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政治
【主張】党首会談 首相は年内解散を伝えよ 残る課題は集団的自衛権だ
野田佳彦首相がその真価を問われる決定的な時を迎えた。
首相が19日の自民、公明両党との党首会談の席上、語るべきは「近いうちに信を問う」と8月に述べた約束の具現化だ。すなわち、年内解散の意向を明示的に伝えることである。
このことを表明できない限り、赤字国債発行に必要な特例公債法案の成立などに欠かせない自公両党の協力は取り付けられない。
首相が忘れてならないのは、政治生命を懸けて取り組んだ消費税関連法の成立が、3党協力の枠組みで図られ、「近いうち」は国民との約束になったことだ。
≪3党で「決める政治」を≫
今月上旬の産経新聞社とFNNの世論調査でも、「近いうち」の時期について「年内に限られるべきだと思う」との回答が68%に上っている。
この国民との約束を果たさない限り、政治空白は続き、行き詰まった日本は没落の一途をたどることになる。覚悟と勇気をもって決断してほしい。
懸念するのは、首相が増税法成立後に新たな政治課題を示していないことだ。燃え尽きたわけではないだろう。
提案したいのは、首相の持論でもある集団的自衛権の行使容認という、自民党政権もなし得なかったテーマに挑むことだ。
尖閣諸島への中国の攻勢を考えれば、日米共同防衛の重要性はより増している。同盟深化に資する行使容認こそ、「決める」政治のテーマにふさわしい。
「権利は保有しているが行使できない」という集団的自衛権をめぐる政府の憲法解釈について、首相は「これを踏み越えることができるかどうかが一番の肝」と自著「民主の敵」で主張した。
政府の国家戦略会議の「フロンティア分科会」も今年7月に行使容認の必要性を提起する報告書を出した。首相は「提言も踏まえながら政府内での議論も詰めていきたい」と答弁したこともある。
自民党の安倍晋三総裁も行使容認を唱え、米国を狙った弾道ミサイルの迎撃など行使すべき具体例も挙げている。臨時国会が開かれ、首相と安倍氏が活発な議論を行うことを期待したい。
集団的自衛権の行使容認という新たな課題を掲げ、憲法解釈の変更に踏み込んでその妥当性を総選挙で問うことができれば、極めて大きな意味がある。
景気後退の懸念が高まる中で、野田首相は経済対策を11月中に取りまとめるよう17日に関係閣僚に指示した。
経済対策を通じて景気の下振れを防ぐのは当然だが、その手法には首をかしげざるを得ない。
今年度予算の予備費と剰余金を活用し、補正予算は編成しないことを前提としているためだ。これでどれだけの景気浮揚効果が見込めるのか。
≪景気回復は補正予算で≫
景気をきちんと支えるには、まず今年度予算の執行を着実に進める必要があり、特例公債法案の早期成立が不可欠だ。党首会談では、経済対策を見据えた協力関係を構築するしか方策がない。
来秋には消費税増税の是非を景気動向を踏まえて判断しなければならない。そのためには本格的な補正予算を編成して景気が落ち込む前に果断な手を打つべきだ。
「一票の格差」をめぐり、平成22年の参院選を「違憲状態」とした17日の最高裁判決によって、衆院の「0増5減」と参院の「4増4減」の格差是正を実現する緊急性はより高まっている。3党合意を再構築するしかあるまい。
社会保障・税一体改革の3党合意に基づき、民主、公明両党は社会保障制度改革国民会議の早期設置を主張している。
これに対し、総選挙後の設置を唱えてきた自民党は、民主、公明両党に同調するかどうか対応を決めなければならない。
18日の幹事長会談では、自公両党が「年内解散」を首相が明言するよう求めたのに対し、民主党の輿石東幹事長は「党首会談で首相からもう少し具体的な提案があるのではないか」と語った。
自公両党には、解散時期が確約されないなら党首会談を拒否するという選択もあったが、首相の決断を信頼して会談に応じることにしたという。
日本を救うか、沈没させるか。すべては、野田首相の決断にかかっている。
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