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【社会】

音源は放射線 「原子ギター」展示 水戸芸術館

2012年10月19日 11時41分

原子ギターを制作した山川さん。手前の皿に盛られた土に含まれる放射性物質を黄色いガイガーカウンターが感知すると、ギター裏の黒い装置が振動する=茨城県水戸市で

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 目に見えない放射線をとらえて「反原発」の音を響かせる−。そんな創作楽器「原子ギター」が茨城県水戸市の水戸芸術館に展示されて話題を集めている。制作したのは横浜市のアーティスト山川冬樹さん(38)。反原発を訴える一方で、電気がなければ音楽活動できない自身の「矛盾」を表現したという。東京電力が福島第一原発事故でまき散らした放射性物質によって音を鳴らすという皮肉あふれるギターが、被災地に悲しげな音色を響かせている。(永山陽平)

 山川さんはアーティストとして音楽活動を続けながら、東京芸術大の取手キャンパス(取手市)で講師として映像制作を教えている。原発事故の発生後、県内で空間放射線量がとりわけ高い取手市に横浜市から通っているうちに「このまま原発を続けてはいけない」と考え始めた。

 反原発の思いを強くする一方で「電気がなければ音楽活動できない。この矛盾をどうしたらいいのか」と自問。その解決策として、原発事故で拡散した放射性物質をもとに音を鳴らす原子ギターの制作を考え付いた。

 原子ギターは市販されているエレクトリックギターにアナログのガイガーカウンターなどを組み合わせた。放射性物質を含んだ土をガイガーカウンターにかざすと微細な音が発生。その音をギターの裏側に取り付けた特殊な装置によって振動に変えることで、六本の弦も震えてかすかな音を発する。それをギターアンプで増幅させている。

 ギターは二本あり、いずれも赤色で放射能標識が描かれている。もの悲しい短調系の和音が響くよう調弦してあり、放射線量が高いほど激しく鳴る。微量の放射線でもとらえられるため、水戸芸術館の展示では近くの側溝から採取した除染基準値以下の土を用いて音を響かせている。

 山川さんは「電気を使って音楽活動を続けたい自分のジレンマや矛盾を体現している。このギターによって反原発のメッセージが伝われば」と話す。

 原子ギターは水戸芸術館で開催中の展覧会「3・11とアーティスト−進行形の記録」で展示されている。十二月九日まで。月曜休館。

(東京新聞)

 

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