IS インフィニット・ストラトス 荒鷲の軌跡 (ズタボロのかかし)
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第5話です
第5話 後日談と転校生
side???
「…と、言う訳で」
教卓の前に立つ山田麻耶は、後ろにあるボードにある一生徒の名を表記させる。
「1年1組のクラス代表は織斑一夏くんに決定しました。あ、“1”繋がりでいいですね~」
「……よかったな…一夏」
「何でだよ!?」
1-Aの教室内に織斑一夏のツッコミが響く。
「代表決定戦で優勝したのは神薙の筈だろ!?何で俺なんだよ!?」
「…辞退した」
「だから何で!?」
「……睡眠時間確保の為」
「ただめんどくさがってるだけ!?」
「…だめ?」
全てを簡潔に一言で終わらせ、あどけない顔してトライクラッシャーで脅す神薙。
「うっ……そ、それでもだ!なんでセシリアじゃなくて俺なんだよ!?セシリアだってあんなに……」
「そ、それはわたくしも辞退したからですわ。神薙さんが辞退されましたし…も、勿論神薙さんのおかげでわたくしがどこまで未熟だったか教えて頂きましたから……それと、IS操縦は実践が何よりの糧。わたくしは代表候補生なのですから、戦いには事欠かなくてよ」
「………」コクンコクン
それとは対照的に、どことなく不自然な理由を付け足して説明した顔が少し赤いセシリア・オルコット。
その発言に幾度となく頷く神薙。
「(神薙さん…?)そ、そうか」
若干の違和感を覚えつつ、なんとなく理解した風に装った。
「セシリアわかってる~♪」
「折角2人いる内の男子生徒だもんね。持ち上げないとね」
クラスがセシリアを囃し立てる。
「私たちは貴重な経験を積める!他クラスには情報が売れる!一粒で二度美味しいね♪織斑くんは!」
(クラスメートを売るな!!)
敢えて、声にはしなかった。
「……一夏は…一石二鳥……プ」
「オイコラ神薙、ちょっとアリーナ裏来いや」
「キャッ……強姦魔」
「ちょっ、神薙さん!?」
『何ですって!?』
「い、イヤだから…」
「一夏さん、折角ですから狙撃とビットの一斉射撃の回避練習をしましょう」
「セシリア!?」
「一夏…今すぐその歪んだ精神を叩き直してやる」
「箒も!?」
「織斑、後でたっぷり特別指導してやろう」
「千冬ね…織斑先生まで…」
「…一夏」
神薙の一言でカオスと化した教室。
「…頑張れ」パタパタ
張本人が止めを差した。
「か・ん・な・ぎ~~!!!」
“ガンバレ”と書かれた小旗を振って。
sideout
side神薙
「さて、話が有耶無耶になってしまったが、クラス代表は織斑一夏。異存はないな」
『はーい』
クラス全員(俺も含む)が一丸となって良いお返事。
一夏はさっきまで千冬さんに出席簿アタックをイヤと言うほど喰らって、セシリアさんにイヤと言うほどBTとライフルに狙撃されて、篠ノ之さんに竹刀でイヤと言うほどシバかれて、クラスメートたちにイヤと言うほど色々喰らって、完全に沈黙していた。“理不尽だオーラ”がナイアガラの滝だった。
うむ、我ながらなかなか…
バスン!!
「神薙、そのどや顔を何とかしろ」
「……してません」
「そうか」
バスンバスンバスン!!!!!!
「……すいません、治します」
「ならいい」
理不尽だァァァァ!!!!!
ズバスン!!!!!
