ARMORED CORE/to Stratos (荒地)
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2nd stage



「ちょっと、よろしくて?」
 授業を一つ挟んだ休み時間、一夏と俺にそうやって話し掛けてきたのは、地毛の金髪が鮮やかな女子だった。アングロ・サクソン系だろう顔立ちの――早い話英国系民族のそいつは、青い瞳を吊り上げさせてこっちを見ている。わずかにロールがかった髪はお嬢様といった様相だった。ちなみにこのIS学園、無条件で多国籍の生徒を受け入れなければならないという義務のおかげで無国籍情緒溢れる生徒構成になっている。経営国である日本の生徒は半分ほどしかいない。
 で、そのお嬢様だが、全身からいかにも現代の女子という雰囲気を漂わせていた。
 ――ISの登場で拍車の掛かる女性優位の社会風潮を体現したかのような、そんな高圧的な女子だ。正直この手の手合いは苦手なんだが。
「訊いてます? お返事は?」
「あーはいはい、何か用ッスか?」
「まぁ! なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないのかしら?」
 ……なんだその態度と逆に聞きたい。『オリジナルに乗れる女だから偉い』とかそういう気なんだろうか。確かに戦略的価値はあるだろうが、それ以前に兵士としてそんな自尊心は邪魔なだけじゃないか。――子供に何を求めてるんだろうな自分は。
「ところで君、誰?」
「な……」
 一夏の一言がいたく気に障ったらしく、お嬢様は吊り目を細めていかにも男を見下した口調で続ける。
「わたくしを知らない? このセシリア・オルコットを? イギリスの国家代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを?」
 あーあー、イギリスの。なるほど。候補生リストに載ってたなそういえば。
「あ、質問いいか?」
 と、一夏が口を開いた。
「ふん。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」
「国家代表候補生って、何?」
 がたたっ、と周りの生徒がずっこける音がした。
「あ、あ、あ……」
「『あ』?」
「あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」
 教室中に響き渡るオルコットの剣幕。表情が微妙に引き攣って見えるのは気のせいじゃあるまい。
「おう。知らん」
 ちょっとは見栄を張ろうとは思わないのだろうか。その一言で黙ってしまったオルコットは、怒りで逆に冷静になったのか、こめかみを人差し指で押さえながらぶつぶつ言い出した。
「信じられない。信じられませんわ。極東の島国というのは、こうまで未開の地なのかしら。常識ですわよ、常識。テレビがないのかしら……」
 きっと国内以外じゃそんなに知られてないんじゃないか、お前。
「で、代表候補生って?」
「国家・企業代表IS操縦者の候補生ってことッスよ。これに選ばれるのは一部のエリートだけなん――」
「そう! エリートなのですわ!」
 急に元気になったなコイツ。……代表候補生って何人もいるんだからそんなに偉そうに出来ることじゃないはずだが。
 びしっと一夏に人差し指を突き付け、オルコットは得意顔で続ける。
「本来ならわたくしのような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも奇跡……幸運なのよ。その現実をもう少し理解していただける?」
「そうか、それはラッキーだ」
「……馬鹿にしていますの?」
 一夏の言葉に、オルコットは顔をしかめる。
「大体、あなた方ISについて何も知らないくせに、よくこの学園に入れましたわね。世界で二人だけのオリジナルを操縦できる男と聞いていましたから、少しくらい知的さを感じさせるかと思っていましたけど、期待はずれですわね」
「そんな勝手に期待されても」
「困るッスよねぇ」
「ふん。まぁでも? わたくしは優秀ですから、あなた方のような人間にも優しくしてあげますわよ」
 いや聞けよこっちの話を。
「ISのことでわからないことがあれば、まぁ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」
 唯一、をやけに強調してくる。そもそもISの操縦を学びにくるような奴にする試験じゃないからそれ。
「入試って、あれか? ISを動かして戦うやつ?」
「それ以外に入試などありませんわ」
「あれ? 俺も倒したぞ、教官」
 なんの気兼ねもなく放たれたその発言に、オルコットは目元を引き攣らせた。
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
「女子ではってオチじゃないのか?」
「ていうかそれ、アンタの順番まではってオチッスよ。あと三人は教官倒したって聞いたし」
 というか専用機持ちなら勝てて当然じゃないだろうか。教官が手加減してたし。
