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5年半ぶりに、作画崩壊の話。
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 見ようと思っていた新作アニメは大体見ているのでそろそろ一言感想記事でも書きはじめようかと思っていたら、またぞろ「作画崩壊」が取り沙汰されているらしい。どうやら、『ハヤテのごとく! CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU』のキャラデザに違和感を覚える人々が、今週放映された3話の俺の嫁ヒナギクを指して「作画がひどい」と騒いでいるようなのだ。
ハヤテのごとく! CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU 3話感想まとめ。ヒナギクの雰囲気がなんか違うw|オタク.com
『新世界より』3話のアバンを担当したアニメーター・新井淳氏が、昨夜からtwitterで作画崩壊関連ツイートを怒涛のごとくリツイートしているので、いくつか引用してみよう。


ハヤテの作画崩壊クッソワロタwww
@left_side_love
ダメロッター@回る鈴木


アニメ「ハヤテのごとく!」 桂ヒナギク、1~3期の比較画像 http://t.co/02rMhYdw 作画崩壊している
@kagaku39
化学反応?


ハヤテの作画崩壊ひどすぎだろうがよぉ!!!!!!!!!さすがにもう見てらんねえよ!!!!!!!!!!!
@tainaka_yohei
よーへい@ゲロ犬


ハヤテのごとく! Can`t Take My Eyes Off Youのヒナギクなんか嫌だー作画崩壊している気が・・・ ヒナギク好きからしたら許せない絵だ。
@momiji415
もみ爺


ハヤテ見てきたヒナギクの作画崩壊してるじゃねーかよなんだあれ
@altema_0289
あるてま


ハヤテのごとく! CAN’T TAKE MY EYES OFF YOU 3話感想まとめ。ヒナギクの雰囲気がなんか違うw http://t.co/QIK6RadC もうこれは切るわ・・・。原作レイプにキャラデザ、作画崩壊ってJC製作といわれても違和感感じないぐらい酷い出来。
@shoguuuun811
しょーぐん

 最後の人は「原作レイプ」と言っているが、原作者の畑健二郎先生自らシリーズ構成を務めていることをご存知なのだろうか……いや、それはさておき、リンク先をご覧になればわかるように、たいへん丁寧に描かれている。頭でっかちなキャラデザも、むしろ1期・2期より原作に忠実だとぼくは思うのだが、如何。


 さて、「作画崩壊」なる語に対するぼくのスタンスは、5年半ほど前に書いた作画崩壊という言葉を使う資格(思えば、この記事を書いたころからはてなで注目されはじめたのだった)という記事、およびその参照先である夏葉薫のブログ記事からそう大きく変わってはいない。作画に違和感を覚えるときにはいくつかの要因が考えられる。たとえば、シリーズを通しての総作画監督を立てておらず、各回の作画監督ごとの絵柄の違いをある程度許容している場合(90年代以前のほとんどの作品や、ガイナックス・サテライト作品など)。また、独特だが上手い原画を、作画監督が敢えて修正せずに通した場合(岸田隆宏などはこのタイプの作画監督。また、そうした原画をぼくは個人的に『KY作画』と呼んでいる。例:大平晋也)。あるいは、演出上の意図でデザインごと変えている場合(『創聖のアクエリオン』うつのみや理回や、先述した『新世界より』1話の山下清悟パート・3話の新井淳パート)、などなど。そうした、単なる「方針」を作画崩壊と呼ぶのは筋違いというものだ。
 外注したスタジオからマトモな原画・動画が上がってこず、スケジュールも逼迫しているため修正も出来ないまま放映してしまった……というのが、まあ作画崩壊と呼んで差し支えないものだろう。かの有名な『ロスト・ユニバース』第4話はまさにそれ。また、同時期の『アキハバラ電脳組』も、ひどい回は本当にひどかった(参照:『アキハバラ電脳組』のリテイクチェック情報)。桜井弘明演出回や、最終回付近は本当に良かったんだけどね。そして、やはり同じころに放映されていた『Weiß kreuz』に至っては、クオリティがあまりに低いためにテレビ局から納品拒否された回もあるとか、無いとか……。当時に比べれば、今のテレビアニメは本当に絵が綺麗だよ。
 さて。新井さんがリツイートしていたつぶやきのなかに、こんなものがあった。