「何か文句があるのか」
「………いえ」
やっぱり千冬さんには適わない事がわかった。無謀な事はしないようにしよう。
……………
「これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、師鳳。試しに飛んで見せろ」
月日は流れ4月下旬。
少しずつ若葉色に染まりゆく中、何時もの様にIS学園での授業を受けている。
「早くしろ。熟練したIS操縦者は展開まで1秒と掛からないぞ」
前に抜けて首に掛かったリングブレスレットを右手で掴む。
…行くぞ、相棒。
刹那の輝きの後、10㎝程浮遊した状態で【インパルス・イーグル】は展開された。
横目で2人を見ると、丁度一夏が【白式】を展開したところだった。
セシリアさんの【ブルー・ティアーズ】も完全に修復が完了していた。
「よし、飛べ」
一気にショルダースラスターを広げ垂直に飛び上がる。
下を見ていると、一夏が白式に振り回されていた。
しっかりしてくれ日本男児。それじゃあ我が国の恥だ。
スラスターの出力を落として2人が追いつくのを待つ。
「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分が飛びやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」
「そう言われてもなぁ。大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。何で浮いてるんだ、コレ?」
なんて根本的な質問。ちゃんと要項読んどけば解るはずだが…
「説明しても構いませんが、長いですわよ」
「……反重力力翼、流動波干渉、素粒子力学、etc」
「わかった。説明はしてくれなくていい」
「そう、残念ですわ」
「ん……」
優しい顔で微笑むセシリアさん。当初のアレとは大違いだ。
クラス代表決定戦から数日。篠ノ之さんと共に一夏にちょこちょこ教えつつ、セシリアさんと模擬戦やアドバイスをやってたりしている。
まだまだ荒削りな感じがするが、代表候補生なだけあって飲み込みが早い。
「……一応、今日は模擬戦。…俺から有効打」
「うぇ…無茶言うなよ」
一夏も少しずつ覚えてきたが、やっぱり暴れる事もしばしば。長い目で見てやる必要がありそうだ。
…っと、そろそろウォームアップしたいな…
「……織斑先生、少し跳んでも(・・・・)…良いですか?」
〈いいだろう。但し、2分だけだ。それが終了次第その地点から10秒以内に急降下しろ。合格範囲は半径3m、高さ5㎝未満だ〉
十分ですよ。それだけあれば。
「…2人共、ちょっと…下がって」
「ん?ああ」
「いいですけど…なにされるんですの」
俺の目的が分からずもすんなりと退いてくれる。
「……ちょっとした…演技」
一夏達からオーバーシュートして約10m下がる。
「…ブースト…マキシマム」
【ソニック・インパルス】を最大出力まで思いっ切り吹かす。
勿論、ただ単に飛んでるだけじゃ意味がない。折角だから、特殊機動もやった。
特に反応が良さそうだったのがクルビット。コブラ機動の発展型で、水平飛行中のコブラから機首を前方に戻さず、後方に一回転させ水平姿勢に戻る機動の事を指す。
戦闘機ですら困難な技能。
ISだから出来る技能(わざ)。
一通り終えて残り20秒。
アリーナの上限まで上昇し、スラスターを全部切って背面からフラフラと落下する。
〈終了だ。急降下を開始しろ〉
「………はい」
その状態から頭を下に向けて急加速。地面まで20mの時点で大体600km/h。残り10mに体勢を逆転させつつ、スラスターを一気に吹かしてブレーキにした。
「…誤差0.3m、上限より-2.1㎝……合格だ」
「……どうも」
周りを見ると、セシリアさんが先に降りていたらしい。
「スゴいですわ!流石神薙さんです!」
「……やろうと思えば…誰でも可能」
少し話していると、ある意味で心の弛緩剤のようだった。
一安心……
ドォォン!!
……出来る筈もなかった。
見てみると、馬鹿がクレーターを作って埋もれていた。
……ブフッ…笑いを堪え切れそうにない。
「馬鹿者。誰が地上に激突しろと言った。グラウンドに穴を開けてどうする」
「……すいません」
クレーターから出て来た白式には汚れ一つ無い真っ白だった。
「情けないぞ、一夏。昨日私が教えてやっただろう」
……あの個性的なヤツか。
「貴様等、何か失礼な事を考えているだろう」
よく心に土足で踏み込まれます。どうしたらいいでしょう。
教えて!千冬せんせい!!
ズバン!!