「つ、つまり、わたくしだけではないと……?」
「というか俺も倒したんスけど」
 プツン、と何かが切れる音がした。――ような気がした。
「あなた! あなたも教官を倒したって言うの!?」
「ていうか代表候補生なら大概勝てるんじゃないスか?」
「く……!」
 男にそんなことを言われたのがよっぽど屈辱なのか、オルコットは頬を引き攣らせる。
「あー、ほら、落ち着けよ。な?」
「こ、これが落ち着いていられ――」
 キーンコーンカーンコーン。と随分チープな音が響く。
「っ……! まだ話は終わってませんからね! また後で来ますから! よくって!?」
 来ても来なくても良いのでとりあえず頷いておく。
 全員が席に着いたのを見計らって、織斑教諭が教壇の上で口を開いた。
「それではこの時間は、実戦で使用する各種装備の特性について説明する」
 よっぽど重要な内容なのか、山田女史ですら教室の片隅でノートを手にメモの用意をしていた。
「あぁ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めておかないといけないな」
 ふと思い出したように、織斑教諭がそんなことを言い出した。
「クラス代表とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まぁ、クラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差はないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」
 ざわざわと教室が色めき立つ。ほとんど雑用係じゃないのかそれは。面倒なんだろうなきっと。
「はいっ。織斑くんを推薦します!」
 ――おぉ。そうくるか。
「私はオースティン君がいい!」
 ほう、織斑にオースティン……いいってなんだいいって。
「では候補者は織斑一夏とルーク・オースティン……他にはいないか? 自薦他薦は問わないぞ」
 と、一夏が勢い余ったのか立ち上がった。
「お、俺!?」
 そして周りの視線が釘付けに。『彼ならきっとなんとかしてくれる』というキラキラした実に無責任で強制力の強い視線だった。
「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか? いないならこの二人から決めるぞ」
「ちょっ、ちょっと待った! 俺はそんなのやらな――」
「自薦他薦は問わないと言った。他薦された者に拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」
「い、いやでも――」
 反論を続けようとする一夏を、突然甲高い声が遮った。
「待ってください! 納得がいきませんわ!」
 バンッと机を叩いて立ち上がったのは、さっきのセシリア・オルコットだった。
「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ! わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
 恥と来たか。代表なんて強ければ誰でもいいだろうに。
「実力から行けば、専用機持ちであるわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、もの珍しいからという理由で極東の猿や欧州の田舎者にされては困ります! わたくしはこのような島国までIS技能の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」
 人が訛り付きで喋ってるからって田舎者扱いか。短絡的な。あとイギリスも島国だろうが。
「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」
 といった調子のオルコットは、頭に血が上っているのか止まるところを知らない。
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で――」
 そこで、一夏がピクリと反応した。
「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
「なっ……!?」
 やってしまったと言わんばかりの様子で、恐る恐る後ろを振り向く一夏。
 たっぷり5秒ほど掛けて、顔を真っ赤にして口をまごつかせる――たぶん怒りで思考が止まってるんだろう――オルコットを視界に収めた。
「あっ、あっ、あなたねぇ! わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
 セシリアの目が更に吊り上がった。完全にキレてしまっているようだ。
「決闘ですわ!」
 バンッと机を叩くオルコット。……というかなんだ、今時決闘なんて流行らんだろうに。古風なこったな英国人(ジョンブル)
 ま、二人して頑張ってくれれば俺はそれで――
「もちろんあなたもですわよ、田舎者」
