特集ワイド:シロアリを追う 復興予算問題−−被災地の声 生活を、産業を、早く何とかしてくれ
毎日新聞 2012年10月17日 東京夕刊
政府は復興予算を5年間で19兆円が必要になると見込んでいる。既に11年度から12年度予算までに約18兆円が計上された。今年9月に締め切った13年度予算の概算要求額は4兆4794億円。要求通り認められれば19兆円枠を突破する。
復興予算の財源は、今後の「復興増税」や歳出削減などで賄う。増税では、所得税が来年1月から25年間、2・1%分の定率増税、個人住民税は14年6月から10年間、1人あたり年間1000円が上乗せされる予定だ。ただ、財源を集めて19兆円枠をやっと確保した状態で、さらに復興費用が膨らめば財源確保が大きな課題になる。
復興予算は、主に被災地のがれき処理やインフラ整備などに使われている。その一方で「官僚側は、一般会計予算では認められそうにない事業に予算を付けたり、『復興』の名目で削減分を取り戻そうと分捕り合戦になっている」(早稲田大政治経済学術院の原田泰教授)。その姿を、ある国会議員は「予算に群がるシロアリ」と例えた。
被災地以外の耐震工事などに使える「全国防災事業」は、11、12年度で約1兆円が計上され、13年度予算では9412億円が要求されている。被災自治体が被災者の住宅再建に対する独自支援策に頭を悩ませる中、各省庁は庁舎の耐震工事などを着々と進めているわけだ。
全国防災事業については、宮城県の村井嘉浩知事が「次の災害に備えるためのものであり、事業の必要性は認識している」とコメントするように、被災地は否定していない。だが「復興予算は被災者、被災地に直結する事業に使ってもらいたい」(村井知事)というのが本音だ。復興基本法に盛り込まれた「日本再生」についても、被災自治体は必要性は認めるが、復興が軌道に乗ってからでも遅くはないのではという認識だ。