特集ワイド:シロアリを追う 復興予算問題−−被災地の声 生活を、産業を、早く何とかしてくれ
毎日新聞 2012年10月17日 東京夕刊
中小企業の支援が進まなければ人口流出が加速する恐れがある。被災自治体の危機感は強い。
石巻市の亀山紘(ひろし)市長は「再建を諦めようとする中小企業が増えてきた。あと半年たてば状況はもっと悪くなる。今が大事なんです。被災地に必要な事業に対し、優先的に予算を付けるよう、ほかの被災自治体とともに国に訴えていきます」と語る。
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政府や民主党幹部は、13年度予算の査定を厳しくして、事業を見直すと発言し、軌道修正に躍起だ。だが、被災地の怒りは収まらない。
福島県選出の森雅子参院議員(自民党)は「企業が撤退した後に予算を付けても無駄。被災地には今、予算が必要。民主党は復興予算の事業仕分けを行うと言うが、自作自演に過ぎない。13年度予算編成で同じことが起きないよう無駄遣いが行われているプロセスを解明する」と訴える。
東大名誉教授(財政学)で総務省の地方財政審議会の神野(じんの)直彦会長は「復興のための増税として全国一律に住民税を上げることには今でも疑問を感じている。復興予算の使途が問題になっているが、国会での予算審議の段階で『おかしい』と声を上げなかったのがこの問題の原因の一つ」と指摘する。予算案に賛成した国会議員、これまで使途を十分チェックしなかったマスコミにも責任はある。
被災地を無視したような予算の使途に被災者はさらに苦しんでいる。永田町、霞が関は「被災地に寄り添う」との誓いを忘れてしまっている。
◇財源確保やっと、19兆円枠 官僚の分捕り合戦場に
東日本大震災からの復旧、復興のために使われる予算は、11年度補正予算から計上された。12年度からは「東日本大震災復興特別会計」(復興特会)で、歳入・歳出を管理している。復興特会はいわば、国の一般会計予算とは切り離された、震災関連で使う事業費専門の財布だ。