「何を考えていた」
「………ごめんなさい」
遂に俺は一夏と同じ扱いのようだ。
「大体だな一夏、お前というヤツは昔から……」ブツブツ
篠ノ之さんが小言をブツブツと…。
「…そんなだからお前は肝心なところで……」ブツブツ
「…はい……その通りです。…ごめんなさい、気を付けます…」
「……男子を代表して…世界中に土下座したい」
「ま、まあまあ…」
………
篠ノ之さんのお小言が一段落したところで、今度は武装の展開をする事になった。
最初は一夏。
展開するは勿論【雪片弐型】。
右手を握り締め、そこに雪片弐型は展開された。
展開時間は0.5秒。まだ遅い。
次にセシリアさん。
出したのは【スターライトmkⅢ】。
左手を肩まで上げて真横に突き出す。一瞬の輝きの後、そこにあった。マガジンは装填され、視線でセーフティーを外す。その間1秒未満。
流石、代表候補生。展開姿勢以外は完璧。
「セシリア、近接用の武装を展開しろ」
「えっ、あっ、はっ、はいっ!」
反応が鈍るセシリアさん。大体それだけでどう言う事か把握できる。
…セシリアさんは近接武装を展開したことが殆ど無い。
なかなか収束しない光は手の中でモヤモヤ…
「くっ…」
「まだか?」
「す、すぐです……ああ、もぅ!【インターセプター】!」
半ばヤケクソの叫び声。
初心者用の展開方法だった。
「何秒掛かっている。お前は、実践でも相手に待ってもらうのか?」
「じ、実戦では近接の間合いには入らせません!ですから、問題ないですわ!」
「ほう…。師鳳との対戦で簡単に懐に入られていたようだが…」
「あ、あれは、その……」
ごにゃごにゃしているところを見ていたら…
〈あなたの所為ですわよ!〉
知らんがな。
〈あ、あなたがわたくしに飛び込んでくるから……〉
……すいません。ホントスンマセン。
〈せ、責任とっていただきますわよ!〉
……ぅあぅ…グスン
個人間秘匿通信(プライベート・チャンネル)で怒鳴られた。……一応、俺の所為も含まれ……る?
「最後に師鳳」
「………」コクン
右手、左手、右腕にそれぞれのイメージ。
切り裂く小太刀、中近距離万能型の散弾銃。取って置きの一撃必殺。
--武装展開。右手、雪片参型。左手、M991-HPB。右腕、トライクラッシャー。
--複数同時展開(マルチオープン)
差し出した両腕に光が収束し、像を造り出す。
『おおぉぉぉ……』
「すご~い…」
「一回で3つも同時なんて…」
「器用なヤツだよな、お前は」
「……一夏は不器用」
「余計なお世話だ」
軽口を叩き合う。
「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑、グラウンド片付けておけよ」
……自業自得。
sideout
side???
「ふぅん、ここがそうなんだ……」
夜。IS学園正面ゲート前。
小柄なツインテールの少女がそこに立つ。
身体に不釣り合いなボストンバックを肩に掛け、学園を見上げる。
「え~と、受付って何処にあるんだっけ?」
上着からクシャクシャの紙を取り出す。
「本校舎一階総合事務所受付……って、だからそれどこにあんのよ」
結局場所は分からず、不満いっぱいでそれをポケットにねじ込む。
「自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」
ぶつくさぶつくさ言いながら学園内を歩き回る。生徒、教師、関係者。探して回るも見つからない。時間も時間の夜8時。殆どの生徒は寮にいて出歩く筈もない。
(あ~も~、めんどくさ~…空飛んで探そうか……)
しかし考えただけでそれを実行には移さなかった。“アナタの街の電話帳”3冊分がそれを許す筈がないからだ。
彼女は日本人ではなく中国人。だが、彼女にとってみれば日本も“故郷”と言っても過言ではない。小5から中2の終わりまで日本にいた。
それから約4年。
(あいつ等どんな反応するかな~…。特にあいつ(・・・)はたった1年でいなくなっちゃったから…覚えてるかなぁ…)
彼らとの再開に期待と不安を巡らせる。
覚えててくれてたら…
もし、忘れられてたら…
そんな思考の堂々巡りの中、
「だから……でだな……」
女子の声はアリーナからだった。
(ラッキー♪ちゃっちゃと本校舎の場所聞いて、ついでにあいつ等驚かせてや…る……)
そんな考えは吹き飛んだ。その女子生徒の後に聞こえてきたその声は、よく知る人間の声。
「…だから、そのイメージが解らないんだよ」
思考中にいた1人だった。
(!?)
それだけでは終わらなかった。
「では……が…の時は?」
「……そこは……軌道を予測させないように……で錯乱させるといい」
「!!」
そしてもう一人もいた。
テンションと思考を完全にポジティブへシフトチェンジし、一歩踏み出して声を掛けようとしたが…
「いち「一夏、何時になったらイメージが掴めるのだ。先週からずっと同じところで詰まっているぞ」……え?」
「あのなぁ、お前の説明が独特過ぎるんだよ。何だよ“くいって感じ”って」
「……くいって感じだ」
「だからそれが解らないんだって……オイ、待てって箒!」
(一夏…でもまだ…!)