「……あの、俺さっきから発言してないはずなんスけど。巻き添え?」
「それでいいですわよね?」
 おい聞けよ。何故そこで一夏に話を振る。
「おう。いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い――いえ、奴隷にしますわよ」
「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」
「そう? 何にせよちょうどいいですわ。イギリス国家代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」
 ……何この流れ。何で巻き込まれてるんだ俺。ありえない。まぁいい、もうヤケだ。
「――いいッスよ。レイレナードの()()()()()()()の実力、見せてやるッスよ」
「……はい?」
「ん? ルークも代表候補生なのか?」
 そうとも。そうだとも。
「オリジナル、コピー問わずIS部門において世界シェア第一位を誇るレイレナード社、その代表候補生として、全力で臨む所存ッス」
「な、な……!?」
「レイレナード?」
 そしていい加減お前はテレビを見ろ一夏。
「そういうことッスから、代表候補生同士、正々堂々勝負しましょうや、セシリア・オルコットさん?」
「あ、あなたも代表候補生……!?」
「まさか……俺を知らない? このルーク・オースティンを? レイレナードの企業代表候補生のこの俺を?」
 本人のセリフをそのまま言いながらニヤニヤと薄ら笑いを浮かべてやると、オルコットの顔は急速に赤みを帯びていく。よっぽど屈辱的だったのか、口を開こうともしなくなった。
「うむ、話はまとまったな? まとまってなくても時間がないのでそこまでだ。勝負は一週間後の月曜日。放課後、第三アリーナで行う。空き時間が少ないので三人まとめて戦ってもらうからな。各員、準備は怠らないように。それでは授業を始める」
 言うだけ言って、織斑教諭は手を打って話を強引に締める。……いかん。勢いで挑発まで入れてしまった……。
 まぁいい。勝ったら勝ったで、どうにかなるさ。


 で、放課後の教室。
「うぅ……」
 さっぱりわからん、と机に突っ伏している織斑一夏がいた。
「まぁ慣れが必要な部分もあるッスから、徐々にやっていくッスよ、一夏」
「でも勝負は一週間後だぜ……?」
 確かに、一週間で覆せるほど、セシリアとの実力差は小さくないだろう。
 まぁしかし、
「そろそろ寮に行かないッスか? 部屋割とか確認したいし」
「ん、おう」
 ここIS学園は、機密保持や安全確保のために全寮制となっている。パイロットの個人情報やら機体データやらが持ち出されないように。そのために全課程2400人余りが入る寮を作ったという。日本政府の金の掛けようがよくわかる。
 一夏が帰り支度を済ませたのを見計らって、二人揃って教室を出る。……途中で女子連中がカップリングどうのと言っていたのは聞かなかったことにしよう。



 モノレールで移動すること20分、ようやく寮のある人工島に到着。――IS学園は人工島の上に建てられているのだが、これがまた手が込んでいる。船舶の発着場や管理棟のある中央の島から、パイロットⅠ科、Ⅱ科、整備科、兵装科、電子科それぞれの人工島が橋でつながれている。
 ちなみにⅠ科、Ⅱ科、兵装科は、安全上の理由から寮島とは中央島を挟んで反対方向になるように作られているため、移動時間がそれなりに掛かる。
「うわ、デカ……」
「そりゃここだけでも1000人以上住むんスからね。団地くらいにはなるッスよ」
 で、目の前に広がる男子寮の群。確か10棟あるらしい。5階建てで、一つの階につき6つの4人部屋があるとか。
 それにしても、真新しい白壁が夕日に照らされてよく映えるな。
「確か新入生の部屋割りが……あったあった」
 寮の敷地の入り口にある電光掲示板に、新入生全員の名前とその部屋番号が表示されていた。パイロットⅠ科にいる男子は二人だけなので見やすくて助かる。
「二人揃って1083か。なんか作為的ッスね」
「そうか? 同じ科だからだろ」
 まぁそうなるだろうか。気にしすぎだな。
「さて、行くか」
「そうッスね」
 3号棟の3階にある1083号室に到着。一応インターホンを鳴らしてみると、中から意外なやつが出てきた。
「……なんでここにいるんすか」
「おぉ、久しぶりッスねRD。朝以来?」
 凄く嫌そうな顔をして出てきたのは、よく見知ったメカニックのRDだった。
「知り合いか?」
「保護者が一緒なんスよ。まぁ家族みたいなもんスね」
「腐れ縁すよね、ホント」
 なぜか二人してしみじみしていた。もう7年の付き合いになるんだったか。
「で、なんでここにいるんすか?」
「いや、部屋が同じだから」
 ピシ、とRDの動作が止まった。
「ここまで来て部屋まで同じとかどうなってんすか」
「さぁ? でも決まったことなんで仕方ないんじゃないスか?」
 あからさまに溜息を吐かれた。失敬な。
「で、そっちの……あぁ、あんたが織斑一夏すね。Ⅰ科の男子パイロットの」
