米兵女性暴行:沖縄の怒り、政府直撃
毎日新聞 2012年10月18日 00時05分(最終更新 10月18日 10時18分)
沖縄県で16日に起きた米兵2人による集団強姦(ごうかん)致傷事件は、米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備で燃え上がった沖縄の怒りの火に油を注ぎ、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事は17日、「正気の沙汰ではない」との激しい言葉で「厳しい対応」を求めた。日本政府もただちに米側に抗議したが、県側の求める日米地位協定の改定には慎重姿勢を崩さず、米軍普天間(ふてんま)飛行場(同県宜野湾=ぎのわん=市)の移設問題で決定的となった政府と沖縄の溝は広がるばかりだ。
◇「関係改善」遠く
仲井真氏は17日、在日米大使館を訪れ、ルース駐日米大使に抗議。ルース氏は「申し訳ない」と謝罪し、捜査に全面協力する方針を伝えた。仲井真氏は官邸で記者団に「許しがたい事件だ。抜本的に(沖縄の基地負担を)軽減しないとどうにもならないが、毎年お願いしても全く結果が出ていない」と政府の対応も批判した。
事件は、普天間飛行場の同県名護(なご)市辺野古(へのこ)への移設に向け、経済振興や基地負担軽減策を駆使して沖縄県との関係改善を図ろうとしていた政府には「大打撃」(防衛省幹部)だ。政府は内閣改造後初の沖縄関係閣僚会合を10月5日に開き、県が要望する那覇空港第2滑走路建設計画への財政支援策などの本格検討に入ったばかりだった。
政府は容疑者逮捕の発表から約2時間後の16日夜、吉良州司(きら・しゅうじ)副外相がルース氏に電話で抗議。17日午前にもルース氏を外務省に呼び再発防止を求めた。「通常なら犯罪事実が固まったころか、起訴直前に行うもの」(外務省幹部)で、異例のスピード抗議だった。
沖縄には今月初め、安全性への不安が払拭(ふっしょく)されないままオスプレイが配備され、日本政府と米軍への反発が強まっていた。森本敏防衛相は17日、仲井真氏との会談で日米合同委の早期開催に言及。合同委は月内にも開かれる見通しで、政府は綱紀粛正を米側に申し入れる。
今回の事件は日本側が容疑者を拘束しており、身柄の引き渡しにかかわる日米地位協定の運用問題には直結しない。しかし、仲井真氏は森本氏やルース氏らとの一連の会談で地位協定の改定を強く求めた。米兵による事件が多発する根底に、日本の法令「順守」ではなく「尊重」義務を規定するにとどまる地位協定の問題があるとの認識からだ。