作画監督によってキャラデザと顔のパーツのバランスが違うのは作画崩壊とは言わないだろ・・・やたらと崩壊崩壊言いたがる層はアニメをキャラの顔でしか見てないんじゃ
@tsugumi72
東鳥つぐみ(伊藤)


多分元々作画崩壊って「原画の意図を汲めず、中割が出来ていない一連の動き」の事を指してたんだと思う。けど、今のまとめとか見ると動きの流れとか意図とか関係なく、ただ一枚画面の中の絵を取り出して「この絵が作画崩壊だ」ってな感じで、アニメーションとして見てないように感じる。
@tobirafue
扉「藤脆弱すぎる」

 これらのツイートから、現今の「作画崩壊」ムーヴメントの興りとその正体について推察してみた。
 上述した「『アキハバラ電脳組』のリテイクチェック情報」は、98年ごろに公開された非常に古いウェブページである。98年といえばぼくが大学に入学し、アニメ研に入った年だが、そのときの新歓会報にはビデオキャプチャ入門が掲載されていた。つまり、録画したアニメをパソコンに取り込んでしまうわけだ。当時のキャプチャ環境は非常に値が張るものだったが、パソコンとインターネット、および高速回線の普及とともに、そういった環境がアニメファンの間にひろまりつつあった時期であったことは間違いない(おそらくはパソコン通信時代から行われていたことだろう)。そういえば、99年に放映された『鋼鉄天使くるみ』のOPアニメ動画を大学の研究室のパソコン経由で入手し、20数枚のフロッピーディスクに分割して持ち帰った先輩なんてのもいたっけ。
 そうやって、キャプチャされた画像はネット上のさまざまなサイトにアップロードされる。ここでパラダイムシフトが起こる。一連の場面や、連続したモーションを構成する要素にすぎなかった原画・動画が、それ自体で完結している一枚絵=静止画として認識されるようになったのだ(もちろん、それ以前からアニメ雑誌には場面カットが掲載されていた。ここでポイントなのは、受け手が自らの手で切り出せるようになったことだ。そういう意味では、セル画収集の延長上にあると言えるかもしれない)。このころ、美少女ゲーム市場が拡大し、いわゆる「静止画MAD」が多数作られてはネット上に拡散していったこととも、おそらく無関係ではないだろう。そして、もはや原画・動画の区別が喪われ、単なる静止画と化したキャプチャ画像を並べたアニメ感想サイト、のちには感想ブログ、ひいては2ちゃんねるまとめブログが乱立していく。そのなかで、以前はそれほど意識されていなかった原画・動画の乱れや表現手法としてのデフォルメなどが過剰に意識されるようになり、「作画崩壊」として非難されるに至った――というのが、ぼくの推論である。また、それらの動きと歩調を合わせるようにして、ビデオソフト化を前提としたテレビアニメのハイクオリティ化・パッケージコンテンツ化が進み、総作画監督を立てて絵柄の統一を図るようになっていったのは、5年半前の記事でも述べたとおりだ。

 以下余談。絵柄の統一性の高さで定評がある京都アニメーションでも、実はかなりアニメーターごとの個性が出ている。『涼宮ハルヒの憂鬱』1期(6年半前!)は各話数でかなりバラつきがあり、特に堀口悠紀子の丸っこい作画は異彩を放っていた。その後、京アニ作品では彼女の画風が主流となっていくが、その中でもやはり独特の画風を持っていた山田尚子は若くして『けいおん!』を監督し、高雄統子はフリーランスとして『THE iDOLM@STER』で辣腕を振るうこととなる(彼女たちのオリジナリティの高い作風は、『オフィシャルファンブック らき☆すたこなたの方程式 』収録の版権イラストに顕著である)。

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