2012-10-18
私のすぐ隣でいま起こっていること
昨日聞いてきた話があまりに悲しい内容だったので、ここに書きます。
皆さんは「仮放免者」という言葉を聞いたことはありますか。わたしは恥ずかしながら最近までしりませんでした。
日本で暮らして日本国籍を持たない人、一口に「外国人」と言っても行政によっていろいろな扱われ方をされています。
永住権を持つ人。
難民。
そのいずれにも《認められない》人。
いずれでもない人について日本のお役所である入国管理局は三つの対応をとることが出来ます。
1.ビザを出す。
3.仮放免者とする。
これまで日本政府はビザのない「不法入国」については、2の強制送還をとってきました。その方法とは、捕えられた「不法」入国者を縛り付けいわゆる簀巻きにした状態で飛行機に乗せるという危険なもので、多くの方が命を落としたそうです。さすがに航空会社も死を招くと敬遠し本人の同意を得ない搭乗は受け付けなくなり、また国際的にも人道上問題視されたために強制送還は減っているといいます。これを聞いた時に真っ先に浮かんだのは、貨物列車でアウシュビッツに運ばれて行くユダヤ人の話でした。
日本に来て生活をしている、しかしながら何らかの理由でビザが失効してしまった外国人たちは「仮放免」という形で日本に生きています。もちろんビザがないので公式には就労が認められていません。今年七月に変更された外国人登録制度のために住民登録もできずあらゆる行政サービスからも締め出されてしまいました。
昨日会ったのはそういう「仮放免」者を支援している人でした。
でも、「不法滞在」ってやっぱり悪いことなんじゃないの?って最初はそう思うかもしれない。
昨日聞いた話はこうです。
私が住んでる街の隣の隣の街に、スリランカ人男性が住んでいます。
彼はスリランカで結婚し一歳になる子どもがいました。子どもを育てるには現金がいる上、奥さんは子どもがまだ小さく手が離せないため生活は彼一人の肩にかかっています。でもスリランカに仕事はなかなかありません。困窮する彼にある日本人ブローカーが日本での仕事を持ちかけます。
「日本で日給6000円+食費2000円/日の仕事がある。三年働けば仕事のスキルも身につきスリランカでは十分な額の貯金もできる。大使館でのビザ発行などの手続きのために130万円の手数料で斡旋しよう。」
かくして日本人ブローカーは在スリランカ日本大使館で手続きをし、就労ビザは発行され、その時の内容は、日本人ブローカーの下で「鮮魚の加工及び流通販売を学ぶため」となっていました。綿密な研修スケジュールが立てられ、スリランカ人男性も安心したそうです。ただ一点、発行されたビザが三年ではなく三ヶ月だったことだけが引っかかりましたが、延長手続きは日本ですると言いくるめられてそのまま日本へ渡航してきました。
成田についた翌日、静岡方面へ電車でゆられて「仕事場」として連れてこられた場所には魚を加工する施設はなく、屋根すらなく荒地にガラクタが山と積まれた産廃処分場でした。
日本人ブローカーはそこでリサイクル会社のA社長に男性を引き渡したすとすぐに消えてしまったといいます。そこではじめてブローカーとA社長がグルで騙されたのだと男性は悟りました。
そのリサイクル会社では同様に騙されて連れてこられたスリランカ人がすでに数人いました。吹きっさらしの屋外で、廃材を解体する機材もなくほぼ素手で古い電化製品などを金属やプラスチックにわける作業を一日中、時には夜9時10時までかかってさせられ、寮として与えられた部屋は暖房もガスも通っていなかったそうです。
そして何より、A社長は男性に一日2000円しか渡しませんでした。
日給2000円では国に送金できるわけもなく、右も左もわからない外国で不正を糾すすべもなく、あっという間にビザの期限である三ヶ月は経ちA社長はビザの更新手続きもしません。男性は不法滞在として入国管理局に収監されてしまいました。
しかし、彼には国に残した妻子がいて、日本に渡航するために作った借金があります。男性がスリランカの家族に送金できず返済が滞っているために、借金取りが家にきて奥さんを脅したり家に火をつけたり大変危険な目にあっていることも差し迫った問題です。
浜松にきて、以前仕事で出会った人に「外国人もたくさん見るけど、彼らの環境を知るといかに日本人が騙して酷いことをしているかを知ってしまうからなるべくなら関わりたくないんだ」とこぼされたことがありました。
正直、その時の想像した以上のことが行われていたというのが私の感想です。
男性は労働基準監督署に相談にいきました。入国管理局にもありのままの話をしました。でも、法はいまのところ彼の権利ために運用されてはいません。A社長から未払い賃金を取り返すこともできず、今は仮放免者として賃金を稼ぐこともできず、社会保険も生活保護も受けられません。
彼に唯一できるのは日本人ブローカーの詐欺を法廷で立証すること。
これが私の住む街のすぐ隣でいま起こっていることです。