巨人と阪神が今オフ、場外で激しい“伝統の一戦”を繰り広げることになりそうだ。シーズンは終盤に差し掛かり、各球団は来季へ向けた編成作業を開始。大物の去就が注目を集める季節を迎えた。そんななか、巨人の悩みの種は、今季国内FA権を獲得した実松一成捕手(31)をめぐる他球団の動向。なかでも“ポスト城島”探しが急務の阪神がどう出るか、巨人サイドは早くも警戒を強めている。
正捕手の阿部が夏前に足を痛めたこともあり、今季の巨人は、実松の働きに大きく助けられた。
28日のDeNA戦も、阿部は一塁を守り、先発マスクは実松。2回に手に死球を受けて交代したが、今季はすでに56試合に出場(1日現在)。投手の良さを引き出すリードに定評があり、首脳陣も“第二捕手”以上の評価を与えている。
今年4月28日には出場登録年数が8年に達し、国内FA権を取得した。そのときは「権利を取れたことはうれしいが、今は何も考えていません」とコメント。その後も、権利行使に関しては「オフになってから考える」と態度を保留している。球団としては、来季も欠かせない戦力だ。故障がちな阿部が、毎試合マスクをかぶり続けるのは来季も難しい。今後の残留交渉では、引き留めに全力を注ぐ構えだ。
だが、選手の本能として、レギュラーとして出場したい気持ちを抱えているのは実松も同じ。阿部がいる以上、Gの正妻となるのは難しい。そんな複雑な立場の実松に、捕手の人材難を抱える他球団は熱い視線を送っている。なかでも巨人が最も警戒しているのが、中村新GMが血の入れ替えを進める阪神だ。
中村GMは就任時、補強ポイントに「センターライン強化」を挙げている。特に捕手は城島が引退し、藤井も来季は37歳を迎える。一方でこれといった若手が育っていない。一軍経験豊富な捕手は、のどから手が出るほどに欲しい。
実松の今季年俸は、2000万円(推定)と高くない。仮にFA宣言すればCランクとなり、移籍しても金銭や人的補償は必要ない。巨人と阪神の資金力はほぼ互角。そうなると正捕手の座を狙えることが、移籍の決め手になってもおかしくない。
またセ球団のある編成担当は「阪神だけではなく、捕手はどこも欲しがっている。“例えば、ポスト谷繁”を探す中日だって、実松には注目しているはず。巨人の戦力ダウンも狙えるわけだからね。宣言すれば、かなりの球団が獲得に名乗りを上げるだろう」と見る。
城島の引退決断もあって、実松の去就はより注目を集めるところとなった。巨人は大事な戦力を守りきれるか。ストーブリーグは間もなく幕を開ける。
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