尼崎連続変死:美代子被告、真摯な聞き役で掌握…知人証言
毎日新聞 2012年10月18日 15時02分
兵庫県尼崎市のドラム缶詰め遺体事件で起訴された角田(すみだ)美代子被告(64)から、同市内の自宅に招かれたことのあるたこ焼き店経営の男性(40)=同市=が毎日新聞の取材に応じ、「角田被告から事業話を持ちかけられた。真摯(しんし)に話を聞いてくれる姿から信頼できると思い、心を許しそうになった」と証言した。同市の連続変死事件の行方不明者との関わりが指摘される角田被告は、巧みに人心をつかんで複数の家庭に入り込んだとされ、その掌握術の一端がうかがわれる。【向畑泰司、藤顕一郎】
男性によると、角田被告は09年夏ごろから、息子夫婦や「用心棒」のような若い男ら計7人で来店するようになった。ある日、男性に「兄ちゃん、(たこ焼き店は)本当にやりたいこととちゃうやろ」と話しかけてきた。男性が「できれば通信販売をしたい」と話すと、「(雑貨店をやっていたので)自宅に商品がある」と誘ったという。
角田被告の自宅は8階建てマンションの最上階。招き入れられたリビングルームは、壁が薄赤色で薄暗い照明にネオン管のイルミネーションが飾られ、アロマの香りが立ち込めていた。男性と角田被告が用意されたすしを食べる間、若い男2人は部屋の端で身じろぎもせずに約4時間立ち続け、一言も話さなかった。
室内には高級食器や貴金属が飾られたイタリア製のショーケースがあり、角田被告は「総額2億円ぐらいする」と自慢した。男性は「生活をみると成功者だと思った。この人を頼ってもいいのかなと思った」と語った。しかし、角田被告は事業の話をすることなく男性を帰宅させ、その後も誘うことはなかったという。
男性は「事件が発覚して、自分自身が狙われていたかもしれないと思うとゾッとする」と振り返った。
角田被告はドラム缶遺体事件で死亡した大江和子さん(当時66歳)の次女の元夫(42)にも夢だった喫茶店経営への支援を持ちかけ、家庭に入り込んでいったとされる。