(2012年10月18日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ソフトバンクの孫正義社長が今週初め、東京でスプリント・ネクステル買収の理由を1時間以上にわたり投資家に説明し、多くの投資家はすぐに要点を把握できた。
ソフトバンクは新規株式や転換社債を発行して発行済み株式を希薄化する方法を選ばなかった。むしろ201億ドル(約1兆5700億円)の買収資金に7640億円にのぼる現金準備の大半を充当する。
日本株式会社は通常、そのようなことはしない。任天堂からキヤノンに至るまで、そしてソニーからスズキまで日本企業はひたすら現金をためたがる。東証株価指数(TOPIX)の非金融部門企業の約半数が現在、借金よりも多くの現金を保有している。その額は6910億ドルに上り、アジアで7、8番目に大きい台湾とタイの経済規模に匹敵する。
これらは預金や低利回り証券への投資でほとんど何の利益もあげない。日本の総株主資本利益率が世界のほかの多くの国より低いのはそのせいだ。
アナリストたちは、デフレが何年も続き預金の実質価値が上がっているのだから、現金を保有したいという気持ちは理解できると指摘する。
だが、ソフトバンクによるスプリント買収は日本にとってこれまでで最大の外国企業買収案件である。日本企業が遊休状態にある現金を機能させ始めるという変化がそこに示されているとしたら、多くの人に歓迎されるだろう。
これまでも一定の前進はみられた。上場企業の配当金支払総額は、活動的な株主が増配を求め始めた2003年以降、徐々に増えてきた。野村証券によると、目標配当性向を発表している上場企業は05年以降倍増し、37%になった。
だが、まだまだ不十分だとアナリストたちは言う。TOPIXの非金融企業の総資産に対する現金の割合は平均12.5%。米国の9%、欧州の7%に比べかなり高い。
ゴールドマン・サックス証券の日本担当ストラテジスト、キャシー・松井氏は株主への配当がとにかく少ないと指摘する。成熟した日本市場で配当利回りがほかのアジア諸国に比べて約3分の1低いことは「わけがわからない」という。
By Ben McLannahan
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