「かん…「ですが、神薙さんが使ったようなショットガンの場合はどうすれば…」……」
「……BTは、動き回せる。ならば……距離を取って、自分を囮に狙撃も1つ。……追い討ちで更にミサイルも、いい。セシリアさんは…動きを読ませなければ……後は近接戦だけ」
「はいっ、ありがとうございますわ!」
「……でも、基本的には…数十m離れるのが一番」
(……誰?あの子達何なの?)
知らない女の子と微笑ましく(神薙は無表情だけど)話してる2人を見てると、さっきのハイテンションは冷めて、思考と視界が鮮明になる。
それからすぐに本校舎が見つかり、受付へ行った。
「ええと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ、鳳・鈴音さん」
「織斑一夏と師鳳神薙って何組ですか?」
「ああ、噂の子?1組よ。鳳さんは2組だから、お隣さんね。そうそう、一夏くん、1組のクラス代表になったんですって。やっぱり織斑先生の弟さんなだけはあるわね」
「もう一人の方は…」
更に追及する。
「師鳳くんはクラス代表じゃないそうだけど、少なくとも学園内でベスト10に入る実力って注目されてるみたい。噂では入学式の日に教室内で専用機の部分展開をしたとか…」
「そうですか…2組のクラス代表って、もう決まってますか?」
「決まってるわよ」
「名前は」
「え?ええと……それ聞いてどうするの?」
その声と態度に違和感を覚えた事務員に…
「お願いしようかと思って。代表、あたしに譲ってって……」
ビッキビキの怒りを、誤魔化しきれない笑みで、随分と無茶苦茶な事を言ってみせた。
…………
「と言う訳でっ!織斑くんクラス代表おめでとう!」
『おめでと~!』
「そして神薙くん、IS学園へようこそ!」
『ようこそ~!』
パン!パンパ~ン!
クラッカーがはじける音が食堂に響く。
パンパンパン!!
まだ乱射される。
「せ~のっ!」
パン!パンパンパンッ!!
最後は一気に打ち上げた。
((お昼の王道もびっくりだこりゃ))
2人揃ってそう思った。
今、本校舎一階総合事務所受付で何があったか知る由もない一夏と神薙は、夕食後の自由時間にもう一度食堂へ戻って来た。
その理由が
(クラッカーは凄かった。だがしかし!めでたくない。ちっともめでたくないぞ。何なんだこのパーティーは)
(やるだけ疲れるだけだよ。お菓子いっぱいなのはありがたいけど)
またも2人揃って壁を一瞥。直後に吐息。
((今日は疲れる…はぁ))
壁には“織斑一夏クラス代表就任&師鳳神薙歓迎パーティー”などと書かれた紙。
「いや~、コレでクラス対抗戦も盛り上がるねぇ」
「ほんとほんと」
「ラッキーだったよね~。同じクラスになれて」
「ほんとほんと」
先程から相槌を打っている女子生徒。実は2組。つまり他クラス。
今この場にはクラスの垣根は無かった。クラスの集まりは筈なのに。
「人気者だな、一夏」
「人気者ですわね、神薙さん」
「……本当に」
「そう思うか?」
『ふん』
2人は2人で、箒とセシリアが不機嫌な理由が解らずにいた。
しかしながら、セシリアが不機嫌になる理由はかなり解りやすかった。
神薙が今座っている場所はセシリアに程近い場所だが、隣ではない。更に加えて餌付けに近い状態だった。
「師鳳くん、コレ食べる?」
「………」コクン
「師鳳くん、コレどお?」
「………」コクン
「師鳳くん、ココアでいいかな?」
「………」コクンコクン
こんなだから、不機嫌になるのも頷ける。
「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君と師鳳神薙君に特別インタビューをしに来ました~!」
『オー!』
沸き立つ一同。
不機嫌な2人。
溜め息の主人公達。
「あ、私は2年の黛薫子。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名詞」
“は、はぁ”と名詞を受け取ると、すぐに始まった。
「ではずばり織斑君!クラス代表になった感想を、どうぞ!」
「え~と……」
ボイスレコーダーを向けられて余計緊張しだした一夏。
「まあ、何というか、頑張ります」
「え~。もっといいコメントちょうだいよ~。“俺に触るとヤケドするぜ”とか!」
(それは無いわ)
口にはせずとも突っ込む神薙。
「自分、不器用ですから」
(そのどや顔止めろ。ムカつく)
「うわ、前時代的!」
(アンタもいいとこだったよ)
いろいろ飲み食べしてもツッコミを忘れない神薙。そしてそれを声に発する事はない。
「じゃあまあ、適当に捏造するからいいとして」
(結局かい!)
