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クリエイターの才覚

「自分で考えて手を動かせる人、サービスに前のめりな人」--はてなが求めるクリエイター像

岡徳之 2012/10/18 16:10

 この連載では、企業の技術者採用担当者とそこで活躍するウェブクリエイターへの取材を通じて、優秀なクリエイターを企業がどう惹きつけるか、またビジネスで必要とされるクリエイターとはどのような人物なのかを明らかにしていく。

 第5回は、ギーク層に愛されるサービスを連発し、熱狂的なファンも抱えるはてな。Q&Aサービス「人力検索はてな」やブログサービス「はてなダイアリー(はてなブログ)」、国内最大級のソーシャルブックマーク「はてなブックマーク」など、ネットユーザーの多くが一度はそのサービスに触れたことがあるはずだ。

 最近では、10月下旬に東京オフィスを表参道に移転し、オフィス面積を2倍に増床してエンジニア採用を強化するという発表が話題になった。これから本格的に東京での事業拡大を目指す同社にクリエイター採用の実態を聞いた。


左からはてな 執行役員 最高技術責任者の田中慎司氏、アートディレクターの種村司氏、デザイナーの上田雄太氏

はてなのクリエイター採用状況

 今回取材に応じてくれたのは、エンジニア採用を統括する執行役員 最高技術責任者の田中慎司氏、デザイナー採用を統括するアートディレクターの種村司氏、そして新卒として採用されたデザイナー上田雄太氏の3人。

 はてなは、2012年で創業12年目。正社員が60名強、アルバイトを含めるとおよそ100名にのぼる。エンジニア、デザイナーなどのクリエイター職は社員のうち6割を占め、そのほとんどが本社である京都に籍を置いている。東京オフィス移転前まで、京都が主な開発拠点、東京は広告営業やマーケティングの拠点と棲み分けられていた。

 クリエイターの採用ペースは、年に平均7~8人。「今年度は、はてなブックマーク、はてなダイアリーをはじめ、事業が全体として伸びているので10名を超えそう」(田中氏)だという。採用した人の内訳としてはほぼエンジニアが中心で、デザイナーは年に1名程度採用しているとのこと。

学生エンジニアにはたまらない?独自のインターンシップ

 京都に本社を置いていることもあり、関西のエンジニアは比較的採用しやすい状況にあるという。サービスの知名度が高く、“関西でウェブ開発”といえば想起されるブランドを築いていることが大きいだろう。その一方で、エンジニア採用施策には社員のリソースを大きく割く努力をしている。それが、2008年から毎年夏に京都オフィスで開催している「はてなサマーインターン」。2012年度はすべてのカリキュラムに参加した場合、約6週間という比較的長めのプログラムだ。


インターンシップについて説明する田中氏

 たとえば今年開催された「Webアプリケーション開発 実践コース」では、最初の2週間ではてな独自のウェブサービス開発手法について、各サービスを担当するエンジニアやディレクターが講義。全期間を通じて、企画、設計から開発、リリース、運用に至るまで、ウェブサービス制作過程の全体を座学で受ける。

 1週目の講義では毎回課題が出され、全課題をクリアし、かつ作成したウェブアプリケーションをもとに習熟度を認められた参加者のみが、後半のカリキュラムに進む。指導にあたる社員同様、参加者にとってもタフな内容だ。

 ただし、前半の課題をクリアした参加者は、「はてなダイアリー(はてなブログ)」「はてなブックマーク」など、社員のチームにジョインし、実際のサービスに追加実装する新機能の企画・開発に携わることができる。このインターンシップをきっかけにスタッフになったメンバーがとても多いという。代表取締役社長の近藤淳也氏もインターンシップ特設ページで「一緒にもの作りをする中で、お互いのことをより深く知れる機会になっている」と語る。

美大新卒デザイナーが、開発重視のはてなを選んだ理由

 一方、デザイナー採用については「これまで一般的なアプローチにとどまっていた」(種村氏)という。主には学生向けの説明会やエンジニア向けとは別の小規模なインターンシップを開催していた。新卒で入社したばかりの上田氏もデザイナー向けのインターン経験者。学校で開催された説明会の内容に惹かれたそうだ。


「生活で使うものをよくしたい」と上田氏

 上田氏は美大出身。学校ではプリントメディアのデザインを学んでいた。「広告制作会社などに就職する進路も考えた。しかし、普段の生活で使うものをよくしたいという思いがあって、はてなを選んだ」そうだ。

 インターンシップでは、任天堂との協業サービス「うごメモシアター」のユーザーのマイルームや、インターンシップレポートページのデザインに携わった。その後、書類選考、一次面接、二次面接、役員面接、社長面接という通常の新卒採用プロセスを経て入社したという。

 ちなみに上田氏は、社員にランチが振る舞われる「まかないランチ」「フリードリンク」制度に胃袋を掴まれているらしい。仕事に集中できる開発環境を整備することも、採用においては重要といえる。

履歴書は参考にしない

 はてなは10月下旬に東京オフィスを表参道に移転し、同時にエンジニアやデザイナーの採用を強化すべく「東京開発センター」を開設する。そこでは、平日夜に勉強会などを実施し、外部のクリエイターと積極的に交流していく予定だという。最後に3名に求めるクリエイター像を聞いた。


求める人材は「ネットに対して前のめりな人がいい」と種村氏

 田中氏「履歴書はあまり参考にしたことはありません。とにかくモノを作れる人がいいです。パソコン向けでもスマートフォン向けでも、サービスを作ったことがある人。自分の頭で考えて自分の手が動かせることが重要です」

 種村氏「私も履歴書はあまり重視していないですね。個人のポートフォリオや業務で作っているものを通じて、基礎的なグラフィック力があるかどうかを判断します。あと、ネットに対して前のめりな人がいい。上田は前のめりです。最近メインで担当している『はてなブログ』では、デザインだけではなく、サービス開発においてディレクションを経験し、自分の領域を広げています」

 上田氏「これがやりたいです!と提案できる人が向いていると思います。手を上げれば、よし任せたとなります。自分で企画を引っ張ってモノをつくることができることはとてもありがたいです」

 以前に比べて、ウェブサービスというのはギーク層だけではなく、より多くの人に使われるようになってきた。「小さい規模ならではのスピード感と裁量で、ウェブを通じてより多くの人とコミュニケーションをできる場を提供したい」――そんな人を惹きつける環境が、はてなにはある。

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