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親エスカレーター派建築家、リチャード・ロジャースというひとについてところで、このロイズ・オブ・ロンドンの設計者、リチャード・ロジャースさんは、私にはロイズを知るずっと前からなじみ深い存在である。なぜなら彼は、エスカレーター好きにとってのシンボル的な存在、パリのポンピドゥー・センターの設計者でもあるからなのだ。
これがそのポンピドゥー・センター。
ここは、ロイズとちがって美術館の開館日はいつでも入れるので、かれこれ4度訪れている。何が私をそんなに駆り立てるかといえば、もちろんこのチューブの中身がエスカレーターなのだ。各階の美術館ギャラリーと、最上階のカフェをつなぐ、機能的なストロークになっている。
乗っているときの楽しさでいうと、あらゆる乗り物の中でも世界トップクラスを保証する。
チューブ内のエスカレーターをのぼって徐々にパリ全体の景色が見渡せる体験は最高である。エスカレーターがとりたてて好きでないひとにも、パリに来たらまず行くべきスポットとして私はオススメしている。
上から降りてくる視点を動画でどうぞ(4倍速)
これを眺められる正面広場は、エスカレーター好きたちの楽園だ。
このポンピドゥー・センター、エスカレーターがあるこちら側が、裏側でも、工事中なのでもなく、完成した正面入り口なのだが、あらためて写真でじっくりみると、「改装中…?」と不安になる足場っぷりである。
しかし他の面はもっとさらにすごいことになっているので安心されたい。 歴史あるパリの街並みに突如としてあらわれる
原色のコンビナートなのだ。赤いところはむき出しのエレベーター。
だだん。
上を見上げると工事中のなにかが落ちてこないか心配になるが、ここが歩行者用の歩道があるアーケードである。
工場やら工事現場やらが大好きで、積極的に見に行っている私のような者からすると、とってもおなじみの感じでどこをとっても素敵なのだが、リチャード・ロジャースというひとは、単なる気まぐれじゃなく、本気でこういうのが好きらしいのだ。エスカレーター、エレベーター、配管、柱、そういった構造すべてを、装飾で隠さず、むきだしにする。
それは新しく画期的な建築様式として、パリの国立美術館に採用されたわけだが、わたしは、彼はきっと単純に、エスカレーターとかエレベーターとかダクトとか、そういうメカメカしたものが、大好きなんだと思うのだよね。 ポンピドゥー・センター内の本屋さんで買ってきた、彼の本。
ポンピドゥー・センターのエスカレーターに乗るリチャード(右。左は共同設計者のレンズ・ピアノ氏)。ほら、うれしそうじゃん。
友だちになろうぜ、リチャード。
日本でお手軽リチャード体験するならばそんな簡単に海外には行けないよ、という方のために、国内でこれに似ている建築をご紹介しておこう。
私が日本のポンピドゥーと呼んでいるお台場フジテレビ。設計者は世界の丹下健三先生。ポンピドゥーを意識しているのかどうかはよくしらない。
私が日本のロイズ・オブ・ロンドンと呼んでいる、六甲にある神戸ファッションマートのアトリウムプラザ。上が光っていないのが残念だが、エスカレーターの重畳感がなんかそれっぽい。ぽくないか。
というのは話がそれたが、リチャード本人の設計の建物は、たとえば六本木の国立新美術館前に建てられた「政策研究大学院大学」など、日本にもたくさんある。
あいにく、エスカレーターがフィーチャーされたものは日本にはなさそうなのだが、前述のリチャード本をめくっていたら、東京国際フォーラムのコンペ案(落選)らしいものがすごかった。長い長いチューブエスカレーター(orスロープ)が並列で3基…!しびれるぜ…
実現したものでは、私のオススメは、汐留日本テレビ。リチャードが基本構想を手がけている。言われてみれば確かに、外側に3基並んだエレベーターや、パイプの構造物がむき出しの無機質な外観がそれっぽい。
うむ、いままでそれっぽいなぁと思ってみていた私、ごめん。これの親玉である、ロイズ・オブ・ロンドンは、申し訳ない、全然こんなもんじゃなかった。かのチャールズ皇太子が「石油コンビナートのようだ」と「酷評」したそうだ。皇太子もごめん、それ酷評になってない。
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