見ようと思っていた新作アニメは大体見ているのでそろそろ一言感想記事でも書きはじめようかと思っていたら、またぞろ「作画崩壊」が取り沙汰されているらしい。どうやら、『ハヤテのごとく! CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU』のキャラデザに違和感を覚える人々が、今週放映された3話の俺の嫁ヒナギクを指して「作画がひどい」と騒いでいるようなのだ。
ハヤテのごとく! CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU 3話感想まとめ。ヒナギクの雰囲気がなんか違うw|オタク.com
『新世界より』3話のアバンを担当したアニメーター・新井淳氏が、昨夜からtwitterで作画崩壊関連ツイートを怒涛のごとくリツイートしているので、いくつか引用してみよう。
最後の人は「原作レイプ」と言っているが、原作者の畑健二郎先生自らシリーズ構成を務めていることをご存知なのだろうか……いや、それはさておき、リンク先をご覧になればわかるように、たいへん丁寧に描かれている。頭でっかちなキャラデザも、むしろ1期・2期より原作に忠実だとぼくは思うのだが、如何。
これらのツイートから、現今の「作画崩壊」ムーヴメントの興りとその正体について推察してみた。
上述した「『アキハバラ電脳組』のリテイクチェック情報」は、98年ごろに公開された非常に古いウェブページである。98年といえばぼくが大学に入学し、アニメ研に入った年だが、そのときの新歓会報にはビデオキャプチャ入門が掲載されていた。つまり、録画したアニメをパソコンに取り込んでしまうわけだ。当時のキャプチャ環境は非常に値が張るものだったが、パソコンとインターネット、および高速回線の普及とともに、そういった環境がアニメファンの間にひろまりつつあった時期であったことは間違いない(おそらくはパソコン通信時代から行われていたことだろう)。そういえば、99年に放映された『鋼鉄天使くるみ』のOPアニメ動画を大学の研究室のパソコン経由で入手し、20数枚のフロッピーディスクに分割して持ち帰った先輩なんてのもいたっけ。
そうやって、キャプチャされた画像はネット上のさまざまなサイトにアップロードされる。ここでパラダイムシフトが起こる。一連の場面や、連続したモーションを構成する要素にすぎなかった原画・動画が、それ自体で完結している一枚絵=静止画として認識されるようになったのだ(もちろん、それ以前からアニメ雑誌には場面カットが掲載されていた。ここでポイントなのは、受け手が自らの手で切り出せるようになったことだ。そういう意味では、セル画収集の延長上にあると言えるかもしれない)。このころ、美少女ゲーム市場が拡大し、いわゆる「静止画MAD」が多数作られてはネット上に拡散していったこととも、おそらく無関係ではないだろう。そして、もはや原画・動画の区別が喪われ、単なる静止画と化したキャプチャ画像を並べたアニメ感想サイト、のちには感想ブログ、ひいては2ちゃんねるまとめブログが乱立していく。そのなかで、以前はそれほど意識されていなかった原画・動画の乱れや表現手法としてのデフォルメなどが過剰に意識されるようになり、「作画崩壊」として非難されるに至った――というのが、ぼくの推論である。また、それらの動きと歩調を合わせるようにして、ビデオソフト化を前提としたテレビアニメのハイクオリティ化・パッケージコンテンツ化が進み、総作画監督を立てて絵柄の統一を図るようになっていったのは、5年半前の記事でも述べたとおりだ。
以下余談。絵柄の統一性の高さで定評がある京都アニメーションでも、実はかなりアニメーターごとの個性が出ている。『涼宮ハルヒの憂鬱』1期(6年半前!)は各話数でかなりバラつきがあり、特に堀口悠紀子の丸っこい作画は異彩を放っていた。その後、京アニ作品では彼女の画風が主流となっていくが、その中でもやはり独特の画風を持っていた山田尚子は若くして『けいおん!』を監督し、高雄統子はフリーランスとして『THE iDOLM@STER』で辣腕を振るうこととなる(彼女たちのオリジナリティの高い作風は、『オフィシャルファンブック らき☆すたこなたの方程式 』収録の版権イラストに顕著である)。
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