手の届かないところを付添人が担っているのだ。

 未熟な少年の場合、大人の言いなりになりやすい点も見逃せない。

 04年に発生した大阪地裁所長襲撃事件で、最終的に刑事裁判の「無罪」に当たる不処分が確定した当時14歳の少年の決定で、最高裁の裁判官は「少年事件では、捜査機関に迎合して比較的安易に自白する危険性が高い」と指摘した。

 冤罪(えんざい)を生まぬためにも、資力のない少年が国選で付添人を付けられる制度の拡大は必要だ。

 一方、要綱には、検察官が少年審判に出席できる「検察官関与制度」を「国選付添人制度」と同じ範囲に適用を拡大することや、法定刑の5年引き上げが盛り込まれた。

 法定刑引き上げは、厳罰化にかじを切ることを意味する。背景には、犯罪被害者の要望や、裁判員裁判で「量刑が成人に比べて低すぎる」という声が上がったことが挙げられる。もちろん、そういった声に耳を傾けることは大切だ。

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