「じゃあ師鳳君!今度はいいコメントを期待してるよ~!」
(いや、期待されても)
「……一夏ガンバレ~」パタパタ
(正にデジャヴ!)
「うん、なかなかいいコメントだね!」
(それはいいのか!?)
「とても捏造しがいがありそうだ!」
(結局捏造!?)
一夏もツッコミに回ざるを得なかった。
「ああ、セシリアちゃんもコメントちょうだい」
「コホン、ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を辞退したかというと、それはつまり……「ああ、長くなりそうだからいいや。写真だけちょうだい」さ、最後まで聞きなさい!」
「いいよ、適当に捏造しとくから。よし、師鳳君に惚れたからって事にしよう」
「なっ、な、なな………!?」
図星を突かれ一気に赤面するセシリア。
「……まさか。…あり得ん」
それを神薙がバッサリ切る。
「え、そうかな~?」
「ん……間違いない」
更に切り刻む神薙をキッと睨み付ける。
(?なんで怒ってんの?)
「だ、大体あなたは「はいはい、取り敢えず3人共並んでね。写真撮るから」
「えっ?」
「注目の専用機持ちだからね。しかも師鳳君は軍のエースなんだから余計にねー。スリーショット貰うよ。あ、握手とかしてるといいかもね」
「そ、そうですか……そう、ですわね………あのっ、撮った写真は当然いただけますわよね?」
「そりゃ勿論」
「でしたら今すぐ着替えて「時間掛かるからダメ。はい、さっさと並ぶ」」
強引に3人のてを引っ張り、握手をさせられる。
「…………」
「?………何か?」
「いっ、いえ別に……」
神薙を見ていたら本人に気付かれてしまい、尻すぼみになるセシリア。
「…………」
「………な、なんでしょうか箒さん」
「別に」
箒に睨み付けられ、ビクビクする一夏。
「じゃあ撮るよー」
“そんな雰囲気ぶっ壊せ”的に薫子は声を掛ける。
「(65×21-30+45)÷75=?」
「え?えっと……2?」
「……違う、18.4」
「師鳳君正解!」
パシャッ!
フラッシュが炊かれ、デジカメのシャッターが切られた。
「………ん?」
「なんで全員入ってるんだ?」
何時の間にか1組全員がそこに被写体として入っていた。
勿論、篠ノ之箒も入ってる。
「あ、あなた達ねぇっ!」
「まーまーまー」
「セシリアだけ抜け駆けはないでしょ」
「クラスの思い出になっていいじゃん」
「ねー!」
(……丸め込んだ。綺麗にあんこを包み込んでる。この会話のこの大福)
神薙はそそくさと非難して、大福を食べながら明後日の方向へ思考を巡らせていた。
「スー……スー……」
結局パーティーは10時過ぎまでやっていたが、神薙をその30分前にダウン。最終的に、一夏が神薙を背負って箒と一緒に送り届けた。
「神薙のやつ、随分と気持ちよさそうに寝てるな」
「心地良さそうだな」
「ああ、全くもって」
2人が聞くその寝息は安らかなモノだった。
「一応着いたけど…」
「スー……スー……」
「起こすのは気が引けるが…鍵が無いと入れないな。……仕方がない。起こそう」
「そう…だな。おーい、着いたぞ~」
神薙を揺すり、起こす。
「ん……むぅ……」
気が付いた神薙は小さな手で目を擦ると、一夏の背中からのそのそ降りて自分の部屋の鍵を開けて入っていった。
「……ぁりがと…おやす…むぅ……」
ガチャン
お礼と挨拶をした神薙はそのままベッドに直行し、途端に爆睡し始めた。
「……予想以上に疲れてたみたいだな」
「まあ、寝る時間より遅いからだろ」
「そう、か」
「俺たちもさっさと寝ようぜ、箒」
「い、言われなくても解っている」//////
「…何も怒らなくても……」
篠ノ之箒の受難は続く。
sideout
………
side神薙
翌日。
俺はパーティーの途中で寝てしまい、一夏と篠ノ之さんに送って貰ってから直で寝た。
んで今日起きてみたら寝癖の酷いこと髪ゴワゴワなこと……
結局シャワーを浴びて髪乾かして、時間が掛かったために何時もより遅くに部屋を出た。
おかげで食堂で食べたかったクロワッサンが品切れだった。
………不幸だ。
そんなこんなでSHL前の時間。毎日のように文庫を読んでいたらこんな事を耳に入れた。
「織斑くん、おはよー。ねぇ、転校生の噂聞いた?」
「転校生?こんな時期に?」
4月も終わってないこの時期に転校生…タイミングがおかしい。……入学手続きで何かあったとか?
