ソトコト11月号に掲載されていた、フローレンス代表の駒崎さんの「参加論」より。
「不正受給が増えているから、生活保護予算も大幅に増えている」?
本来の生活保護の問題は「必要な人に届かない」というものでした。補足率(申請が通る確率)は約3割。7割は生活保護にたどりつけないのに、問題が0.4%にすぎない不正受給にすり替わっています。
生活保護の問題でよくある誤解は、「不正受給が増えているから、生活保護予算も大幅に増えている」というもの。
例えばイザ!のこちらの記事なんかも、数字を詳しく読まないと、不正受給がいかにも生活保護費の増加に深く関係しているかのように取れます。
厚生労働省によると、今年2月に全国で生活保護を受給した人は209万7401人。戦後の混乱の余波で過去最多だった昭和26年度の数字を昨年7月に上回って以降、8カ月連続で最多を更新している。平成24年度は生活保護費として約3兆7232億円が当初予算に計上された。
不正受給も22年度までの5年間、増加し続けている。22年度は過去最悪の2万5355件、計約128億7426万円が不正に支給された。
が、こちらの意見書でも指摘されているように、むしろ原因は低年金・無年金の高齢者の増加にあります。
しかし,1980年から2009年の年齢別被保護人員の推移で見ると,大きく割合を増加させているのは60歳代と70歳以上の高齢者である(27%→52%)。これに対し,40代までの若い層はむしろ,その割合を大きく減じている(59%→33%)。
駒崎さんが指摘しているように、不正受給の問題より大きいのは「漏給」の問題です。
生活保護水準以下で暮らしている人たちの7〜8割が、生活保護を受けずに生活しているという現状があります(様々な調査がありますが、「補足率」は15〜30%程度と言われています。駒崎さんの文章では3割という数字になっていますね。この数字はグローバルに見ると顕著に低いことも指摘されています)。
受給していない理由は様々でしょうけれど、特に地方ではいわゆる「スティグマ(負のレッテル)」を恐れて生活保護を受給しない、なんてこともままあるようです。
貧困の実態を追った著書「出会い系のシングルマザー」には「バレない売春で稼ぐ方が、生活保護の差別よりマシ」なんて言葉も。
不正受給も大きな問題ですが、それよりプライオリティが高い問題が、「漏給」だと僕は考えます。生活保護に対する偏見を強めてしまう懸念もありますし、過度に不正受給を「叩く」のは間違いでしょう。
駒崎さんは連載の中で、こんな嘆息を漏らしています。まさに同感です。
魔女を叩いて鬱憤をはらしたとしても、実は自分たちのセーフティネットまで毀損している。叩いている人だって、いつそれが必要となるか分からないのに……。
僕自身フリーランスなので、いつ生活保護に頼るか分からないと心底感じています。よほどの資産家でもないかぎり、皆さんも同じだと思います。自分たちで自分たちのクビを絞めるようなことはもうやめにしましょう。
ソトコトは社会貢献系の雑誌では大手の媒体。内容はかなり充実しているので、関心がある方はぜひ。