ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
週刊 上杉隆
【第18回】 2012年10月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

ジャーナリズムの基本原則が
日本でも徹底されるために

previous page
4
nextpage

 加瀬さんは、なかば呆れながらも、私の奇妙なお願いを許してくれた唯一の出版オーナーであった。

 そこまで私が「訂正」と「引用」などにこだわるのは、それを日本のジャーナリズムに根付かせたいという願いがあったからだ。

 ところが今回、あろうことか、読売新聞記事の盗用疑惑のネット上での騒動の中で、かつての担当者のひとりが、私の盗用を疑うようなことを言い出したのだ。

 他の無責任な、過去の経緯も知らない池田信夫氏や江川紹子氏がそういうことを言っているのは仕方ないと思っていた。

 だが、かつての編集者がそう思っていることで、私は正直、驚くとともに悲しくなってしまったのだ。

 なにしろ、参照や引用を忘れがちなその元担当編集者に、クレジット明記の必要性を説き続けたのは、10年前の私自身だったからだ。

 いや、こうした人心の変異は、3.11以降、なんとはなしに実感していた。

 そもそも、私が日本のメディアにきちんと関わり始めた12年ほど前から、そこではずっと「ミス」や「訂正」を認めない無謬主義がはびこっていたのだ。

 そして日本のメディアの「ミス」や「訂正」自体を悪とみなすそうした風潮が蔓延することで、そこで情報を発信するジャーナリストたちは無意味な圧力と戦わなくてはならなくなったのだ。

 その結果、フレンチ氏が言うような健全なジャーナリズムの精神は、記事を書く度に、日本のメディアに特有の官僚主義的な空気とぶつかることになる。

 ひとりを除けば、かつての私の担当編集者ならば知っているだろう。

 私がどの編集部に対しても、共通に訴えてきたことは「署名」「訂正」「引用」の3つをきちんと明記することだった。

previous page
4
nextpage
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング

話題の記事


上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


週刊 上杉隆

芸能・スポーツから政治、原発問題まで、(株)NO BORDER代表・上杉隆が鋭く斬り込む週刊コラム。

「週刊 上杉隆」

⇒バックナンバー一覧