「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」
………ん?
代表候補生って事は、そいつ専用機持ちなのか?
「ふーん」
「あら、わたくし共の存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」
セシリアさんが俺の隣にやってきて、自信満々に、自慢の髪をかきあげた。
だけどはっきり言おう。
……違うと思うよ、それは。
「どんなヤツなんだろうな」
「む……気になるのか?」
「ん?ああ、少しは」
「ふん……」
箒さんの機嫌が悪くなった。
因みに、今日の朝まで“篠ノ之さん”と呼んでいたが本人が
「名字で呼ばれるのは嫌いなんだ。名前で呼んでくれ」
と言ったから今変えた。
「神薙さんも気になりますの?」
「………」コクン
「………」
こっちも機嫌が悪くなった。俺は正直者だよ?何で機嫌悪くなっちゃうの?何か気に障る事言った?
「今の一夏に他クラスの女子を気にしている余裕があるのか?来月にはクラス対抗戦があるというのに」
「そう!そうですわ神薙さん。クラス対抗戦に向けてより実践的な訓練を取り入れて、一夏さんの技術を向上させましょう。わたくしも神薙さんのアシスタントをしますわ。なにせ、専用機を持っているのはまだクラスでわたくしと一夏さんと神薙さんだけなのですから」
“だけ”だけかなり強調してた。
実際、1年のこの時期に専用機を持っている生徒は大変珍しく、1組の俺、一夏、セシリアさん以外には、4組の1人だけ。
訓練機とは違う感覚に慣れるには、若干ながら時間が掛かる。
事実、俺のイーグルも、今の8割まで持って行くのに2年9ヵ月掛かった。
ただ、訓練機より強力な武装が搭載されているため、今の一夏を更に鍛えれば、かなりいいとこまで行くと思う。
「まぁ、やれるだけやってみるよ」
弱気だなコイツ。何のために一緒に練習してんだよ、全く。
「やれるだけでは困りますわ!一夏さんには勝っていただきませんと!」
「そうだぞ。男たるものそのような弱気でどうする」
「織斑くんが勝つとクラスのみんなが幸せだよー」
多方面からそう言われるが、余り自信はあるように見えない。
「……お前なら…出来る」
『はっ……?』
一夏とその他大勢が驚いたようにこっちを注視する。
アホ面かいてんじゃねぇよ。
だから、さっき思っていた事を口に出す。
俺にしては珍しいだろう。出血大サービスだよバカ一夏。
「……何のために、練習してんだ」
「そりゃ…強くなるため……?」
「ん……でも、それ以前に…一夏が慣れるのが先」
「そ、その通りで…」
「………俺は…少しでも早く、白式に…慣れて欲しいから……強くなって欲しいから…手を貸している。………負けたら…努力が水の泡」
「うぐ……」
「……でも」
少し語威を弱める。
「…心を強く持ち続けていれば……それに対して全力であれば………結果は嘘を付かない。……ちゃんと、実を結ぶ。……今は…決勝まで残ることを……考えてろ」
最初からずっと文庫を読んだまま喋っていたが、それからに目をはずし、一夏の目を見る。
ハッキリとした、意思のある目で。
「……俺たちが、強くしてやる」
「か、神薙……?」
「………」スッ…
それから何も無かったかのように文庫に目線を戻す。
「神薙さん…」
「神薙…」
「……今の神薙くん…スッゴくグッと来た…」//////
「“俺たちが、強くしてやる”って……」//////
「よっ!男前!」
……さて、何の事やら
「一夏。このクラスで、絶対にモノにしろ!」
「ああ!」
さて、バカの元気が戻ったところで、一件落ちゃ………
「そう簡単に、勝たせるとでも?」
『!?』
この声…まさか……!
「今日から2組も専用機持ちのクラス代表なの。残念ながらさっきの情報は古いよ」
「……まさか…鈴…?」
「久し振り。相変わらずの無口っ振りね。神薙」
「…鈴。お前…鈴なのか……?」
「そうよ一夏!あたしは中国代表候補生、鳳・鈴音!」
ここに台風が吹き荒れる。元気一杯の中華台風が。
To Be Continued.
今回の神薙君、何故か最後だけクーデレっぽくなってたような気が……
……何でこうなるんだろう…
次回は一応クラス対抗戦まで持ってく予定です。
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