「おう」
 顔まで割れてるのか。……ってそりゃそうか、全世界配信のニュースだったもんな、Ⅰ科初の男子生徒って。
「あ、そういや紹介がまだッスね。こちらRD、俺達と同じ一年生で整備科所属ッス」
「どうも」
 ちなみにこの訛りはRDにうつされたと言っても過言ではないだろう。伊達に長い付き合いはしていない。……まぁ、コミュニケーションの相手が少なかったというのもあるが。。
「そういえば、四人部屋なんだからもう一人いるんじゃないんスか?」
「いないよ、今のところ。あんたらだけっす」
 それだけ言うと、RDはドアを開けたまま中に引っ込んでしまう。
「……なんか愛想悪いな」
「人に慣れてないんスよ。整備士って言っても、あんまり誰かと班で作業とかやってなかったし」
 RDは俺の専属整備士の弟子で、その人に整備技術を教わっているのだが……いかんせん師匠が師匠なので、他の整備士と班で作業をすることなんてなかった。
「ま、とっとと入るとするッスよ。荷解きもしないといけないし」
「それもそうだな」
 ……ふむ。RDは部屋の荷物の伝票を見なかったんだろうか。まぁ、あんまり他人のものに興味を示す奴でもないか。
「で、今日は何の作業してるんスか?」
「……コピーのマニピュレータの補修すよ」
 玄関ドアを開けて少し短い廊下を抜けた先、左右の壁際にある二段ベッドのその奥。四つ並べられた作業用机に黙々と向かっているRDの背に声を掛ける。
「整備科ってもうそんな作業してるのか?」
 と一夏。
「RDの日課ッスよ。コピーISの部品の修復くらいは自分に出来るようにしたいっていうんで、毎日2時間はこうやってパーツに向かって作業を」
 今じゃちょっとした故障くらいなら直せると聞く。――ちなみに、コピーISというのは、ISの技術を応用して作られた、言わば劣化版ISともいうべき下位互換機体だ。擬似コアの製造には成功したが、オリジナルほどの性能は出せず、それでも量産には成功しているし、なんと言っても男女問わず使える―と言ってもやはり適正的には女性の方が高いのだが―ということで、もっぱら一般の土木工事や人命救助などに使われている。ISの有用性を世に広め、女性優位の社会を形成した要因と言ったところか。
「しっかし見事な手際ッスねぇ」
 手元を覗き込む。迷いなく故障パーツを外し、代替部品と差し替えていく様は、熟練とまでは行かなくとも一端の整備士と呼んで差し支えないと思う。
「あんたもこれぐらい出来るじゃないすか」
「傭兵ってのは、機体の整備も込みな職業なんスよ」
 自分の使うものは自分で整備する。自分専用のものを持っている上での基本ではないだろうか。だが、いかんせん最近の専用機持ちは自分で機体を整備するということをしない。下手に専属整備士なんかつけるから自分の機体に無関心になるんだ。本当の意味で『命を預ける』という状況を経験していないせいもあるんだろうが。
「ところで、オルコットに突っ掛かられる前の休み時間に話してた女子って誰なんスか?」
 黒髪をポニーテールにした日本人女子で、不機嫌そうな目付きがいやに印象的だった。
「あぁ、箒のことか?」
 それから話を聞くに、どうも一夏の幼馴染らしい。
篠ノ乃(シノノノ)……篠ノ乃ね」
 その苗字なら一人だけ知ってるぞ。というか知らない方がおかしいな。
「それ、篠ノ乃(タバネ)の関係者ッスか?」
 どうにも気になるので、ストレートに訊いてみる。それに対して、一夏はこともなげに頷いて見せた。
 ――篠ノ乃束。ISをたったひとりで作成し、完成させた稀代の天才。どうにも対人能力に欠けるらしく、今まで衆人の前に出たことがほとんどない。
「でもあいつ、なんでか束さんのこと嫌いなんだよなぁ……」
「そっか、篠ノ乃箒の幼馴染ってことは、篠ノ乃束とも知り合いなんスよね」
 ……そうなると、どんな人物なのか訊いてみたくなる。現代社会に多大過ぎる影響を与えた人物が、一体どんな人となりをしていたのか。
「どんな、って……まぁ、すげぇ人見知りで、初めて会ったときはほとんど会話ができなかったな」
 しばらく篠ノ乃束との思い出話を聞いていくと、なんとも想像と違う人物に思えてきた。
「そんな微妙な性格の人間が、世の中をこんなに変えたんすか」
 ふと気付けば、RDが作業の手を止めて話を聞いていた。
「いや、でもホントに天才って感じはしたんだぞ?」
 まぁ、実際天才的だったんだろう。発表からたかだか10年でこれほど世に広まっている発明をしたのだから。
「あ、そろそろ消灯時間すね」
「おぉ、もうそんな時間か」
 存外聞き入っていたようで、もう時計の針は11時を回るところだった。
「話の続きはまた今度ッスね」
「だな。……ところでさ、ベッドの位置どうする? 結局、俺たち三人だけみたいだけど」
 そこからかれこれ15分、どこがいいだのなんだのと三人でわいわいやってるところを寮監の2年生に注意されたというのは別の話。





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