9月29日土曜日、その特急は、シュトゥットガルトを発車した途端に異常な揺れ方をし、突然、パタリと止まった。顔を見合わせる乗客。誰かが冗談で、「脱線!」と言った。20分も経ったころ、ようやく放送があった。車掌は当たり前のように言った。
「乗客の皆さん、私たちの列車は脱線しました」
こういう時のドイツ人の態度は特徴的だ。たとえショックを受けていても、顔色を変えることなく、「素晴らしい!」とか、「そう、それで?」というような皮肉なコメントを発する。この時もそうだった。
ドイツ鉄道で情報が流れないのは毎度のこと
なぜ私がその光景を見たように語るのかというと、このハンブルク行の長距離列車に長女が乗り合わせていたからだ。駅を出て200mのところで後ろの3両が脱線した。列車が走っている最中にポイントを切り替えたのだとか。長女は後ろから5両目に乗っており、消防隊が救出にくるまでの1時間半、他のすべての乗客とともに列車内に閉じ込められた。
そのあと、乗客は消防隊員に守られながら線路を歩いて駅に戻ったが、そこには一切何の情報もなかった。日本なら、係員がずらりと並んで、振り替え輸送や切符の払い戻しの手配をしているはずだ。シュトゥットガルトからハンブルクまでは特急でも6時間かかる。
「駅員は何を聞いてもわからないって言うばかりだったのよ」と娘。しかも、その2時間の間、「申し訳ありません」という言葉は一度も発せられなかったという。
結局、「皆さんご自由に」とでも言わんばかりに、本当にそこで解散。娘はハンブルクまで行くわけではなかったので、一旦家に戻って車で出かけたが、大きなスーツケースを抱えて漂流してしまった乗客は、さぞかし困ったことだろうと思う。
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