また、支払期間がより長い「長期L型」の場合、10年間のトータル手数料は同153%にも達する。このほかに、手数料が初年度のみ発生する「I型」もあり、A社の場合で同95%だ。しかも、この手数料率は、各生保会社が横並びではない。右の表に挙げたように月額保険料がほぼ同額でも、手数料率に大きな開きがある。
その上、生保会社が特定の商品販売を伸ばすべくキャンペーンを実施した際、この手数料率にさらに数十パーセントが上積みされるほか、販売力に応じた代理店のランクでも手数料率が加算される。
これだけの“ニンジン”がぶら下げられれば、個々の客の収入や家族構成などに合った中立な商品の提案ではなく、より実入りのよい商品を売ろうとする動機が働いても不思議ではない。
ベストアドバイスから遠ざかる誘惑は、手数料にとどまらない。
中堅の乗り合い代理店の場合、提携する生保会社と交わした販売件数のノルマ達成のため、売りたくもない商品を売ることもあるという。逆に大手の乗り合い代理店では、人手不足を埋めるため、生保会社から数十人単位の社員が出向し、窓口に立つケースもある。
もちろん、訪れた客は、そんなことは露ほども知らない。出向者が自社の商品を薦めず、中立的な立場を貫けるのか疑問が残るところだ。
これに対し、乗り合い代理店首脳は「特定の商品ばかりを売れば客にソッポを向かれる。絶対に恣意的なことはしない」と反論する。
だが、週刊ダイヤモンドが大手乗り合い代理店3社に行った覆面調査で、同じ条件下で保険料の見積もりを依頼したが、薦められた商品はもちろん、保険料も月額4万1364~2万5583円と提案は大きく異なり、特定の生保に偏重するところもあった(4月21日号)。
販売手数料のブラックボックスへの批判が高まる中、乗り合い代理店幹部さえ、「このままでは、手数料開示は避けられない」と危機感を募らせる。
だが、米国や英国など他の先進国では、当たり前のように販売手数料が開示されている。世界でも有数の保険大国である日本で開示が望まれるのは当然の流れだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)