政治は政治家だけがするのではない!「復興予算の流用問題」をスクープしたフリーランス記者・福場ひとみ氏はどうやって「泥棒シロアリ役人の悪行」を見抜いたか

2012年10月19日(金) 長谷川 幸洋
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「この特別会計を調べれば、なにか出てくるのではないか」

---はじめまして。いま復興予算の流用問題が大変な話題になってますが、これは福場さんのスクープです。取材のきっかけはなんだったのですか?

 もともと4月ごろから復興予算の問題を追いかけていて、最初はポストの4月13日号に「地元支援の予算を全部奪った天下り法人の暴挙~ついにシロアリ官僚が『復興予算』を食い始めた」という記事を書いたのがきっかけです。そこでは、復興を大義名分にしたクリーニング業者への補助金の背後に、厚生労働省の天下り利権構図があるという話を書きました。

 その後、7月初めに「復興予算には6兆円も余ったカネがある」という話が新聞で報じられ、復興特別会計もあると分かって「この特別会計を調べれば、なにか出てくるのではないか」と思って調べ始めました。シロアリ官僚記事を書いたときのカンが働いたんですね。

---なるほど。どうやって調べたのですか?

 グーグルで「復興」「予算」とか検索しているうちに「各目明細書」というのがヒットした。そしたら、ほんとにびっくりしたんですけど、予算支出がどれもこれも復興とは関係ないように見えた。「これはほんとなのか」という思いでしたね。

 その各目明細書とは「東日本大震災復興特別会計歳出暫定予算予定額各目明細書」である。関心のある読者はぜひクリックして現物を見ていただきたいが、たしかに職員旅費から電気、ガス、水道料に至るまで各省庁の経費が千円単位でぜんぶ出てくる。一目見ただけで「これが復興とどう関係あるのか」と疑問がわく代物だ。より詳しいのはこちらだ。

 

「国会議員なんて、だれも読んでない」

---それでどうしたのですか?

 私はかつてシンクタンクの「構想日本」で働いた経験があり、特別会計のことは少し知っていました。それで知人の桜内文城参院議員(現・日本維新の会。当時はみんなの党)に連絡して「この予算の使途は本当に正しいのでしょうか」と半信半疑で聞いてみました。すると、桜内さんはすでに各目明細書を知っていて「あのとおりだよ。国会議員なんて、だれも読んでないんだから」と言われた。それで記事にしようかと思って、本格的に取材を始めたんです。

---国会議員への取材は桜内さんだけですか?

 記事でも書きましたが、あと自民党の小野寺五典衆院議員(宮城6区選出)とか。桜内さんは3月に国会で質問してるんですよ。

 えっ、と思って、国会の議事録を調べてみると、たしかに桜内は3月27日の参院東日本大震災復興特別委員会で質問している。桜内は元大蔵官僚であり、なかでも特別会計問題に詳しい。桜内は復興予算で離党振興費や沖縄教育振興事業費などが計上されている点を指摘し「そもそも復興特別会計で扱うようなものなのか」と平野達男復興相らを追及していた。「非常に違和感のある予算になってしまったんじゃないか」と言っている。

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