特集ワイド:シロアリを追う 復興予算問題−−被災地の声 生活を、産業を、早く何とかしてくれ
毎日新聞 2012年10月17日 東京夕刊
被災者の憤りはもっともだ。復興予算の使途として問題視される事業を挙げてみよう。反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害活動に対する安全対策費(農林水産省・22億円)▽岐阜県のコンタクトレンズ工場などに支援した国内立地推進事業費補助金(経済産業省・510件に2950億円)▽日本原子力研究開発機構運営費交付金(文部科学省・107億円)▽税務署などの耐震改修工事(財務省・5億6000万円)−−。主な財源は「復興増税」だ。
なぜ、被災地以外に復興予算が使われるのか。「被災地の捕鯨支援のため」として反捕鯨団体の対策費を計上するなど「復興支援」の拡大解釈のほか、官僚が根拠の一つとするのは「緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災のための施策」(復興の基本方針)という全国防災事業への予算計上が認められたこと。もう一つは、復興基本法に「災害復旧にとどまらない日本の再生を視野に入れた対策」と盛り込まれたからだ。
反発が強まっても官僚側は「国会で認められた方針に従った予算要求で違法ではない。なぜ批判されるのか分からない」と、後ろめたさは感じていない。特集ワイドの記事「復興予算にシロアリの群れ」(9月13日付)にも、財務省、文科省、国土交通省などから事実誤認、ミスリードだとの抗議が寄せられた。