朝のテレビ視聴習慣を変えた
テレビが生み出す
生活のリズム

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『おしん』最高の視聴率62.9%

連続テレビ小説は、'75年4月の『水色の時』からは半年のシリーズになったが、テレビ放送開始30年にあたる'83年に放送された『おしん』は、8年ぶりの1年連続ものであった。『おしん』は、大根めしさえ満足に食べられない貧しい東北の小作の娘の一代記だ。「放送時間帯は水道の使用量が激減した」といわれたほどで、『おしん』の1年間の平均視聴率は52.6%、最高視聴率は62.9%というテレビドラマ史上空前絶後の記録を残した。

原作・脚本は橋田壽賀子で、『おしん』を執筆することになったのは、放送の5年前に届いた明治生まれの女性からの1通の投書がきっかけだったという。「それはご自分の一生を振り返られたもので、明治の人はこんなに苦労したのかとびっくりしたのです。私は、私の母の世代への鎮魂歌として書き残すのが、私たち娘の世代の義務ではないかと思って書かせていただきました。」(『20世紀放送史』)

『おしん』は高度成長期の繁栄する風景の底にある過去の記憶を一気によみがえらせた。それはテレビ番組が時代や人々と共鳴し、呼吸したとさえいえる盛り上がりであった。

朝ドラは親しみと共感を生み出す物語

連続テレビ小説は次々に魅力ある女性像を送りだした。女性パイロットなど自立して生きる女性像を発掘し、主人公も編集者、新聞記者、弁護士、気象予報士など多彩になった。数は少ないが男性が主人公の作品も試みた。

連続テレビ小説の舞台は、全国に広がっている。毎日、テレビで見る撮影地は時には、観光地になったり、村興しのブームになったりもする。それは連続テレビ小説が、テレビ画面の中に親戚や知り合いが居るような親しみ、共感を共有しようとしているからだ。

新人女優が魅力ある女性像に挑戦

新人女優が魅力ある女性像に挑戦
朝の連続テレビ小説は主演女優には新人が起用されることが多かった。明るくて庶民的な親しみやすさが共通のキャラクターだ。
'76年『雲のじゅうたん』(パイロット)(上)
'01年『ちゅらさん』(看護師)(中)
'07年『どんど晴れ』(しにせの女将)(下)

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