特集ワイド:シロアリを追う 復興予算問題−−被災地の声 生活を、産業を、早く何とかしてくれ
毎日新聞 2012年10月17日 東京夕刊
東日本大震災の復興予算に「シロアリ」が群がり、被災地復興に直接的に関係がない事業に予算が付けられた問題で、16日、野田佳彦首相が使途を絞り込む方針をようやく表明した。震災から1年7カ月を迎えた被災地を歩き、住民たちの怒りの声を聞いてみた。【瀬尾忠義】
◇「予算足りず」認定少ない補助事業 「なぜ、とは言えない」首長
最大で約20メートルの大津波に襲われ、市街地が壊滅した宮城県女川町を訪れたのは今月12日。震災1カ月後に目にした散乱したがれきと汚泥は撤去され、広大な更地が広がっていた。女川湾近くには女川交番など数棟の建物が倒壊したまま。ところどころに犠牲者を悼む手作りの祭壇があったり、花が供えられたりしている。道路にはトラックが行き交うが、住民の姿はない。水産業で栄えた町の面影はなかった。
町中心部から歩いて十数分の高台に造られた仮設住宅団地で出会った自治会役員の男性(69)は「自宅を流され、茶わん一つも残らなかった。なんとか生活を取り戻したいと思っているのに、役人は復興を名目に好き勝手にやっている。今さら平野達男復興相が『復興予算は正しく使います』などと言うこと自体がおかしいよ」と憤る。
高台の病院から海を見ていた阿部みつこさん(62)は、津波で自宅を奪われ、仮設住宅で家族5人と暮らす。「私たちが望んでいるのは、自宅の再建と仕事。もっと早く復興を進めてほしいのに、なんで関係ないところに予算が付くのか」